萌絵vsこのみ戦争勃発!
2学期が始まって最初の学級委員会が開催された。
議題は生徒会から時期生徒会役員候補を選出するのと、各クラスの文化祭での出し物を確認する事である。
クラスで決めた出し物が他のクラスと重複したり不適切と判断されるとクラスに差し戻されたりされるのだ。
ただ内容が重複してもそれぞれ指向の違いがあれば両方認められる場合もある。
『先ず、私たちの後の生徒会執行部の候補者を選出したいと思います。』
これはあくまで候補者の一人を生徒会から送るだけでこれで役員が決まる訳ではないし拘束力はない。
ただ、生徒会の経験者を推薦する事が出来るのでスムーズに引き継ぎが出来るメリットがあるのだが、去年、一昨年の紀子の様に反発して分裂選挙になる事もある。
『私が立候補しても良いですか?』
現書記の木村しおりが生徒会長に立候補をした。
『しても良いですかだなんて……木村さんは唯一の現執行部だし、私からも是非推薦します。』
知香はしおりの仕事振りなら後を任せても大丈夫だと思った。
『木村と同じクラスだけど、副会長に立候補しても良いですか?』
続けて村田義人が手を挙げた。
『大丈夫ですよ。村田くんは苛め対策で頑張ってくれたし、執行部でも是非推薦します。』
『はい。』
書記に立候補したのは一年A組の吉田早紀だ。
『他に立候補したいという方はいませんね。では生徒会ではこの3人を時期生徒会執行部の候補として推薦します。』
知香が生徒会に関わって初めて全会一致で候補者を送り出せる事が出来た。
『続きまして、文化祭の各クラスの出し物を発表して下さい。先ずは、三年A組……ですが……。』
自分のクラスからの発表だが、知香は気が重い。
『三年A組は体育館をお借りして劇をやる事になりました。』
紀子が発表した。
『ですがひとつ問題がありまして、成り行きで生徒会長が主役をしなければならなくなってしまいました。』
淡々と発表する紀子の言葉に、穴があったら入りたいと思う知香だった。
『知香先輩が?良いじゃないですか!で、なにを演られるんですか?』
『……シンデレラ……。』
部屋中が爆笑し、拍手が起こる。
『良いよ、白杉のシンデレラ見てみたいよ!』
副会長の吉村が囃し立てた。
『でも見回りとかあるし……。』
『午前中に体育館使うのは演劇部と合唱部、それに軽音部だろ?一番最初にしてもらえば大勢に影響ないだろ。』
基本的に各クラスは教室での展示が推奨されているため、劇などの体育館を使う出し物は限定されている。
近年、劇を出し物にするクラスはなく部活が独占状態だったので、1枠は確保出来たが他の部に迷惑は掛けられない。
『せっかくだから会長の演技見たいな。』
『どうせ生徒会室は休憩室に開放するんだから、劇が終わるまで閉めちゃえば?最初から休憩しに来る人なんかいないよ。』
(まずい!期待値が異常に上がってる……。)
もはや知香の逃げ道はない。
『それでは、三年A組の劇は承認で宜しいですね……個人的には承認したくないけど。』
知香以外に異を挟む者はいなかった。
三年B組は未来のF市を考えるという研究展示であった。
『次に三年C組お願いします。』
三年C組の学級委員、ありさが立ち上がった。
『はい。三年C組はメイド喫茶をやります。』
(萌絵、好きそうだからな。)
そう思っていたら村田の手が挙がった。
『村田くん、なんでしょう?』
『二年C組もメイド喫茶をやる予定なんですが……。』
村田はこのみと同じ二年C組だ。
(あ、こうちゃんメイドに未練たらたらだったから発案したな。)
知香はこのみが自分の家から大量のメイド服を持ち出すつもりではないかと推測した。
『同じメイド喫茶でもあまり同じコンセプトだと抽選になりますね。水尾さん、三年C組はどんな感じですか?』
『うちのクラスには服飾部の部員がふたりいて、夏休みの間にクラスの生徒の大部分を縫い上げています。メイド服の色は5色あって常にローテーションで色が偏らない様になっています。』
『戦隊とかアイドルグループみたいで楽しそうですね。』
萌絵と奈々は夏休みのあいだ中、勉強もしないでクラス全員のメイド服を縫っていたとは知香も呆れていたが、顔には出さずにいた。
『村田くん、二年C組は如何ですか?』
『うちは高級志向です。あるところから衣装と食器をお借りする事が出来まして……。』
出どころが分かる知香はにんまりした。
(これは萌絵たちとこうちゃんの代理戦争みたいだな。)
『分かりました。二つのクラス共個性があって良いと思います。どうでしょう?生徒会でも今年の文化祭の目玉としてメイド喫茶対決を宣伝してみるのは如何でしょうか。』
知香が対決を煽る事に全員が賛成した。
(これならシンデレラの方の注目がいかないから一石二鳥だね。)
知香はひとりほくそ笑んだ。




