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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学三年生編
212/304

生徒会長最後の日

文化祭の二日目を迎えた。


知香にとっては一年間務めてきた生徒会長を退く日でもある。


『おはようございます。』


『白杉会長、おはようございます。』


同じく今日で副会長を退く吉村が知香に挨拶を返した。


『なによ、改まって?』


『いや、これを言えるのは最後だからね。』


『吉村君は意外にセンチメンタルなのね。私はクラスの劇もあるし最後までそんな余裕ないよ。』


知香は今日も朝から劇の主役を務め、校内の見回りから最後の挨拶まで気を抜く暇がないのだ。


直ぐにしおりと村田、早紀も生徒会室にやって来た。


『私はこれから劇の方で体育館に行くから。その後そのまま部活動の展示を見て10時頃戻る予定です。』


それぞれのスケジュールを確認して極力ダブったり生徒会室に誰もいなくならない様調整をする。


知香は自分の肝いりで始めたメイド喫茶対決はそれぞれ中心になっている萌絵とこのみが教室にいる時間を確認し、それに合わせて最後に見回りをする事にしている。


(二人のメイド服姿を見たいからね。)


『それじゃあみんな気合入れるよ。』


五人が輪になって手を合わせた。


『ファイト!』


『オー!』


知香は生徒会室を出て体育館に向かった。


『おはよう、白杉さん。今日は観に行くからね。』


浅井先生から声を掛けられた。


本来なら養護教諭である浅井先生は保健室を空けてはいけないのだが保健委員の当番に任せて緊急時には連絡が来る様にしている。


『ありがとうございます。頑張ります。』


知香の劇を観たいという教職員も多い様で、体育館に行く途中でだいぶ呼び止められた。


体育館にはもうだいぶ観客が集まっている。


『チカねぇ!』


『いずみちゃん!』


いずみは一番前の席を確保している。


『入場と同時に走ってきちゃった。頑張ってね。』


自分の姉のクラス展示より知香の劇の方が優先らしい。


『じゃ終わったら見回りをするから待ってて。また一緒に行こう。』


知香が一年生の時はいずみと初めて女装をしたこのみを連れて校内を回ったのだ。


知香が舞台袖に上がるとクラス全員が主役を待ち受けていた。


『おはよう。』


『おはよう、ともち。あとはともちだけだよ。』


今日は開会式がないので準備はほぼ終わっている。


『知香さん、昨日の感じでね。』


監督の寧々から励まされた。


『うん、大丈夫。』


『気合入っているね。空回りしない様にね。』


劇だけではなくこの文化祭が中学生活で特別な1日になると感じている知香の気合は半端ではない。


幕が上がり、紀子のナレーションで劇が始まった。


舞台袖から観客席をチラ見すると昨日以上の人出だと分かる。


『さ、シンデレラさん。頑張って。』


寧々の指示で舞台裏に移動し昨日と同じ段取りで藍とバトンタッチする。


藍が隠れると知香を隠していた黒い幕がなくなり観客の前にシンデレラ姿の知香が現れた。


『おおー!』


昨日同様の大きな反響と拍手に迎えられ、知香は演技をする。


(車イス……麗さんとこうちゃんも観に来ている。)


さすがに演技をしながら一人一人の顔を確認する事は出来ないが、車イスがライトに照らされ光を帯びているのでそこに麗がいる事だけは分かった。



劇が終わり、カーテンコールに応えるため、クラス全員で舞台に立つとちょうど真下にいずみが座っている。


『チカねぇ、最高!』


『ありがとう。』


知香は自分が紹介される前にいずみに向かって小さく手を振り、終わるとシンデレラの衣装のままでいずみのところにやって来た。


『チカねぇ、凄いよ。』


『目の前でいずみちゃんが観ているから緊張したよ。いずみちゃん、後で本物のシンデレラに会わせてあげるからちょっと待ってて。』


『本物のシンデレラって?』


『こうちゃんだよ。こうちゃんね、麗さんの妹になるんだって。』


『こうちゃんが麗さんの妹ってお嬢さまになるの?』


このみの事も麗の事も知っているいずみだが、このみが麗の家に入る事は初めて知った。


『ちょっと挨拶して来るから待ってて。』


いずみは夢の様な話に胸がときめいた。


(良いなぁ。こうちゃんがお嬢さまかぁ~。)


『お待たせ。』


挨拶を済ませ、制服に着替えた知香が戻ってきた。


待っている間にいろいろな妄想を張り巡らせていたのか、いずみは赤い顔で妙に興奮していた。


『いずみちゃん、どうしたの?』


『麗さんにお話したい事があるの!』


まさか、いずみもお嬢さまになりたいなんて言う気じゃないだろうか?


『いずみちゃんの家はお父さんもお母さんも仲が良いし優しいお姉ちゃんもいるでしょう?こうちゃんとは置かれた立場が違うんだよ。』


『チカねぇ、なに言ってんの?』


『へっ?』


どうやらいずみは麗に別の話がある様だ。


とりあえず知香はいずみを連れて麗たちのところに向かった。



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