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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学二年生編
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ニューハーフショーを観る!

知香たちは初めての機内食に舌鼓を打ち、映画やゲームを楽しんで約6時間半を過ごした。


バンコクのスワンナプーム空港に降り立つと12月の末であるがみな夏の装いをしている。


税関を出ると迎えの人たちの中に漢字で今井様御一行と書いたプラカードを持った色黒の男性が居た。


『サワディークラッ!』


『言葉分かんないよ、どうしよう!』


麗が車イスを進めて挨拶する。


『サワディーカー、初めまして今井ですわ。』


『初めまして、倉田と申します。お待ちしてました。』


改めて男性が流暢な日本語で挨拶をする。


『日本人?』


『ははは、ずっとこっちに居ると肌の色もこんなになるんだよ。たまに日本に帰っても間違えられるからね。』


倉田雄一というその男性はそう話した。


『私はバンコクでSRSのアテンドや観光ガイドをしております。』


SRSとは性同一性障害の手術の事だ。


一般的にタイでSRSを受ける場合、アテンド会社に申込み、飛行機から病院の予約、入院前後のホテル等全ての手配を代行して貰う。


個人で一切を賄うにはまず言葉の壁が大きいのだ。


『白杉さんと上田さんはまだ中学生だそうですがいずれSRSを受けると伺っています。今回は病院見学などもしますので是非参考にして下さい。』


『宜しくお願いします。』


空港の外は真夏で独特の匂いがする。


『暑い~。』


『今は乾季でほとんど雨が降らないからね。』


倉田が真っ黒に日焼けしている理由が分かった。


一行は現地のウェルキャブに乗り込み、市内のホテルに向かった。


『バンコクは車社会ですから渋滞が慢性的なんです。』


ハンドルを握りながら倉田が説明する。


高速道路は高層ビルの間を縫って走るがなかなか前に進まない。


『東京みたい。』


『市内の鉄道の整備もここ20年足らずですからそれまでは車か船しかなかったんです。』


地方に行く長距離の鉄道は昔からあるが、日本とは違い時刻表通りに走るのは稀で本数も少ない。


ようやくホテルに着き、チェックインした。


『凄い眺め!』


部屋から大きな川が一望出来る。


知香の部屋は麗とこのみが一緒のスィートルームで、上西夫妻はデラックスルームである。


『今日は外での食事ですからあまりドレスコードは気になさらないで良くてよ。』


知香とこのみは涼しげなワンピースに着替えた。


『こちらは蟹のカレー炒めが有名なお店ですの。』


日本の観光客も多く訪れるこの店の名物料理はプーパッポンカリーである。


『お二人も飲んで下さいな。』


『は、はい。』


上西夫妻の新婚旅行を兼ねているが、どうしても二人は遠慮してしまう。


車の運転は倉田だし麗の世話はこのみと知香が行なうので二人は気兼ねなく楽しめる筈だがなかなか普段の癖は抜けない様だ。


食事が終わり、車で20分くらい走るとネオンサインが輝く大きな建物に着いた。


『なんかアメリカの映画に出て来そうな所。』


『ここは何ですか?』


『キャバレーですわ。』


『キャバレー?』


今ではほとんど見かけないが日本で言うキャバレーはお酒を飲んで女性が接客をするイメージがある。


本来、食事を楽しみながらダンスやショーを観る場所であり、タイでは主にニューハーフショーを観る場所となっているが未成年者も入場は出来る。


席に着くと飲み物のサービスがあり、ショーが始まるのを待った。


他の席も欧米人や日本人観光客でいっぱいだ。


いつもは中国人も多いが、中国は旧正月の方が長い休みになるので年末年始はいつもとあまり変わらないらしい。


幕が開くと、大きな帽子に鮮やかでひらひらなスカートを穿いた女性?たちが並んで入場し、音楽に合わせて足を上げ踊っている。


『あれ、フレンチカンカンってやつですよね。私初めて見ました。』


このみが小声で話し掛けるが知香も初めてだ。


フレンチカンカンが終わると今度は昔の中国の衣装を着た女性が歌を披露する。


他にもタイの民族衣装を着て躍ったり世界中の民族衣装を着た美女が登場する。


『あれは日本……だよね?』


花魁の様な衣装を着たニューハーフが登場してきたが、日本文化を茶化している感じもする。


今度は幕が降り、その幕の間からマリリン・モンローの様な女性が左半分だけ身体を見せて何やら踊っていると思ったら引っ込み、今度は髭を生やした紳士が右半分だけ出てきて踊った。


最後に全身を見せると見事に左右で男女一人二役を演じているのが分かる。


『あし◯ら男爵!』


上西さんが立ち上がって叫んだ。


何でも昔のロボットアニメに出てくる敵役があんな感じだったそうだ。


『面白いね。こっちではこんなお仕事もあるんだ?』


『タイのニューハーフ人口は確かに多いけれどそれだけ貧富の差があるんだよ。ニューハーフの方が稼げるし、徴兵から逃れる為という理由もあるらしい。』


タイでは徴兵制が敷かれているが全国民の義務では無く、ニューハーフは統率が取れない為に徴兵されないと言われている。


ショーが終わるとキャストが記念撮影をする為に知香たちのところにやって来たので倉田にカメラを渡し、一緒に写る。


『この方たちはチップ目当てですわ。これも生活の為ですの。』


倉田を通じてチップを渡してもらうと、倉田はどうやら知香とこのみが日本から来たニューハーフだと説明した様だ。


キャストのニューハーフは驚いて倉田に伝える。


『ここで一緒に働かないかだと言っている。』


知香とこのみは笑いながら断った。



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