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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学三年生編
208/304

共犯者

体育祭が終わると生徒会の新執行部の選挙があり、引き継ぎをしながら文化祭で新旧執行部の交代式を行なって知香と吉村は執行部を引退する。


『しおりちゃん、これどういう事?』


『えー、ダメですかぁ?先生たちも良いって言ってくれたのに。』


書記であり時期生徒会長候補の佐藤しおりが文化祭実行委員会で決めてきたパンフレットの図案が知香には納得出来ない。


パンフレットの表紙には知香が勧めた目玉企画の二年C組と三年C組のメイド喫茶対決が強調されている。


まんが研究部に頼んだこのみと萌絵がメイド服を着てにらみ会う似顔イラストも思い通りに描かれていた。


が、別刷りで[生徒会長白杉知香のシンデレラ降臨]と大きく書かれた紙が入っていてシンデレラ姿の知香の似顔イラストまで描かれていた。


『こんなの頼んでないし。』


『実行委員会でも概ね好評でしたよ。予算は少しオーバーしたけど。第一、体育館で劇をやるクラスって何年かぶりなんですよね。朝早いし、これくらい宣伝しないと観られなかったってクレーム来ますよ。』


似顔のイラストはこのみたちと同様よく書かれていて、それ自体は悪くないと思ったが、最近のしおりは調子に乗り過ぎるきらいがある。


『知香先輩に似てきたのかもしれませんね。』


『早紀ちゃんにも言っておかなきゃ。』


書記に立候補している一年生の吉田早紀も今から大変そうだが、しおりはこの一年、すぐ暴走してしまう知香の元で頑張ってくれたのだ。


(良い会長さんになりそう。)


文化祭は来場者と生徒たちの投票でポイントが高いクラスは表彰されるが、生徒会の執行部は放課後の準備や当日に各クラスをチェックして回り、指導して改善がなければ減点ポイントを課す事になっている。


まだ文化祭には間があるので細かい準備に追われているクラスと何もしていないクラスに差があるが、見回りは欠かす事は出来ない。


知香たちの三年A組はセリフを覚えなければならない生徒と、大道具や小道具を作る生徒がいてかなり大掛かりだ。


『帰る時はちゃんと片付けないと減点になるからね。』


準備の期間中は片付けが最大の減点対象になるのだ。


三年C組では衣装合わせが行なわれていた。


『あ、ともち。』


ありさが振り向いた。


『全員の分、完成したんだ?奈々も萌絵も凄いね。でも、この服の予算ってどうなってるの?』


35着もの生地代だけでも相当なものである。


『半分以上服飾部の予算で賄ったわ。でも、あんたたちの衣装も萌絵が作ったんだから共犯よね。』


そこを突かれると痛い。


対決相手のこのみもほぼ自宅からの持ち出しだからこの辺は見逃しておこう。


(あまり煽り過ぎるのも良くないな。)


知香は後の祭りながら反省した。


『知香も着てみない?』


萌絵は相変わらずだ。


『私はいいよ。他のクラスの生徒に見られたら面倒臭いし。』


贔屓していると言われても困る。


『それにしても、よくこんなに作ったよね。しかもちゃんと男子の身体に合わせてるし。』


女子の身体に合っている服を男子が着るとどことなく無理があって変だが、男子ひとりひとりの体型に合わせているから見ていると違和感を感じないのだ。


『片付けをちゃんとすれば減点はしないから。頑張ってね。』


いろいろな思い入れを知ってしまうとつい評価したくなるから執行部は加点出来ないのだと改めて知った。


今回、パンフレットを作るのに世話になったまんが研究部も覗いてみる。


最近のまん研はかなり人気の部活で今年は一年生が大勢入部していた。


『こんにちは、平野くん。』


『やあ、白杉さん。』


まん研部長の平野は去年知香と同じクラスだった。


『イラスト良かったよ。なんか頼みもしないのもあったけど。』


『ごめんごめん。西村さんが白杉さんの写真とシンデレラの衣装の写真持ってきて是非って言われてね。』


家庭科準備室にあった衣装の写真をいつ入手したのか不思議だったが、よく特徴を捉えている。


『あれ、平野くんが書いたの?』


『いや、せっかくの題材だからさ、文化祭の展示テーマにしようと思ってみんなに書かせてコンペにしたんだ。』


確かに、部室内には知香や萌絵やこのみの似顔イラストがたくさんあった。


『みんな特徴を捉えているけど、パンフレットのは秀逸だね。』


知香は誰が書いたか知りたくなった。


『実はあれ、書いたの一年生なんだ。』


平野が驚き発言をした。


『へぇー、天才じゃない?今いるの?』


『まだ文化祭の準備で自分のクラスにいるけどもうすぐ来るんじゃないかな?』


そう言っていると、ちょうど背の低い男子生徒が入ってきた。


『こんにちは。』


『噂をすればなんとやらだな。彼だよ。一年B組の赤坂直樹。』


『こんにちは。文化祭のイラストありがとう。』


『うわ、……し、白杉さん!』


知香は軽くお礼をしただけだったが、赤坂直樹は異常な驚きの表情だった。

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