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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学二年生編
174/304

元女装子の告白

食事をしながら話は進んだ。


『社長がLGBTの社員を採用するって言ったのに、菱井さんは女性として働こうと思わなかったんですか?』


『無理だよ。もう男としてずっと生きてきたから今さらって感じだよね。』


知香の疑問に菱井はあっさり答えた。


『でも夏川さんとはあまり歳変わらないですよね。』


菱井も亜季も普通に女性と結婚したが、離婚して女性として生きていくと決めた亜季と家庭を捨てずに男として生き続ける菱井とは大きく違う。


『僕もね、知香ちゃんと同じ様に小さい頃から女の子になりたいって思っていたんだよ。だから何度も女性として生きていこうとも考えたよ。でも男は男らしくするのが普通だってうちのオヤジに言われたりしてね、そういう思いも捨てられなかったんだ。』


『お母さんと離婚しちゃったけどうちのお父さんもそんな感じでした。』


同じ様な境遇のこのみが言った。


『でもこのみちゃんは知香ちゃんや周りの他の人に支えられて女の子として生活出来る様になった訳だよね。昔は男がスカート穿いて街歩いてたら人間扱いされなかったからね。』


菱井は少し大げさに反論した。


さすがに人間扱いされない程ではなかったものの昔は人前で女装なんて出来る環境ではなかった。


『自分は4人兄弟で姉や妹が羨ましくてね、よく隠れて姉や妹の服を着たよ。だけどこのままじゃいけないと思って中学では野球部に入ったんだよ。』


『なんか似てます。私も女の子になってなかったら野球やってた筈なんです。』


このみが共感した。


『菱井さんがもし今中学生だったらどうしますか?』


知香が菱井に質問した。


『どうだろうね。女の子になれたら嬉しいとは思うけど結婚願望が強かった割りに男の人がダメだったし。』


女になりたいという願望と結婚したいという願望を同時に叶えるには自分が男性を受け入れるか自分を受け入れてくれる女性と付き合う事が前提になる。


今でこそそのハードルは低くなったが、当時はかなり高いものだったし、その様な相手に巡り会えたとしてもお互いの家族にも理解して貰うのにはさらに困難な事であった。


『私、今女の子と付き合っていますが変ですか?』


『そうなんだ?それは羨ましいね。もし自分の彼女が女装を理解してくれたらまた違ってたかもしれないね。』


『その彼女さんにカミングアウトしたんですか?』


知香は菱井に矢継ぎ早に質問していく。


『うん、カミングアウトしたら連絡が途絶えて振られたよ。あの頃はそんなもんだよ。就職して女装クラブに出入りする様になって楽しかったけどこのままずっと女装していたら絶対結婚出来ないって思って止めたんだ。あの頃、性転換した人もいたけど水商売しか仕事がなかったからね。』


今と昔の一番の違いは就職が出来ない事であった。


『女装友だちはみんなカミングアウト出来なくて結婚を機にやめた人多かったけど、自分なんかは積極的にカミングアウトした方だと思うよ。その頃勤めていた職場でも今のカミさんにも話はしたし。』


『奥さんは知ってるんですか?』


小田が制作したドキュメンタリーを観る限り妻へのカミングアウトはしていないと思っていたがそうではないみたいだ。


『正確には過去やっていたという話でね。カミさんと付き合い始めた頃は止めてたし、[もう二度としない]みたいな話をしてプロポーズしたんだけど、結局嘘を付いちゃった。』


結婚の前に一度は止めたのは事実の様だ。


『再び女装をする様になったのは東日本大震災がきっかけでね。今の会社に入って最初は群馬の自宅から東京に通っていたんだけど長男が東京の大学に着く進学する事になって二人でアパートを借りて会社に通う様にしたんだけど……。』


『うちの父も東京まで毎日通勤していますが群馬からなんて大変じゃないですか?』


『知香ちゃんのお父さんみたいに毎日通う訳じゃないしここと群馬はそんなに変わらないよ。』


タクシー会社なので朝出社すると次の日の朝までが勤務なので1日置きの仕事なのである。


『とは言っても夜中に家を出ていたからきつくてね。で、長男と一緒に東京に住む事にしたんだけど入学する直前に東日本大震災が起きたんだ。』


10年前だから知香もこのみもまだ幼少期だったが、震災の事は覚えている。


『その頃は東北に比べたら大した事は無かったけど東京も大変でね。みんな自粛自粛って言って経済が回らなくなったから自分の仕事も上手くいかなくなってきてさ、半年くらい凄く落ち込んでたんだけど昔の自分を取り戻すために女装を再び始めた訳……。』


『昔の自分……ですか?』


『うん、昔一番輝いていた時っていつかなって考えた答えが女装をしていた頃だったから。カミさんと別に暮らしているから黙ってたけど、バレてたと思うよ。』


妻に内緒で女装を再開した事には後ろめたい気がある様だ。


『でもこうして小田さんや知香ちゃん、このみちゃんたちと知り合う事が出来たからね。女装をしていろいろな出会いがあったのは良かったと思うよ。』


『もう女性になりたいとか女装しようとは思わないんですか?』


知香は[一子]を見てみたかったのだ。


『もう個人的にはやり尽くしたからね。でも知香ちゃん、このみちゃんに会えて良かったよ。』


少し残念そうな知香だったが、菱井の話を聞けたのは良かったと思った。



すみません、このみたちがいるのにほとんど知香と菱井(私=一子)の会話になってしまいました。


本当の自分の体験談だからまだまだ書く事は出来ますが本編から脱線してしまいますからね(汗)。



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