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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学三年生編
222/304

2学期の成績

『ともちゃん、長野のおじいちゃんから電話!』


夕食が終わり、自室で勉強していると祖父の俊之から電話があった。


『はい、知香です。』


()()か。年末年始は来るんだろ?』


『ちょっとおじいちゃん、夏休みに今度行くのは受験が終わった後だって言ったよね?』


俊之からそう言ったはずだ。


『いや一郎がな、一緒に勉強したいと言っているらしいんだ。あいつも頑張っている様だがはずみちゃんと会えなくてストレスが溜まって大変みたいなんだ。』


『だったらはずみんだけ行けば良いんじゃない?私、失恋したばっかりだし当てられたくないよ。』


『なんだお前、萌絵ちゃんと別れたのか?』


知香は余計な事を言ったと思ったが後の祭りだ。


『そうなの。だから勉強漬けだよ。』


『と言ってもはずみちゃんはあくまでお前の友だちだ。迎えに行くから冬休みになったら一緒に来てくれないか?』


『分かったよ。』


なにかおかしいと思いながら俊之に押し負けたが、受験生をなんだと思っているのか?


そう思いながら知香ははずみに連絡した。


『はずみん?なんかじいちゃんが年末年始長野に受験勉強しに来いって。』


『あれ?うちにも電話が来たよ。チカが一緒に来てほしいって。』


ますますおかしい。


『それなら普通直接私から連絡するでしょ?ったく、あのじいさんなに企んでるんだか?』


『私は一郎くんに会えるから良いけどさ。』


相変わらずのろけ話である。


結局、年末年始は長野で過ごす事になった。



内申に直接関わる2学期の期末試験も無事終わり、終業式で通知表が配られた。


知香は必死に勉強に取り組んだ成果で保健体育と音楽が4だった他はオール5だった。


『高木くん、どうだった?』


『え?』


知香に声を掛けられ、高木はどぎまぎしている。


例の一件以来、ずっとこんな感じなのだ。


『どうせオール5でしょ?見せてよ。』


『い、いや……。』


高木は入学以来ずっとオール5だったが、今回は数学が4に下がっていた。


『どうしたの?期末試験は?』


『82点……。』


高木としては低い点数である。


どうやらケアレスミスの様で明らかに集中力が欠けていたのだ。


『これじゃあお父さんになんか言われるよ。』


高木自身、初めての体験なので返す言葉もない。


『面目ない……。』


『しっかりしてよ。一緒にみど高行くんでしょ!』


知香は高木の顔に自分の顔を近付けて励ましたが、高木は耐えられず失神しそうになる。


『知香さん、あんまり苛めちゃ駄目よ。高木くんうぶなんだから。』


紀子の言う通り、高木は本当にうぶだと思うが、知香はそんな高木を可愛いと思う様になってきた。


(意外とプレッシャーに弱いみたいだし、あんまり刺激を与えない方が良いかな?)


高木は我に返ったが、初めてオール5ではなくなった現実に気を落としている。


(そうだ!)


『ねぇ高木くん、紀子さん。冬休み、勉強合宿しない?』


『なんなの、それ?』


あまりにも急な知香の提案に紀子は付いていけない。


『うちのお父さんの田舎、長野なんだけど、民宿をやっていたから部屋がたくさんあるの。環境を変えて自然がいっぱいあるところで勉強も良いかなって。』


『わざわざ長野に行って勉強するの?』


『油断は禁物だけど私たち、普通に勉強していればみど高は合格出来ると思うの。でも最近、みんな詰め込み過ぎてるでしょ?勉強もするけど息抜きも必要だと思うの。』


俊之に半ば強制的に来いと言われた知香は高木と紀子を道連れにする気だ。


『なに寝惚けた事を言っているんだ?成績が下がっているのに泊まり掛けなんて許してもらえる訳がない。』


落ち込んでいた高木だったが、知香の話を聞いて反発した。


『じゃ、私が高木くんのお父さんに聞いてみる。それでどう?』


『いくらなんでも出来る訳ないだろ?』


つい先日まで知香の事をオカマだ中途半端だと言っていた大介が勉強のためとはいえ男女一緒に泊まりとか許す訳がない。


『やってみなければ分からないよ。紀子さん、先生が来ないか見ていてくれる?』


知香は学校での使用を禁止されているスマホを出して、大介を呼び出す。


『本気なのか?』


知香は思い付いたらやる事が早い。


校則違反はいけない事だが。


『もしもし、お忙しいところ申し訳ございません、白杉です。……はい、数学が4に下がりました。……後は5でしたが……はい、合宿勉強の件は大丈夫でしょうか?……うちの祖父は問題ありません。……向こうに同い年の従兄弟がおりますので……分かりました、宜しくお願いします。』


知香は電話を切った。


『本当に親父に電話したのか?』


『うん、高木くんにメール送るって。』


高木もスマホを取り出してメールをチェックした。


『ホントだ。お前、親父になに吹き込んだ?』


『最近高木くんが元気なくて期末試験の結果悪いって言っただけ。そしたらお父さんの方からなんとかしてくれって言ってきたの。』


『いつの間にそんな連絡を取り合う様になったんだ?』


『だって、高木くんが怠けたらすぐ連絡するって言ったでしょ?あの時、高木くんのお父さんから名刺貰ってたの。』


知香は高木の父の大介だけでなく、紀子の母の勝子の連絡先も登録している。


こうして、中学三年生としては異例の、合宿の名を借りた里帰りを高木たちと行なう事になった。


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