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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学二年生編
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異国の大晦日

翌日は朝食の後、タイの民族衣装のレンタルと記念撮影が出来る店に行った。


所謂変身写真館だが、今は浅草や京都も当たり前になっているし、バンコクや北部のチェンマイでも観光ビジネスとして成り立っている様だ。


店に入り、順番にメイクを施してシルクの衣装にたくさんのアクセサリーを付ける。


『肌触りが素敵!』


なかなか高級なシルクの服を着る機会が無いので気分が高まる。


『人数も多いですし、外で撮影すると言ってます。』


カメラマンと話をしていた倉田が通訳してくれた。


雰囲気のある寺院の壁をバックにして、そこに絨毯を敷き、麗も車イスから降ろされて撮影する。


『きれいですよ、麗さん。』


『恥ずかしいですわ。』


麗は二の腕を気にしていた。


車イスバスケットボールを始めてから、上腕が筋肉質になっているのだ。


知香とこのみは民族舞踊のポーズを教えてもらい、撮影をした。


頼子も恥ずかしそうに撮影に臨むと後ろで上西がにやにやしている。


『良いですね。あんな関係って憧れます。』


このみは一晩経って落ち着いたみたいだ。


『こうちゃんもしおりちゃんに見せなよ。』


『しおりちゃんには見せるけど知香さんと萌絵さんみたいな関係じゃないですから!』


しおりは女の子や男の娘好きな訳では無く、ただ仲の良いクラスメイトなのである。


知香たちはその後、王朝やジムトンプソン邸などバンコクの観光名所を回り、翌日は郊外のアユタヤ遺跡にも足を伸ばした。



そして大晦日。


夕食は日本食レストランに向かった。


レストランといっても高級割烹で、海外で年越しをする日本人観光客も大晦日くらいは和食を食べようと賑わっている。


『そろそろ日本食が恋しくなった頃ではございませんこと?』


確かに、タイに来て4日目となれば日本食が食べたいと思う。


『ここは食材も日本から取り寄せているし職人も日本人だから美味いぞ。』


普段から高級割烹で食べる事なんてないので普通の和食の方が知香の舌には合うと思った。


それでもお酒は飲めない中・高校生の為につまみよりにぎり寿司が中心のオーダーだった。


『なにこれ?とろける。』


舌に入れただけで溶けてしまう様なまぐろのトロを食べたのは初めてだと思う。


日本で無くタイのバンコクでこんな美味しい寿司が食べられるのでびっくりだ。


源一郎やリカルド、上西夫妻らは日本酒を味わっている。


(ここはどこ?)


『お寿司ってこんなに美味しいものだったんですね。』


『このみさんはお寿司は召し上がった事はなくって?』


『回転寿司くらいならあるんですけど……。』


知香も大差無い。


最後にせいろに乗せられたそばが出てきた。


『知香くんの田舎は長野だったね。』


『はい、父方の田舎で毎年伯父がそばを打ってくれるんです。』


去年は実家で萌絵やはずみたちと年越しそばを食べた。


『タカシノソバ、オイシカッタデス!』


リカルドも一郎の父・高志の打ったそばを食べていた。


『おじいさん、これならお店出せるって言ってましたね。』


このみもこんな美味しいそばは初めてだと言っていたのを思い出した。



ホテルに戻りテレビを点けると、あの歌合戦がやっている。


『あれ?もう終わりそうだよ。』


大トリの歌手が歌っている。


『そんな時間でしたっけ?』


このみは去年まで小学生だった事もあり、去年の大晦日は11時頃に寝てしまっている。


歌合戦が終わり、年越し番組が始まった。


テレビの中で除夜の鐘が鳴り響いている。


『まもなく新年を迎えます。』


カウントダウンが始まった。


『5、4、3、2、1……。』


テレビの中は花火が鳴り響いて新しい年が始まった。


『あけましておめでとうございます。』


知香とこのみが新年の挨拶をするが、麗は反応が無い。


『あれ?麗さん、どうしたんですか?』


『まだこちらは10時ですわよ、時差がありますから。』


麗が笑って言った。


『あ!そうだった。日本のテレビはもう新年だけど。』


知香とこのみはお互いの顔を見て笑った。


『でもおかしいですよね。日本もタイも仏教のお寺なのに形は全然違うし、こっちは一年中夏だし。』


『やっぱりタイでも初詣には行くんでしょうか?』


このみが麗に質問した。


『当然でしょう。こちらは日本よりも信仰心が篤いのですよ。日本と同じ正月の他に旧暦の正月やもともとのタイのお正月もありますから。』


『タイの正月?年に3回もお正月があるんですか?』


今度は知香が聞いた。


『4月にソンクラーンというお祭りがあるのです。みんなで水を掛け合ってお祝いするのですわ。』


テレビか学校の教科書か何かで見た様な気がする。


『明日は初詣に行きましょう。』


3人が話しているうちにタイ時間も0時になった。


『改めて、あけましておめでとうございます。』


『知香さん、お誕生日おめでとうございます。』


『え、知ってたんですか?』


去年も新年を迎えた時に[知香]の誕生日を祝ってもらったのだ。


『去年、私だけ寝ちゃったからお祝いしなかったんですけどはずみさんたちから聞いていたから……。今年はお祝い出来て嬉しいです。』


『ワタクシもこのみさんからお聞きしましたの。このみさんも今月でしたわね。』


このみは1年前、父から髪を切られて学校を休んだりしたが、その後女の子として学校に行く様になった。


『はい、[このみ]として学校に行く様になったのは1月20日です。』


『起きたら初詣に行きましょう。』


知香3年目のスタートである。





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