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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学三年生編
209/304

異世界転生?

赤坂が知香の顔をまじまじと見る。


『おーっ。』


なにがおーなんだか分からない。


『赤坂くん?私の顔になんか付いてるの?』


『いえ、本物の白杉さんだなーって。』


知香は赤坂を危ない奴だと思った。


『本物もなにも同じ学校にいるんだからしょっちゅう見てるでしょ?』


相手は生徒会長の知香なのであるから見る機会は多い。


『いえ、僕が書いているまんがで白杉さんと上田さんをモデルにしているので。』


知香とこのみがモデルのまんがという事はTSものだと容易に想像出来る。


『私と上田さん?どんなまんがか教えてくれる?』


『で、でも……。』


勝手に人をモデルにしておいて、肖像権の侵害ではないか?


『見せなさい。これは生徒会長としてじゃなく、モデルになった立場の権利だよ。』


知香はそう言ったが、半分は先輩としての強要だ。


『分かりました。』


仕方なさそうに赤坂は原稿の入ったクリアファイルを知香に差し出した。


『上手いね。』


確かに絵を見ると知香らしい人物が主人公だが、冒頭は男子として登場している。


それが[知之]に似ていないのは赤坂が想像で書いたからだろう。


『ふ~ん。異世界転生ってやつだね。』


話の中身は現実世界で死んだ男子中学生が女の子になって異世界で冒険をするもので、その途中でこのみっぽい女の子と出会う展開である。


『よくあるよね、こういう話。』


知香自身はライトノベルには興味がないが、本が好きなのぞみの話を聞いたりアニメで知ってはいる。


『でもさ、死んでも意識があるまま女の子になれるんならそんなに楽な事はないよね。』


『はあ。』


現実に女性化を目指す知香は非現実的なものが理解出来ない。


『私も上田さんも完全な女の子にはなれないからそういう空想の世界に憧れもなくはないけど、一生懸命女の子になろうって努力する部分も書いてほしいな。』


作品の中では簡単に性転換が出来てしまうのが納得出来ない知香である。


『白杉さんは今すぐ本物の女性になりたいって思わないんですか?』


赤坂の意見は知香やこのみの努力を冒涜するものに聞こえた。


『なれるんならなりたいけど、現実はそうはいかないんだよ。もどかしい思いをしながら注射打って少しづつ女の子の身体に近付いて手術受けて戸籍を変えて……。それでも子どもは作れないし、完全な女性にはなれないつらさ、分かる?』


知香はいつになく声を荒げて主張した。


『そういうのが分かれば私や上田さんをモデルにしても構わないよ。でもそうじゃなきゃ書いてほしくないの。』


物語のモデルに書かれるのは否定しないが、ここまで積み上げてきたプライドを傷付けたくはない。


『すみません……。』


『でも……こういうのも、悪くないかな?』


2冊目のクリアファイルを見始めた頃になると知香は展開の早さに引き込まれていた。


『現実味はないけど面白いね。私も魔法とか使えたらなぁ……。』


最初は訳も分からず知らない世界に来てしまった主人公のレベルが次第に上がってきて襲ってくる敵や魔物を簡単に倒してしまう様になっている。


運動が苦手な知香が現実には出来ない動きをこの物語の主人公はいとも簡単にやってのけるのだ。


『良いわ。これ、どういう風に展示するの?』


『出来たらコミケみたいに本にして即売会やりたいんですが、中学のレベルじゃ無理なんで壁に並べて貼ります。』


部長の平野が答えた。


『すまない、白杉や上田さんを勝手に作品に出したのは俺が許可したんだ。白杉から似顔イラストの依頼が来た話を部員たちに話したら赤坂(こいつ)、急に張り切っちゃって。』


『小学校の頃から2次元の[男の娘]の世界、好きだったんです。でも本物がうちの学校に二人もいるなんてびっくりして、白杉さんや上田さんを主人公として描いてみたくなったんです。』


赤坂もそう弁明した。


『分かった。とりあえず文化祭は他の人のイラストと一緒の展示を許可します。上田さんには私から言うから。後、これからはちゃんとこういう風に使うって言ってよね。』


あくまでも肖像権は本人のものだと主張する。


『あの、こんなのも書いたんですが……。』


赤坂がスケッチブックを差し出した。


『わ、これ魔法少女?!』


短いカラフルなスカートにステッキを持った知香みたいな顔の少女とデザインが違う服を着てバズーカ砲の様なものを持ったこのみ風の少女がポーズを取っているラフが描かれている。


『ねぇ、これって文化祭までには出来るの?』


『作品自体はこれから練りますが、同じ大きさの用紙に色付けをして展示しようと思っています。』


また無断使用する気だったのだ。


『じゃあその描いたの、文化祭が終わったら貰えるかな?そしたら許可するから。』


『え?……でも……。』


『文句あるの?訴えるよ。』


だんだん脅迫じみてきたが、肖像権を侵害されたのは知香の方だ。


『分かりました。お渡しします。』


『ありがとう。うちで飾っておくからね。』


知香は赤坂が描いた魔法少女の絵が気に入った様だ。

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