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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
小学六年生編
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初めての中学校

翌日の放課後、知香は雪菜の自宅に来ていた。


『何これ、可愛い〜!』


前日の萌絵の自宅で撮影した写真を雪菜に見せた。


萌絵と一緒の写真は予め別のフォルダに移しておいたので見られてはいない。


『なんかさ、恋する乙女って感じ…。』


知香は雪菜に全て見透かされている様な気がしてならない。


(恋する乙女か……)


恋に恋する心境の知香である。


『そう言えばさ、ともちの所は制服の申込みやった?』


四月から通う中学校の制服の採寸と申込みは制服業者が小学校に来て一斉に行う事になっている。


『申込み用紙は貰ったけどまだだよ。今度の金曜日かな?』


『四月からまたともちと一緒だからね。早くともちのセーラー服見てみたいよ。』


知香と雪菜は同じ市立第三中学校になる。


『その前に三中に行かなくちゃならないんだよね。ほら、私みたいな生徒、初めてだから。』


『いろいろ面倒だね。』



木曜日、仕事を早退した母と共に午後中学校に出向いた。


『四月からお世話になります白杉と申します。』


受付に行き、応接室に通される由美子と知香の前に三中の校長、沢田幸喜が入って来た。


『はじめまして、校長の沢田です。』


校長先生と聞いて知香は身震いした。


『緊張しなくて良いですよ。白杉知香さん…ですね。』


沢田は長い教師生活で初めて[女子として学校に通う男子生徒]と相対した。


もっと男の子っぽいと思っていたが、どう見ても女子生徒だ。


『はい、宜しくお願いします。』


緊張するなと言われても無理だ。


『青葉台小から資料も届いています。知香さん、大変苦労して頑張った様ですね。』


知香本人は苦労したとは思っていないが、不登校を乗り越え、カミングアウトをして周囲に溶け込むというのはかなり大変な事だと思われていた。


『中学校でも引き続いて私たちは知香さんを支援して参りたいと思っています。』


中学校に行っても女の子として扱ってくれる……。


安堵の表情で顔を合わせる由美子と知香。


『しかし、まだ知香さんの様な方を受け入れる環境が整っていないのが現状です。私たち教師を始め、生徒やご両親みなさんが理解し、共存していくには時間が必要です。』


知香だけの問題では無く社会全体の問題として考えなければならず、知香はその先駆けとしての役目を担わなければならない。


『出来るだけ共存が出来る様に配慮し、随時指導、教育を行なっていきますが、他の生徒と同じ場所で着替えたりトイレを使う事を嫌がる生徒も居るかもしれません。』


知香自身もそういう事にまだ慣れていない。


『体育の授業などに関しては更衣室を別に用意する予定です。

また、授業の内容によっては制限する事もあると了承して戴きたいと思います。』


あまり体育は好きでは無いので知香には好都合である。


『後、このフロアに多目的トイレがあります。我が校には身体に障害のある生徒も居て使っていますが当面はこちらを利用して戴く様お願いします。いずれは他の生徒と同じトイレを使える様にしますが、最初は様子を見させて下さい。』


小学校では教員用トイレを使っているからさほど問題では無い。


校長が一旦職員室に行き、二人の先生を連れて戻って来た。


『保健室担当の浅井純子です。えーっ!』


『保健体育の田口圭子と申します。失礼ですが、白杉さん本当に男の子なんですか?』


二人共知香を見て驚いた。


『浅井先生は去年新卒でまだ若いです。田口先生はベテランですので…』


『校長!』


沢田が口を滑らせた。


『……今のところこの浅井と田口を中心にサポートをする予定で準備をしています。ただ、私を含めて異動のある職場ですのでその場合はしっかり引き継ぎをして知香さんが安心して入学出来る様に致します。』


ここまで言われたら、由美子も知香もなんの異論も無い。


『宜しくお願いします。』


二人は立ち上がってお辞儀をした。


中学校を後にして、由美子はハンドルを握りながら


『さ、次は制服ね。』


『どうして?明日学校で申込みする筈じゃなかったの?』


『どうしてってアンタ、他の子と一緒じゃ無理でしょ?駅前のさくらやで申込みするって言わなかった?』


そうだったっけ?


『それにおかあさん、ともちゃんのセーラー服姿をいち早く見てみたいもん!』


それが理由か……。


二人はさくらやに向かった。


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