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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学三年生編
233/304

合格発表と呼び出し

みどり高校受験の8日後、知香たちは再び高校に向かうバスの中にいた。


『少しどきどきするね。』


知香は言葉通り少しだったが、少しでない者もいる。


『健介くん?』


試験の時はあれだけ自信満々だったのに合格発表に近付くにつれ、高木の緊張は高まっていった。


『完璧だったんでしょ?なんでそこまで緊張するの?』


『お……俺は、知香と一緒の……高校に行く……。』


緊張し過ぎて自分がなにを言っているのかすらも分からなくなっている様だ。


『もう、しょうがないなあ。』


知香は合格したら高木に自分の思いを伝えるつもりでいたが、不安が募る。


『ほら、着いたよ。』


高校近くのバス停にバスが到着し学校まで歩いていくが、高木はまるでロボットの様であった。


『これじゃあ学校に着く前に陽が暮れちゃうよ。』


『受付が終わるまでには着くわよ。』


紀子は知香と高木のやり取りを楽しんでいる。


普通より時間が掛かったが校門まで辿り着いた3人は発表に沸き立つ中学生たちが集まる掲示板に向かった。


『健介くん、何番?』


高木は目を伏せている。


『425……。』


一緒に願書を提出したので、知香、高木、紀子の順で連番になっている。


『424……425……426……ほら、3人とも番号あるよ。合格だよ!』


ようやく高木は顔を上げて、掲示板を見た。


『ホントだ。うぉーっ!』


高木は喜びの雄叫びをあげる。


『もう、恥ずかしいから。』


『でもこれでみんな一緒ね。』


3人は受付で入学の仮手続きをしに行った。


『F市立第三中学校、白杉知之……知香さんですね。』


願書提出の時、戸籍と同じ名前と性別でなければならなかったが、特記事項に事情と知香の名前を書く事で承認を受けていた。


なので、試験は[知之]だったが、手続きは[知香]で進められる。


『知香さん、おめでとう。待ってたわ。』


受付を済ますとみどりが待ち受けていた。


『今日は時間もあるし、お付き合いして戴くわ。良いわね?』


試験の時に約束してしまったから仕方ない。


『白杉さん。F三中の白杉知香さん。』


受付担当のせんせいから呼び出された。


『はい、白杉です。』


『ちょっと悪いんですが、白杉さんは少し残ってもらいたいんですが宜しいでしょうか?……あ、入学取り消しとか保留とかではなく、いろいろ確認しなければならないのでお手数ですがお願いします。』


普通の生徒ではないから致し方ないだろう。


『健介くん、紀子さん、悪いけど先に帰ってくれる?時間掛かるかもしれないから。』


知香は先に高木たちに断わる。


『先生へ電話報告しておくからね。』


紀子はそう言って高木と共に先に帰った。


『みどりさん、申し訳ないけど学校から特別な話があるらしいの。お互い入学を決めたのだから、今日はごめんなさい。』


なんとかみどりから免れた。



知香は先生の案内で応接室に通され、少し待つと先生たち3人がやって来た。


『F三中の白杉知香さんですね。私は埼玉みどり高校の校長、高田守と申します。この度は合格おめでとう。そして、我が校を選んで戴いてありがとう。』


校長の高田が挨拶し、続けて残りの二人も自己紹介をする。


『教頭の桜井忠彦です。』


『養護教諭の道下桜子です。』


三中に入学する前にもこういう呼び出しがあったので別に驚きはない。


『調査書を確認しましたが、白杉さんは性同一性障害でありながら生徒会長をやられたり、障害のある生徒を介護したりしているんですね。』


麗の世話をした事が調査書に書かれているのは驚いた。


『正直なところ、性同一性障害に付いて私たちは細かく分からないので現時点でどういう治療をされているか、今後の予定はどうなっているのかお聞かせ願えますか?』


校長の高田は自分自身の興味も手伝って知香に質問をしていく。


『昨年、私が15歳になってからホルモン投与を始めました。18歳になると性別適合手術を受けられる見込みなので、出来たら三年生の夏休みに手術を受け、戸籍の変更をしたいと思っています。』


在学中に女性化を完了させる意思を伝えた。


『それともうひとつ、お話したい事があるのですが。』


ついでではあるが、どうせなら今のうちに伝えた方が良いと知香は思う。


『なんでしょうか。』


『父の実家が長野なのですが、年末に帰省した時にテレビ番組の司会をやってほしいと言われました。毎週土曜日なので通常の授業には影響はありませんが、許可は戴けるのでしょうか?』


『テレビの司会?白杉さんが?』


『はい。といっても長野のローカル番組なので埼玉では観られません。』


高校生なので学校にもよるが、アルバイトも許可が必要になる。


『アルバイト許可申請書に保護者の判子を押して提出すれば問題はありません。しかし……。』


『しかし?』


『埼玉で観られないのは残念だ。』


自分が観たいだけの様である。


知香はひと通り自分の状況を校長らに話し、学校を後にした。


1ヶ月後にはこの学校を舞台に知香の高校生活が始まる事になる。

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