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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学三年生編
202/304

みんな取り替えちゃえば?

夏休みが終わり、2学期が始まった。


知香の生徒会長も文化祭までなので残すところあと僅かである。


『忘れ物はない?』


『大丈夫。行ってきます。』


家を出ると、1学期まではこのみが玄関の前で待っていてくれたが、今井の家は学校から見ると反対方向なのでもう一緒に登校する事はないだろう。


(学校で会えるだろうけど寂しいな。)


そんな知香の気持ちを知ってか知らずか、のぞみがいずみを連れて玄関前で待っていた。


『おはよう、チカ。』


『おはよう、チカねぇ!』


小学生が登校するにはまだ早い。


『どうしたの?』


『いずみがチカが寂しそうだから一緒に行けだって。いつからこんなお節介になったんだか。』


こんなお節介ならいくら焼いても構わない。


『いずみちゃん、ありがとう。』


『やっぱり寂しかったんだ~。』


『こら、いずみ!』


のぞみに怒られたが、いずみの優しさが身に染みる。


『のぞみんもありがとうね。』


『チカってさ、生徒会でなんかあった時以外一人で学校に行くなんてなかったでしょ。』


そういえばそうだった。


一年生の時はわざわざ麗の家まで行き、グループで行ったものだが、麗が卒業して自宅が離れているのに無理して一緒に行く事がなくなった。


その代わりにこのみが入学して、ずっと一緒に登校していたのだ。


『それにしてもこのみちゃんが麗さんの妹なんてねぇ~。チカの方が気に入られていたし、お嬢さまになれたんじゃないの?』


『何馬鹿な事言ってんの?ウチはお父さんいるし。』


そもそもこの話はこのみが母子家庭だったから実現したのだ。


学校に到着し、下駄箱に靴を入れる。


『知香さん、おはようございます。』


『のりちゃん、おはよう。今日は下駄箱何も入ってないね。』


去年の今頃は下駄箱にラブレターが入っていたり机の中がごみだらけだったり大変な目に合っていた。


もっとも、後者の方はここに居る紀子の仕業だと後に分かったが、未だにラブレターの件は分かっていない。


『もう、知香さんたら。あの時は本当に私おかしかったし。でもラブレターの相手、意外と近くにいるんじゃないかしら?』


紀子は誰がラブレターを出したかを知っている。


『暫く来てないし、もう覚めちゃったんじゃないの?』


玄関で話をしていると、C組の下駄箱に萌絵と奈々が登校してきたのが見えた。


『萌絵、おはよう。』


知香が呼び掛けたが、萌絵は無視している。


『ちょっと萌絵!』


そのまま目を合わせずに萌絵は教室に向かっていった。


『知香、ごめんね。夏休み中ずっと機嫌悪くてさ。』


知香も夏休みの最初こそ勉強会に誘ったが、2・3回来ただけで連絡しても返事が来なくなった。


『嫉妬深いのは筋金入りだからなぁ。』



始業式が終わり、教室で通知表や宿題など提出物を出した後体育祭と文化祭について話し合いが行なわれる。


『まず、三年生のクラス対抗種目は綱引きです。』


体育祭は毎回気が重いが、生徒会長挨拶もあるのでそんな素振りを見せる訳にはいかない。


『個人種目は……今年は借りもの競争や障害物競争といったものが復活します。』


1学期の終わりに体育祭実行委員会があり、知香も参加して内容は把握していたが、苦手なので一切口を挟まなかった。


『借りもの競争に出たい人、いますか?』


紀子は知香の顔を見ながら聞いた。


(どうせ徒競走とか苦手なんだからこういうの出れば?)


紀子の心の声が聞こえる様だ。


『はい。』


仕方なく、知香は手を上げた。


(また波乱が起きそう……。)


『次に文化祭の出し物ですが、なにか案がありますか?』


(案って言っても自分はほとんど手伝えないからなぁ。)


文化祭は生徒会長としての最後の仕事があり、次期執行部への引き継ぎもあって忙しい。


『劇やりませんか?』


修学旅行で一緒の部屋だった田所寧々が発言した。


『なにか具体的な内容とかありますか?』


劇をやると言っても内容次第で大道具小道具に掛ける予算や脚本も限られた時間に納めなければならない。


『失礼だと思ったけど、白杉さんを見て男子がシンデレラになるって考えてみたんです。』


(また変なアイディアだな。)


『主人公のシンデレラは男だったという設定で、男子故に舞踏会に行かれないと落ち込みます。で、お婆さんの魔法で女性になって王子さまに見初められるってお話です。』


まあ単純明快な話である。


『主役は当然白杉さんにやってもらいます。』


『ちょっと待ってよ。私、生徒会の仕事あるから無理だよ。』


寧々の勝手な指名を知香は断った。


『えー、白杉さんがやらなきゃ意味ないよ。』


寧々も食い下がる。


『無理なものは無理。出来るだけ協力はするけど。やるなら普通の男子の方が良いんじゃない?』


『うーん残念。他に誰か女装が似合いそうな男子いる?』


『なんだったら王子を女子がやるとか、みんな取り替えちゃえば?』


なにかややこしくなりそうである。


『では白杉さん、総監督お願いしますね。』


『はぁ?』


一番面倒くさそうな役回りの気がする。


(これなら素直にシンデレラやった方が良かったかな?)


その時はまさか自分がシンデレラをやるとは思ってもみない知香であった。



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