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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学二年生編
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暴れ馬知香

新しい執行部が発足して本来なら直ぐに学級委員を召集して生徒会定例会を行なうところだったが、知香は2年B組の学級委員、高野紀子が退院するまで開催を延期していた。


紀子が学校に来て、今まで通り学級委員を続けて行く事がクラスに承認されたのを受け各学級委員に定例会開催の通達を出した。


『みなさん、遅くなりましたが新執行部による初めての定例会を行ないます。改めまして会長の白杉です、宜しくお願いします。


『副会長の吉村です。』


『書記の佐藤です。』


生徒会室には新しい執行部と各クラスの学級委員全員が顔を合わせた。


『先ず、私が提案した目安箱の増設ですが、文化祭の時に工作部の根津部長とお話したら直ぐに作って下さると言って下さり、先ほど受け取りに伺いました。』


知香の前には未だ塗りたてのニスの香りがするポストが二つ置かれていた。


『なお、このポストの予算ですけど工作部の余った材料を使っていますので870円だけ生徒会から捻出しました。』


生徒会も予算が限られているので会長の公約とはいえ事後承諾は本来あり得ないが、最低限の支出に抑えたので異論は出なかった。


『次に、校内の苛めについてですけど、先生方も定期的にアンケートを取ったりして調べてはいますが完全に把握しきれていないのが実情の様です。苛め撲滅の為に生徒会も特別に対策委員会を設置しようと思いますが如何でしょうか?』


知香のもうひとつの選挙公約である苛め対策を発表し、各学級委員から賛同を得た。


『ご承認ありがとうございます。では、対策委員会の委員長ですけど、私の一存で是非二年B組の高野さんにお願いしたいと思います。』


これには各委員も騒然とした。


演説会では確かに紀子も苛め撲滅を公約に掲げていたが、その後で知香に対して苛めの告白をした張本人でもあったからだ。


『すみません、僕は自分で苛めをしたと言った人を委員長にするのは納得出来ません。』


手を挙げて発言したのはしおりと同じ一年A組の村田義人だ。


『村田さんの意見はごもっともだと思います。でも、私は演説会でお話された高野さんの言葉は本物だと思いますし、何より自らが苛めの経験者であれば苛めた側と苛められた側の両方の心理も分かるのではないかと期待しているんです。』


紀子は恥ずかしそうに俯いていた。


『村田さん、でしたら村田さんが副委員長として高野さんと一緒に先頭に立って活動して戴ければと思いますが如何でしょうか?』


『え、俺ですか?』


村田は急に指名され、驚いた。


『私からもお願いします。私は本来ならここに居る事も許されない立場なのですが、会長自ら私に2年B組の学級委員を続けて欲しいと言って下さいました。私は自らの行ないを反省して苛め問題に取り組んでいきたいと思いますが、私一人では誰も信じて付いて来ては貰えません。是非、村田さんに助けてもらいたいと思います。』


紀子の必死のお願いに、村田は考えた。


『分かりました。男・村田、肌を脱ぎます!』


知香は書記のしおりと目を合わせた。


事前にしおりたちと打ち合わせをして村田が正義感の強い生徒だと聞いていたからだった。


『先ずは各クラスでどんなに小さい事でも苛めに繋がる出来事があれば委員会に上げて下さい。上がった問題は直ぐに委員会で話し合い、先生に報告をします。みなさん、宜しくお願いします。』


会議が終わり、学級委員たちは生徒会室を退室し、執行部の3人だけが残った。


『知香先輩、やりますね。』


しおりが感心した。


『ん、何が?』


知香は自分が一人で突っ走った事に気付いていない。


『そうだよな、俺なんか何も口挟めなかったし。』


吉村は自分の存在が薄い事を嘆いた。


『ひな子先輩の言う通りですね。直ぐ暴走するって。』


『直ぐ暴走って……。人を暴れ馬みたいに言わないでよ。』


『暴れ馬の方がまだ言う事聞くかもな。』


吉村としおりは知香をからかった。


新しい執行部も多少知香の暴走癖はあるがチームワークは良好の様だ。



『知香先輩に聞きたいと思っていたんですけど。』


帰り道、しおりが知香に尋ねた。


『上田さん、家庭の事情でアルバイトをしているって聞いたんですが、どんな事されているんですか?』


このみの事だ。


『こうちゃんの事、気になるの?』


『そんなんじゃなく…!』


しおりは顔を赤くして否定する。


『じゃあ、はい。』


知香はスマホのアルバムからこのみのメイド服姿の写真をしおりに見せた。


『わ、可愛い!』


『卒業した先輩のお家で家事をお手伝いしているの。頑張っているわよ。』


『良かった。上田さん、知香先輩の話はよくするんだけど自分の事あまり話さないから。』


両親が離婚して中学生でアルバイトをしているなんてあまり大きな声では言えないだろう。


『そうだ。今度、こうちゃんのお仕事をしている所見に行く?』


『え、良いんですか?』


このみに配慮して最近麗の家には行っていなかったので良い口実が出来たと知香は思った。

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