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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学三年生編
183/304

中間テストとホルモン治療

ゴールデンウィークが終わり、知香の15歳の誕生日まで2週間を切った。


知香はこのみと共に通っているジェンダークリニックに向かっている。


すでに複数の医療機関で次の段階に向けて診てもらっている知香だったが、女性ホルモン投与を受けるには第三者委員会での決定を待たねばならない。


ホルモン治療を開始すると、身体は元に戻せなくなるからである。


『知香さんなら問題ないと思います。』


このみが15歳になるのは来年9月だが、知香が順調に女性化への道を歩んでいけば、その道筋を追う事になる。


『そうは言うけど試験と一緒で結果が出るまで嫌なものだよね。』


『そう言えば知香さんの誕生日ってちょうど中間テストの時期ですね。』


今年は誕生日の翌日から中間テストが始まるのでホルモン治療を開始するのは翌週以降である。


『テストが返ってくるのと一緒くらいだね。この日が来るのをずっと待ってたのになんか憂鬱だよ。』


知香はため息を付いた。



『第三者委員会から回答が出ました。白杉知香さんの治療を継続し、誕生日の23日以降ホルモン投与を開始致します。』


院長の山田は淡々と知香に伝えた。


『予定は如何ですか?』


山田はパソコンを見ながら知香の都合の良い日を聞いた。


『24日から26日まで中間テストがあるので、最終日の26日は学校も早く終わります。』


『では26日の午後イチにしましょう。』


知香は山田の言葉に安堵した。


遂にホルモン治療が始まるのだ。


『今までもホルモン投与についてお話はしましたが、もともと男性の身体からはほとんど女性ホルモンは作られません。ですから女性ホルモンを外部から投与するという事は身体に大きな影響を与えるという事なのです。』


山田は女性ホルモン治療の注意点を説明し始める。


『一番怖いのが血栓、血が詰まりやすくなる副作用です。将来動脈硬化や脳梗塞などを引き起こす可能性が高くなります。肝機能にも影響がありますが、これは錠剤を経口すると内臓を通過する為ですが、注射の場合はさほど問題にはなりません。』


山田は親に見せる様にと説明した内容のプリントを知香に渡した。


『一番大変なのはこれから継続して投与を続けていかないとなりらない事です。投与を中断すると思わぬ身体的影響が出ますので注意して下さい。』


一生ホルモンを投与し続けるというのはかなりの負担だが、自分で決めた道であるのだ。


『分かりました。』


『では26日には必ず親御さんの承諾書を持って来て下さい。』


知香は身震いした。


未成年の自分は未だ親の承諾がなければ事が成せず、両親にも負担を強いる事になるからだ。



試験前日の23日、知香の誕生日は日曜日だ。


『あら?今日は誰も来ないの?』


ひとりで勉強机に向かっていると由美子が部屋に入ってきた。


『うん、今日は集中したいから。』


『じゃあ後でケーキ買ってきてあげる。他に何か食べたいものある?』


『特別な事しなくても良いよ。』


テストと治療の事で頭がいっぱいになりそれどころではなかった。


『抜く時は抜いた方が良いわよ。』


『うん、ありがと。』


そう返事はしたがなるべく余計な事を考えずに勉強に没頭したかったが、なかなかそうはいかない。


インターホンが鳴り、由美子が玄関に降りていくと賑やかな声が聞こえた。


『きな子?』


程なくして雪菜と美久が部屋に入ってきた。


『ともち、誕生日おめでとう。一緒に勉強しよう!』


ふたり共週末は何も言っていなかったのにサプライズを企てた様だった。


『はい、プレゼント。』


『……まったく……、いつもそうなんだから。……ありがとう。』


『雪菜ちゃんからケーキ戴いたから後で持っていくわね。』


下の階から由美子の声がした。


『チカ、試験終わったらホルモン始めるんでしょ?体調悪い時は必ず早めに言いなよ。』


勉強をしながら美久が言った。


『うん、ありがと。』


知香は体力はないが今までほとんど病気などをしたことがなかった。


それがこれからホルモン治療を始める事で体調に変化が起こる事があるかもしれない。


そんな時、治療を止めたくなったりしないだろうか?


『どうしたの?』


『うん、体調が悪くなったらって考えてた。』


『ともちらしくないなぁ。大体女の子は生理があるんだよ。そんな事で悩むなら最初から女の子になるなんて無理じゃない?』


雪菜に叱られたが確かにそうだ。


『ごめん、テストと重なっちゃって少し神経質になったかも?』


『それに水臭いよ。みんなチカの事考えているんだから。それなのにいつも突っ走っちゃうし。』


美久も知香を嗜めた。


『そんな時はね、甘いものを食べれば良いんだよ。』


疲れた時など、思考能力が低下した時に甘いものは効果があると聞いた事がある。


ちょうど由美子がバースデーケーキを持って部屋に入ってきた。


『みんな、そろそろ休憩して雪菜ちゃんが持って来てくれたケーキ食べなさい。』


『おばさん、ナイスタイミング!』


由美子も加わりケーキを食べた知香はさっきの悩んだ事などすっかり忘れてテスト勉強に精を出した。

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