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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学三年生編
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高校生になったら

お盆の帰省を終え、知香たちは再び見守り隊の勉強会に参加した。


お盆の期間中は商店街もほとんどお店を閉めていたため、小学生たちも久し振りの参加である。


前半は遊び呆けていた子どもたちも宿題を消化するために強制的に親から言われて参加していて、人数が増えている。


『おはよう、みんな元気してた?』


いずみも姉ののぞみと共に元気に返事をする。


『おはよう。チカねぇ、またテレビ出たでしょ?お母さん観たって。』


シナノテレビは地方局だが、夕方のニュース番組はネットされ、地方の話題を全国に流す場面に使われていた。


『埼玉で流されたのは少しだけでしょ?長野ではもっと長くやってたみたいだから観る?』


知香は実家で録画したビデオを焼いて持って来ていた。


『観せて観せて!私観てなかったし。』


小学生が夕方のニュースをじっくり観たりはしない。


もっとも、いずみたちの母・千奈美も好きなアイドルがニュースのキャスターをしているので観ていただけだった。


『今日と明日、ここ善光寺ではお盆縁日が開かれて大盆踊りで盛り上がっています。可愛い浴衣姿の中学生たちにお話を聞いてみましょう。』


リポーターの田中から紹介される。


『一郎です。』


『知香です。』


『はずみです。』


『みんな可愛いですけど、どういう関係ですか?』


『僕と知香は従兄弟同士で、はずみさんは知香の友だちです。』


一郎がたどたどしく紹介した。


『恋人でしょ?ちゃんと言いなさいよ!』


知香が横槍を入れる。


『知香さんは以前にもインタビューに応じてくれましたね。』


『はい、2年前に小布施で母と一緒でした。』


『知香さんは性同一性障害のトランスジェンダーという事で私たちもびっくりしましたが、今は高校受験で忙しい様です。高校生になったら、是非週末番組の高校生リポーターに挑戦して下さいね。』


『はい、頑張ります。』


(あれ?そんな事言ったっけ?)


インタビューの時はあまり考えずに適当に返事をしただけだったが、なんか変な約束をしてしまったかもしれない。


『はずみさんも一郎さんと一緒の大学を目指しているとお聞きしました。はずみさんも高校生になったらリポーターお願いしますね。』


『はい。』


(はずみも同じだ。)


『なんか冷静になって録画を観たら変な事言ってない?』


『今さら気付いたの?私たち高校生になったら毎週長野に行く羽目になりそうだよ。そう言えば……。』


知香は思い出した。


『帰りの新幹線のホームで、ディレクターの人がお爺ちゃんに挨拶してた。』


『何それ?じゃあ一郎くんも一枚噛んでいるの?』


『分かんないけど、なにか知ってるかも。』


交通費と出演料さえもらえれば泊まる場所は実家があるしはずみは毎週一郎に会えるから言う事は無いのだが、地方局とはいえタレントみたいな事をする気は毛頭なかった。


『チカねぇもはずみんも凄いね。やってみなよ!』


無責任にいずみが囃し立てる。


『それより私たちはまだ高校生になってないんだよ。勉強しなきゃ、勉強!』


子どもたちは静かに勉強を始めた。


少し遅れて、男子中学生が入ってきた。


『清水くん?』


豊もこの見守り隊に世話になった事があり、商店街の人たちとも顔なじみだ。


『野球部の夏休みの練習は終わったから、俺も交じって良いですか?』


豊は申し訳なさそうに口を開いた。


『良いよ、せっかくだし。どうぞ。』


豊は席に着いて静かに勉強を始めた。


『なんか元気ないね。苛めとか大丈夫?』


『あ、そっちはもう全くないです。三年生も引退したし……。』


『あ、分かった。』


知香は豊の元気のない理由に気付いた。


『こうちゃんの事でしょ?』


『……はい。』


このみが今井家のお嬢さまとなってから豊はこのみに会っていないのだ。


『行ってあげれば良いのに。』


『でも……。』


豊には今井家は敷居が高過ぎる様である。


『だよね~。私も最初の頃は行くの躊躇ったから分かるよ。じゃあさ、私も一緒に行こうか?私も病院に行った時しか会ってないから。』


『でも、白杉さん受験勉強で忙しいんじゃ……?』


『1日くらい大丈夫だよ。長野のお土産渡さなきゃならないし。その分今日は頑張って勉強しよっ。』



その日、知香はこのみではなく姉の麗に連絡してみた。


[ご無沙汰しています。明日、長野のおみやげを持って伺いたいのですが?]


直ぐに返事が来た。


[いつもお気にしなくても宜しいと申してますのに。でも知香さんとはお会いしたいですわ。]


[明日、このみさんのお友だちと一緒に行きます。]


今までは麗相手でもこのみの事をこうちゃんと呼んでいたが、これからは麗の前ではこのみさんに改めようと思う。


[このみさんもすっかり我が家に馴染んできましたの。楽しみにしてお待ちしておりますわ。]


もともと今井家でメイドをしていたのだし、馴染むのは早いと思っていたが、そんなこのみに会うのは知香も楽しみだ。


麗との会話を終わらせ、知香は早めに床に付いた。


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