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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学三年生編
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それぞれの受験

文化祭の翌日、知香は一人でジェンダークリニックに向かった。


このみも月に一度診察を受けるが、ホルモン治療を開始してからの知香は2週に一度注射をしているので一人で行く機会が増えた。


『注射を始めてから体調の変化とかありませんか?』


ホルモン治療を始めると、だるくなったり体調の変化を感じるする人も多い。


『今のところ大丈夫です。』


知香はホルモン治療の前から坑男性ホルモンを投与していたからか、大きな体調の変化はない様だった。


ホルモン治療は筋肉注射のためかなり痛いがこれを続けなければ女性化への道は開けない。


『気分はどうですか?』


『まだ痛いです。』


このみが一緒に来ている時は弱みを見せられないが、いない時は看護師に甘えられるので少しは楽だ。


『ちょっと女の子らしい肉付きになったわよ。』


『そうですか?』


自分ではあまり気付かない程度の変化だが、その一言は嬉しい。


『お大事に。』


『ありがとうございました。』


病院を出て、一度O駅で乗り換えるがOは新幹線の分岐駅で他にもたくさんの路線が乗り入れているため駅ナカにはいろいろな店舗があって賑わっている。


(あの制服可愛いな。)


受験生の知香にとって気になるのは女子高生の制服である。


自分の学力などの比較もあるが、やはり可愛い制服の高校に行きたいと思っている。


(中学はセーラー服だからブレザーも着てみたいな。)


放課後の時間帯は様々な高校の生徒たちがこの駅を行き来するが、学校名などは分からないので帰って調べる事にした。


ネットでは受験生向けの学校情報があって偏差値や口コミも参考になる。


(口コミも人それぞれだからなんとも言えないな。)


知香の学力なら偏差値70近くの高校も狙えると先生から言われているが、在学中に手術を受けるつもりであるので多少低くても親に負担を掛けたくない思いがあり、私立も受験をするが、出来れば公立高校に入学したいのだ。


(ここなんか良さそうだけど……。)


知香が目を付けたのは埼玉みどり高校という県立高校で、近年制服が一新され、評判が良い。


ただ、駅からはバス通学なので通学に2時間くらい掛かりそうだ。



『2時間?ちょっと大変ね。』


翌日、知香と同じ高校に行く約束をした紀子にみどり高校を打診してみたが、やはり通学時間がネックだ。


『でも知香さんが行きたいって言うなら私も受験するわ。』


『簡単に言うけど、その先の進路だって考えないと。』


知香は将来保育士を目指しているので高校を卒業したら保育専門学校に行くつもりだ。


大学も視野に入れているが、学歴には固執していない。


『私も高校を卒業したら声優養成の専門学校に行くつもりだから偏差値には拘らないわよ。』


紀子も大学より自分の夢を叶えたいと思っている。


『二人とも偏差値に拘らないもう少し近くても良いんじゃないの?』


自宅から比較的近い場所にある商業高校を受験する雪菜はわざわざ遠くの高校に行く必要があるのかと疑問に思う。


『放課後うちでバイトするなら近くないと無理だよ。』


雪菜と知香は高校に進学したら雪菜の両親がやっているレストランでバイトをすると仮約束をしているが、帰りが遅いと平日は難しい。


『土日だけだと手術代貯められないか……。』


200万以上は掛かる性別適合手術の費用は出来るだけ自分で出さねばならないと思っているが、そのためには平日の放課後もバイトを入れなければ無理である。


『う~ん、近くの公立ってあまり可愛い制服の高校ないんだよね。』


『制服?ともち制服で学校決める気?』


雪菜につい本心を言ってしまった。


『ま……まあ、出来ればその方が良いでしょ?病院も近いし。』


『気持ちは分かるけどさ、定期代だって掛かるし、大変だよ。』


雪菜に言われて、知香は迷った。


バイトをしながら高校に通うのは簡単な事ではない。


学生の本分である勉強が疎かになれば、学力が落ちて本末転倒となる。


『私はみどり高校、良いと思う。大変だけど知香さんなら大丈夫よ。私もサポートするから。』


たぶん他にみどり高校を受験する生徒は三中にはいないだろう。


紀子本人は知香ら近しい友人以外、三中出身の生徒がなるべくいない方が良いと思っている。


『高木くんはどうするかな?高木くんにとったらもっと偏差値が高い学校の方が良いだろうし。』


噂をしていると高木が教室に入ってきた。


『高木くん、おはよう。』


高木はむすっとして、返事すらしない。


『高木くん、なにかあったの?』


『るせーな、親とケンカしただけだよ。』


完全に八つ当たりである。


『ケンカって、進学の事?』


中学受験の時も親に逆らって受験の時に全ての答案を白紙で出したので、容易に想像出来る。


『まあ、そういう事だ。』


『そういう事だじゃないわよ!どうするの?』


いくら成績が良くても受験はしなければ高校には入れない。


『お前たちと同じ高校に行くって話じゃなかったっけか?』


『そうだとしてもちゃんと話し合わなきゃしょうがないんじゃない?』


まともに話し合わず、ケンカするのは逃げだと思う。


『本気なら一緒に埼玉みどり高校受けようよ。あそこも進学校だから。でも、その前にお父さんと話をしなよ。』


高木は考えこんだが、知香の言い分は正論なのでそうせざるを得なかった。


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