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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学三年生編
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新幹線で出会った娘

修学旅行の当日になった。


生徒たちは学校ではなく駅に集合して途中で新幹線に乗り換えるのだが、知香にとってまさかの出来事があった。


『お父さんと同じ時間じゃないか?』


毎日東京に通う父・博之の朝は早く、混雑の少ない時間に家を出ていく。


『ならお父さんもそのまま新幹線で東京に行けば?』


由美子はそう提案したがいつもなら一駅先で増結する車両に移り、東京まで座って通勤していくのだが、新幹線に乗り換えをすると乗り換えの時間があるのでほとんど短縮されない上に途中駅のため座る事は難しい。


なのでこの辺りから都心通勤をしているサラリーマンが新幹線を利用する事はほとんど居ないと言って良いのだ。


『なんでそんな面倒な事を?』


『たまには良いんじゃない?新幹線とコーヒー代くらい出すわよ。子どもの修学旅行に途中まで一緒に行けるなんてそうある事じゃないでしょ?』


由美子は出来るなら自分が一緒に行きたいと思っている。


『分かったよ。ともはそれでも良いのか?』


『うん。お父さんと一緒に修学旅行に行けるなんて最高。』


と言っても東京までであるが、博之も同行する事になった。



『おはようございます。東京まで一緒の列車になります。宜しくお願いします。』


博之は先ず木田先生に挨拶した。


『おはようございます。東京までは自由席ですから生徒全員を見るのは大変なので助かります。』


早朝上りの新幹線は完全に通勤客がターゲットで全て自由席だから引率の先生は大変だ。


『ともち、おはよう!……あ、ともちのお父さん。おはようございます。』


学校行事などあまり顔を出さない博之だったが雪菜は覚えていた。


『おはよう。みんな気を付けて。』


『お父さん、恥ずかしいみたい。』


もともと口数の少ない博之はこういう場所は苦手である。


クラスの違うはずみも博之を見付けて挨拶に来た。


『おはようございます。いつもお世話になっています。』


さすがに人見知りの萌絵は近寄って来ない。


知香の友だちで博之と会った事があるのはこの3人だけだ。


通勤客を乗せた新幹線は静かに東京駅に到着した。


『じゃあ気を付けて行くんだぞ。』


『ありがとう、行ってきます。お父さんも頑張って。』


娘に見送られ、恥ずかしそうに博之は会社に向かった。


東京駅では暫く団体入口の前で待機し、合図と共にホームに移動していく。


『どれに乗るんだろう?』


東海道新幹線は車両の色が統一されているので乗る列車がよく分からない。


『たぶん次に来る電車だと思います。』


木田先生は自分が学生の時も新幹線で修学旅行に行ったが引率するのは初めてなので自信が無さそうに行った。


木田先生の言った通りにホームに入ってきた新幹線は修学旅行の表示があり、順番に乗り込む。


時期的に修学旅行のピークを迎えており、いくつかの学校と一緒に京都に向かうのだ。


荷物を荷棚に載せたり座席を回転させたりわいわいしているうちに新幹線は走り出した。


暫くは速度を上げず都会を在来線と平行して走り、品川で一度停車した後は速度を上げて景色も都会から郊外へと変わっていく。


知香は雪菜たちとトランプで楽しんだりしていたが、熱海を過ぎた辺りでトイレの為席を立った。


デッキに行くと、他の学校の生徒がトイレから出る所だった。


(男の子?)


その生徒はスカートを穿いていて髪も長かったが、背が高く、顔や身体もどことなく男子の様だった。


『こんにちは。失礼ですけどどちらの学校ですか?』


知香はその生徒に尋ねた。


『は、はい?ち、千葉県のM市からです。』


その生徒はびくりとして、慌てて声が裏返ってしまった。


『ごめんなさい、私、埼玉県のF市から来た白杉知香と言います。私、小学校の終わりから女の子として学校に行っているんですけど……。』


千葉から来た生徒は知香を見て再び驚いた。


『え?私と同じなんですか?』


『急に声を掛けてごめんなさい、トイレから出たら少しお話出来ませんか?』


知香は一旦トイレに入り、直ぐに戻った。


『私、鈴木智美と言います。三年生になってから性同一性障害の認定を受けて学校に通い始めたからまだ怖くて。』


仕草もぎこちないし、声も低い。


変声期前に二次性徴を止めていれば声も骨格ももう少し女の子っぽくなれたと思うと残念である。


『でもすらっとしてモデルさんみたいだよ。』


知香もだいぶ背が伸びたとはいえ150センチを越えたくらいだ。


智美とは20センチくらいの差があるだろう。


『普通に歩いていても目立っちゃうから嫌なんだけど。』


『今はそのくらい背が高い女性の人いっぱい居るから大丈夫だよ。』


智美の制服はワイシャツにリボンとグレーのミニスカートだが、体型が男子のため不釣り合いな気がする。


『あ、いた。ともち帰って来ないから他の学校の子となんか騒動になっているかと思ったらそういう事?』


雪菜が心配してデッキにやって来て状況を把握した。


『白杉さん?せっかくだからふたりでここに座ってお話すれば?』


車端の座席にいて雪菜の声に反応した木田先生と浅井先生が席を譲ってくれた。


『先生たちは?』


『私はその娘の学校の先生にお話してきます。他の学校と情報交換するチャンスだからね。』


浅井先生は他の学校で性同一性障害の生徒をどう扱うか知りたい様だ。


『私は白杉さんの席に居るから。』


木田先生は生徒たちの輪に加わりたいみたいだ。


知香は智美と情報交換する事になった。

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