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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学三年生編
206/304

C組には負けるな

『みなさん、おはようございます。今日は秋らしい良いお天気になりました。一生懸命頑張って練習の成果を見せましょう。』


今日は体育祭であり、知香は生徒会長として開会式の挨拶を行なった。


今年の体育祭は、昨年までと少し違う。


6月の体育祭実行委員会の時の知香の一言がきっかけだった。


『個人種目がマンネリ化していると思うんです。私、運動が苦手な方だけど、そんな生徒でも頑張れば一位になれる様な種目かまあれば面白いと思うんですが。』


という事で、従来の徒競走などの他に借り物競争や障害物競争などが追加され、言い出しっぺの知香も借り物競争にエントリーしている。


『さあ、A組のみなさん、頑張りましょう!』


一、二、三年生のA組が揃い、副団長の紀子が鼓舞した。


最初は200メートル走で、三年A組からは美久も出場する。


『美久~、頑張って!』


個人種目は各クラスふたりづつの6人で競い、個人3位までが全体の得点に加算される。


美久は運動部には入っていないが、背が高く体育自体は得意なので他の生徒を圧倒して1位だった。


次に800メートル走があり、その後が知香の出場する借り物競争だ。


借り物競争は、スタートから30メートル先に紙が置かれ、拾った紙に書かれたものを探してゴールに向かうが、必ずしも物ではなく、人の場合もある。


『あれ?ありちゃん!』


同じ組にC組のありさがいる。


『ともち、負けないよ!』


号砲が鳴り、知香たちは一斉にスタートした。


紙までの30メートルはほとんど差がないが、問題は内容だ。


『げ?校長先生!』


知香の拾った紙には校長先生の名前が書かれている。


校長先生は中央のテントの下にいるので知香が向かおうとすると、ありさから呼び止められた。


『ともち、一緒に来て!』


ありさが持っていた紙には[男の娘]と書かれている。


『ばか!行けるわけないでしょ!あんたのクラスにいるじゃない!』


ありさは三年C組だが、体育祭は縦割りのクラス対抗なので二年C組のこのみとは同じ団なのである。


『校長先生!一緒に来て下さい!』


『なんだなんだ?』


校長の沢田は訳が分からず、知香に手を引かれた。


『このみちゃん、来て!』


ありさは自席で応援していたこのみを呼んだ。


『え?は、はい!』


一瞬状況が読めずに、戸惑いながらありさと共にこのみはゴールを目指す。


他の生徒が借り物を探している間に知香と沢田、ありさとこのみがゴールに向かって走り、ほぼ同時にゴールし、審判が紙を確認してゴールは成立した。


『同着ですが校長先生と上田さんの脚力を考慮して、A組1位!』


『やったー!校長先生、ありがとうございます!』


『年寄りを苛めるなよ。疲れたよ。』


へろへろな沢田校長をよそに、知香は喜んだが、ありさたちは悔しがる。


『えー、同時だったのに。』


『このみちゃん、ごめんね。きっと審判が校長と生徒会長に忖度したんだよ。』


ありさが悪態を付く。


『ありちゃん!人聞きの悪い事言わないでよ!』


さすがに知香も怒る。


体育祭となるとみんな真剣勝負になる様だ。


知香は小学校からの9年間を通じて初めて個人種目で1位になった。


『チカ、やったね!』


美久からも祝福を受ける。


『さ、次は綱引きだよ。C組だけには負けたくないから頑張ろう。』


『ありさとなんかあった?』


美久に聞かれるが、それには答えずにただC組には勝ちたいと知香は繰り返した。


三年生の団体戦である綱引きは最初にA組対B組、次にA組対C組、最後にB組対C組がそれぞれ2回づつ対戦する。


『せ~の、オ~エス、オ~エスっ!』


力自慢の男子も非力な女子も必死に縄を引っ張る。


最初のB組には1勝1敗で乗り切り、次はC組戦である。


『行くぞ~、オ~エス!』


最初は高木の号令で縄を引いて、辛勝した。


が、連戦で力尽きたのか次戦はあっという間に相手に引っ張られて惨敗。


『くそ~!こっちは休みなくやってるんだぞ。』


高木が悔しがるがC組はまだ余裕綽々である。


そういうC組もその後は連戦となり対B組は1勝1敗となって結局三年生の綱引きは3クラス引き分けとなった。



体育祭は例年にまして盛り上がり、最後はリレー対決である。


選ばれたクラスの健脚たちがデッドヒートを繰り広げる体育祭のクライマックスだ。


それまでA組は辛うじてトップだったが、リレーは最後に及ばず3位に甘んじてしまった。


『逆転されたかな?』


『どうだろ?逃げ切れると良いけど。』


体育祭実行委員長が、結果を発表する。


『優勝!A組。』


『やったー!』


優勝旗は団長の高木が受け取り、A組の生徒たちはみな拍手で喜んだ。


『良かったね。』


『みんなのおかげよ。ありがとう。』


副団長としての責務を果たした紀子は感謝してお辞儀をした。


三年生たちはこの後文化祭が終わると委員会や部活もほぼ下級生に引き継いで引退し本格的に受験に向かう事になる。


『文化祭も頑張らなきゃね。』


知香たちは中学生活最後の思い出作りに決意を改めた。

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