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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学二年生編
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苛めとラブレター

3学期が始まった。


『おはよう!』


『おはようございます。知香さんに会いたかった!』


年末年始、タイに行っていたので紀子と会う事は無かった。


『もう普通に歩ける様になったんだね。はい、おみやげ!』


松葉づえを使わなくなった紀子に知香はタイみやげのポーチを渡した。


『嬉しい!……で、今度またウチに来て欲しいんだけど。』


幼児になって甘える催促だ。


たまに紀子は精神不安定になる様で、落ち着く為に知香に甘えたくなるそうだ。


『分かった、週末ね。』


隣に居た萌絵は不機嫌な顔をしている。


萌絵は知香の帰国後に会ってみやげはもらっていたが、年末年始を共に過ごした1年前と比べて一緒に居る時間が大幅に減っていた。


(正夢かも。)


正月に見た初夢をそのまま再現している様な気がした。


『あれ?』


知香が下駄箱を開けると、手紙が入っていた。


2学期が始まる前、机のいたずら書きと同時に知香の下駄箱に入っていたラブレターと同じものだ。


『紀子さん?』


紀子はきょとんとしている。


これも紀子の仕業だと思っていたが、別人だったのだ。


『どうしたんですか?……手紙……ってラブレターですか?』


逆に紀子が尋ねている。


『うん、前にも来てたんだけど、ここで待ってるって書いておいて行ってみたら誰も居なかったんだ。』


『そんな事をする人が居るんですか?許せない!』


知香への嫌がらせに憤る紀子はまだ記憶障害が残っているのかもしれない。


『ありがとね、のりちゃん。』


知香は萌絵に聞こえない様紀子に囁いた。


[のりちゃん]は知香と紀子の二人しか分からないキーワードで、紀子は知香からのりちゃんと呼ばれると喜ぶ。


ラブレターを開けてみた。


[ごぶさたをしています。冬休みの間、あなたの姿を見られず辛い毎日です。]


特に会ってくれとは書いていないのが逆に怖い気がした。


(学校がある時はいつも見ているって事?)


そんな事も考えてしまいながら教室に向かう前に一階に設置してある目安箱の鍵を開けた。


『あ、入っている。』


目安箱には1枚投書されていて、それを取り出し読んでみる。


『紀子さん、苛めの投書だよ!』


苛め対策委員長の紀子と共に投書を読んでみた。


『野球部で二年生が一年生の清水を苛めています。助けてあげて下さい。』


『野球部の清水くん?』


『こうちゃん、もしかしてあの清水豊くんこの事?』


小学校時代[康太]が引き篭もった時に知香たちと一緒に[康太]の家に行った清水豊の事だろうか?


『はい。一緒に野球部に入ろうって誘ってくれたんだけど私は康太じゃなくなっちゃったし。でも、同じA組だし今でもよく話はしますよ。』


確か、[康太]をばかにする奴は許さない!って言った正義感の強い子だった。


(そんな子が苛めを受けているなんて……。)


『一年A組ならしおりちゃんも村田くんもいるから先ずは本人に聞いてみなきゃね。後、顧問は……。』


『黒木先生よ。』


紀子が教えてくれた。


黒木は二年の学年主任でもある。


『私も出来る事があれば協力します。』


このみも自分を救ってくれた友だちの窮地を黙って見ている訳にはいかないのだろう。


『ありがと。とりあえず教室に行ったらしおりちゃんたちに報告してくれる?清水くんにはまだ言わないで、放課後対策を考えましょ。』


『分かりました。』


放課後、生徒会室に黒木先生や苛め対策副委員長の村田たちが集まった。


『すみません、よりによって俺のクラスの奴が苛められるのに気付かなくて。』


冒頭村田が謝った。


『村田、それは仕方がない。それを言うなら顧問の俺が悪かった。』


生徒たちの前で黒木先生が謝る。


『それで、教室では清水くんの様子はどうなの?』


『はい。普通にみんなと接している様だけど、放課後に近くなると言葉数が少なくなるみたいです。』


豊を1日観察していたしおりはそう答えた。


『やっぱり部活に出るのが嫌なのかな?』


『それとなく野球部の事清水くんに聞いてみたら楽しいとは言ってたけど、あまりそんな感じじゃないみたい。』


このみの発言は豊が苛めを受けていると思うから余計にそう見えているのかもしれないが、たぶん本当なのだろう。


『他の人に言えないのかな?』


『自分の殻に籠って悩みを誰にも言えない事が一番問題なんだ。特に清水みたいな生徒はなまじ責任感が強いから部活も休まないから周囲が気付かないんだ。』


知香やこのみみたいに学校を休んだりすればそれがSOSのサインとして周囲も気付くだろうが、普通を装おっている方が分かりにくく、最悪の結果を招く恐れがある。


『とりあえず野球部に行ってみましょう。』


『おいおい、まだ本人にも聞いていないのに生徒会の連中がぞろぞろ行ってどうする?吉村だけで良い。』


『分かりました、行きます。』


黒木先生から副会長の吉村が指名されて[生徒会による部活動の視察]をする事になった。


吉村は野球部キャプテンの飯田と同じクラスだ。


知香たちは生徒会室で吉村の報告を待つ事にした。

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