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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学二年生編
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女の子へのパスポート

2学期が終わり、今年も放課後見守り隊のクリスマスパーティーを行なった。


今年はこのみは麗の世話のため参加せず、五年生のいずみが司会をして盛り上げた。


25日から3日間は冬休みの宿題を片付け、28日からのタイ旅行に備える。


上西夫妻の新婚旅行を兼ねた今井家の家族旅行に知香も招待されたのだ。


『お水には気を付けてね。』


『分かった。行ってきます。』


早朝、由美子の車でこのみを拾い、麗の家に向かった。


『行ってきます。』


麗の家からはいつものウェルキャブに乗り込み、由美子に別れを告げ成田空港へ向かう。


最近、首都圏から海外に行くには羽田からのルートもあるが知香たちの街からは大差なく、都心を経由しないので成田の方が楽な様だ。


『海外もだけど、私飛行機初めてだからちょっと怖いよ。』


『私も。あんな鉄の塊が空飛ぶなんて信じられない。』


知香とこのみは笑いながら話した。


『大丈夫ですわ。機内は快適ですわよ。』


何度も海外旅行を経験している麗は全く気にしていない。


『揺れないんですか?』


『たまに気流が乱れて揺れる事もありますが、ワタクシは怖いと思った事は御座いませんわ。』


『まだ小学校に上がる前に大泣きしましたけど忘れてしまったみたいですね。』


頼子が暴露する。


『……覚えて……ますわ……。』


麗は恥ずかしそうに答えた。


成田に近付くと、次第に飛んでいる飛行機の姿が見え始める。


掘割りを抜け、第2・第3ターミナルとの分岐を過ぎ真っ直ぐ進むと成田空港第1ターミナルがあり、車は第1ターミナル南ウィング近くの車寄せに止まった。


『予約した駐車場が遠いからみなさんはここで降りて先にチェックインを済ませて下さい。』


年末年始の混雑時は空港内の駐車場を確保するのは至難の技だ。


近くに民間の安い駐車場もあるが、駐車場からはバスで空港まで送迎となるため麗の様な車イスがある場合は時間が掛かるため、予約開始と同時に空港内駐車場の予約を済ませたのである。


『広いねぇ~。』


テレビでは見たことがあったが実際に生で見ると圧倒される。


電光掲示板には世界中に飛び立つ出発便の時刻と行先が表示されていた。


『同じ時間で同じ行先なのがあるね。』


『あれはコードシェア便と言うものですわ。日本の会社の航空券であっても運航する会社のカウンターで手続きをするのです。』


知香たちもタイの航空会社の飛行機に乗る事になる。


航空会社のカウンターでチェックインをしてスーツケースを預け、セキュリティチェックを済ませて出国審査に向かう。


『凄い行列!』


自動化ゲートならスムーズだが、初めての海外でよく分からない知香たちは有人ゲートに並ぶ。


知香の順番になり、係に航空券とパスポートを提出するが、係の女性はパスポートと知香の顔を何度も見比べる。


(あ!パスポートは男だったんだ!)


知香の戸籍は未だMr.TOMOYUKI SHIRASUGIでありこのみもMr.KOUTA UEDAなのである。


よく見ると航空券も[知之]だった。


少しだけ時間が掛かったが無事指紋認証を終えた。


『気を付けて行ってらっしゃい。』


係の女性はにこやかに知香に航空券とパスポートを返した。


『あー、びっくりした。審査通らないと思ったよ。』


『私も。つい忘れちゃうね。』


『日本からタイへは手術の為に渡航される方も多いので問題ありませんわ。整形して行き帰りで顔が違ったらどうなるか分かりませんけど。』


車イスの為、早々に審査を済ませていた麗が言った。


実際、整形をしても自動化ゲートの顔認証システムではほぼ大丈夫らしい。


航空会社のラウンジで飲み物を頼んで搭乗時間まで待つ。


搭乗時間になり麗は自分の車イスから機内用の車イスに乗せ替えられ、職員の手で機内に向かい、知香たちも続いた。


『なんか緊張するね。』


『はい。』


知香たちは、ロイヤルシルククラスと呼ばれるシートに案内された。


所謂ビジネスクラスである。


『飛行機の座席って3つか4つくっついているものだと思ったけど。』


『あれはエコノミーですわ。ワタクシだけこちらでは申し訳ないですから。』


年末の繁忙期に車イスのお嬢さまがエコノミーの座席という訳にはいかない様だが海外も飛行機も初体験の知香やこのみがこんな贅沢出来るとは思っていなかった。


(凄い、ベッドみたい。)


座席はフルフラットにまでリクライニングする。


『お客さま、大変申し訳ございませんがリクライニングは安定飛行の合図が出てからのご利用をお願い致します。』


はしゃぎ過ぎてキャビンアテンダントに怒られた。


『動いた!』


飛行機がゆっくり滑走路に向かって動き出すが、まだタキシングの状態で、前を見ると他の飛行機が何機も離陸準備を待って並んでいる。


『渋滞しているんだ。』


なかなか離陸をしないので焦らされる。


いよいよ管制塔から離陸の許可が出て、飛行機は滑走路を勢いよく加速していき、ふわっと浮き上がった。


空港を横目に旋回して房総半島から太平洋に飛行機は飛んでいく。


知香とこのみの初めての飛行機の旅が始まった。

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