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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学三年生編
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このみの三角関係

月曜日の朝、このみが知香と共に学校に向かうと、豊が声を掛けてきた。


『おはよう。』


『おはよう……。』


ふたりは挨拶を交わした後、互いに黙りこくってしまった。


『ふたり共、どうしたの?私いない方が話しやすいかな?』


知香は邪魔していると思い、ふたりに気遣った。


『いえ、そんな事ないです。……むしろ白杉さんにも聞いてもらった方が……。』


豊の言葉に知香は推測した。


『あ、金曜日の事?……こうちゃんと遥ちゃんの関係に妬いてるのかな?』


『し、白杉さん!……まぁ、そうなんですけど。』


図星だったが、豊は否定しなかった。


『清水くん、ごめん。……でも遥ちゃんの事は妹だと思っているし。』


『そうだよ。遥ちゃんもこうちゃんが別の子が好きだって分かっているみたいだから。』


このみが弁明し、集会後のやり取りを見ていた知香も証言する。


『そうですか?全校生徒の前であんなやり取りしたくらいだから俺の入るすき間なんかなさそう。』


『清水くん、こうちゃんと付き合って居るってみんなに言いたいの?』


豊は知香にも聞いてほしいと言った事を後悔した。


こういう時の知香は容赦ない。


『そ、そんな事は無いですけど……。』


そこにぽっちゃりした身体の遥が走ってきた。


『こうちゃ~ん!会長さんもおはようございます!』


『おはよう、会長さんとか止めてよ。知香で良いから。私も遥ちゃんって呼ぶから。』


遥はこのみの顔を見て確認するとこのみは縦に首を振る。


『分かりました、知香先輩。……こちらの方は……?』


遥は豊に目をやった。


『同級生の清水豊くん。一年の時は一緒のクラスだったけど……。』


このみが豊を紹介すると遥はこのみが好きな相手だと分かった。


『西山遥です、宜しくお願いします。』


『金曜日見てたから知ってるよ。宜しく。』


遥は豊の全身を舐めるように見回した。


『清水先輩……こうちゃんの彼氏ですか?……こうちゃん、男の人が好きなんですね?』


遥は思っている事はストレートに聞いてくる様だ。


『あ、それこそ金曜日の質疑応答で言った様に男とか女ではなくお互いが好きか嫌いかが問題だから……あ。』


このみが別の生徒の質問に対する答えを例に出したがふたりの関係を認めてしまったのだ。


『まぁ、下手に隠さない方が良いんじゃないかな?ね、遥ちゃん。』


『そうですけど、やっぱり複雑です。』


ストレート過ぎて分かりやすい。


『こうちゃん、なんだったらゴールデンウィークに3人でデートすれば?麗さんのところ、お休みあるんでしょ?』


『知香さんも萌絵さんと一緒に来て下さいよ。』


このみは3人のデートに不安な様だ。


『萌絵とは何処か行くって話しているから良いけど。』


ゴールデンウィークは5人二組でデートする事になった。



デートの当日になり、5人は駅に集合となったが、知香はひとりではなかった。


『おはようございます。……はずみさん、一郎さん、久しぶりです!』


前日の記録会を終えたはずみと、知香の家に泊まっていた一郎が知香と一緒にやって来た。


『ごめんね、チカが一緒にって言うから。』


このみの立ち位置を聞いていたはずみは申し訳なさそうに言ったが、本音は一郎と二人きりになりたかったのだ。


『まあ賑やかだし良いんじゃないか?』


一郎は豊と遥がこのみとどの様な関係かは分かっていない。


『……なんでこんなに人がいるの?』


萌絵がまた捻くれている。


『ごめん、今日はこうちゃんの頼みだから。』


萌絵はこのみには甘いので嫌々ながら納得した。


一行は電車で二駅進み、そこで私鉄に乗り換え秩父に向かった。


秩父の次駅から少し歩いて行くと芝桜で有名な羊山公園があり、毎年ゴールデンウィークは多くの人が訪れる。


『みそポテト売ってるよ!』


遥が特設された屋台を見つけた。


『みんなで食べよう。』


『みそポテトってなんだ?』


長野に住んでいる一郎の知らないみそポテトとは揚げたじゃがいもに甘いタレを掛けたもので秩父の有名なB級グルメである。


『みそポテトのゆるキャラも居るんだよ。』


確かにそれらしいイラストが屋台を飾っている。串に刺さったみそポテトを食べながら進んでいくと、視界が開けて一面白とピンクの芝桜が広がっている。


『わぁー、きれい!』


芝桜は段々畑になっているので遠くも鮮やかに見える。


『みんなで写真撮ろう!』


芝桜をバックに並んだり、芝桜に隠れて顔だけ出したりいろいろなスタイルで撮影をするが、混んでいるので他の観光客も写る事が多い。


『これだけ人が居ると難しいな。』


芝桜を楽しんだ一行は駅に戻った。


戻った駅は東京方面に向かう私鉄の乗り換え駅でもあり、近年は構内に温泉施設が出来て賑わっている。


『お風呂入りたい!』


真っ先に遥が言った。


『何言ってるんだよ?こんなに混んでるし、上田と白杉さんは入れないんだよ。』


知香もこのみも身体は男子なので公衆浴場に入れない事を豊に怒られて遥は気付いた。


『いいよ、ふたりで待ってるから。みんな入ってきたら?』


知香はせっかくだからと入浴を勧め、このみと共に隣接するフードコートで待つ事にした。


『ここも人がスゴいね。』


やっとふたり分の席を確保したが、喧騒で落ち着かない。


『なんかこういう時不便ですね。』


『仕方ないよ。で、こうちゃんはこれからどうしたいの?』


再びみそポテトを食べながら知香はこのみに尋ねた。


『清水くんとは友だちの延長みたいなものだし、遥ちゃんは妹みたいな感じだから今の感じが良いと思います。』


『清水くんもそんな感じみたいだね。遥ちゃん、暴走しがちだしお兄ちゃんとお姉ちゃんがふたりで見てあげるって良いかも。』


『暴走って……知香さんがそれ言うんですか?』


知香はこのみに指摘されてしまった。


3人なら暫くちょうど良い関係を築いていけそうな気がする。


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