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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学二年生編
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生徒会長、始動!

日曜日、文化祭の表彰式と共に生徒会の新旧執行部の挨拶を行なう。


『新年度生徒会執行部会長の白杉知香です。只今より新執行部発足を宣言致します。』


知香の宣言で新しい執行部がスタートした。


『副会長の吉村彰吾です。宜しくお願いします。』


『書記の佐藤しおりです。宜しくお願いします。』


この3人で一年間生徒会執行部を運営していく。



生徒会長になったとはいえ、知香の毎日は変わらない。


このみと一緒に登校し、昼休みには萌絵と二人だけの時間を楽しむ。


『……知香……ごめんね……。』


恥ずかしそうに萌絵が謝る。


萌絵はあまりに[のりちゃん]の話をするからデートの最中に怒ってそれ以来ぎくしゃくしたままだった。


『私の方こそごめん。紀子さんが記憶喪失だって誰にも言えなかったから。』


『でも今度は高野さんも友だちになったんだよね。私、あの人嫌いだから。』


萌絵がああいうタイプが苦手なのは分かるが、退院して学校に復帰したら以前とは変わっているかもしれない。


『そうだ、今日は萌絵も一緒に病院に行こうよ。』


『えー、やだよぅ……。』


『大丈夫だよ。紀子さん、萌絵は一緒に来ないの?って言ってるし。』


放課後、萌絵と共に病院に行く事になった。


『こんにちは~。』


病室に入ると紀子は幼児の声で出迎える。


『知香お姉ちゃん、こんにちは!』


『また~、驚かせないでよ。今日は萌絵連れてきたよ。』


『萌絵お姉ちゃん、こんにちは。』


紀子はわざと幼児声を続けた。


『……こ、こんにちは……。』


萌絵はもじもじしながら挨拶を返す。


『ごめんね、八木さんの声って教室でもなかなか聞けないから。ちょっと屋上に行こうか?』


紀子はもう車イスには乗らず、松葉づえで歩ける様になっていた。


屋上の風は少し涼しく感じる。


『たぶん今度の週末退院出来そうだって先生が言ってた。』


先生からこれからは通院で大丈夫と言われた様だ。


『そうなんだ、良かったね。じゃあ学校は?』


『さ来週から行けると思うけど、付いていけるかな?』


元は紀子も知香と同じくらいの学力があるが、2週間のブランクは不安そうだ。


『退院したら一緒に勉強しようか?』


知香の提案に萌絵が眉を潜めた。


『嬉しい!まだ記憶も少しはっきりしていなくて、怖いの。』


『萌絵も一緒に……。』


言い掛けたところで萌絵の顔色を読んで止めた。


『じゃあ紀子さん、日曜日で良いかな?萌絵は勉強嫌みたいだし。』


本当は萌絵にも勉強を教えたいところだが、紀子と二人きりになる時間を試したいと思っていた。


『それと、入院中に私将来の事考えてみたんだけど、声優を目指そうかなって思ったの。』


なるほど、紀子なら普段は真面目そうな声も少しダークな雰囲気も小さい子どもも使い分けが出来そうだ。


それに最近の声優にはアイドルの様な活動をしている人も多い。


子どもの頃アイドルになりたかった紀子にはピッタリだと思う。


『良いよ、とっても良い!紀子さんに合う仕事だよ!』


『本当?知香お姉ちゃん?!』


紀子はまた幼児声になった。


紀子は知香に保育士という将来目指す職業を示しただけでなく自分の将来の目標も決めたのだ。


『八木さんは服飾デザイナー……ですよね。みんな頑張りましょう。』


ちゃんと学級委員は言葉数の少ない萌絵の目標まで知っていた。


『……はい……。』


萌絵も少し苦手意識が解消されたかもしれない。


病室に戻ると、黒川が見舞いに来ていた。


『……黒川くん、優しくしてくれたのは覚えているんだけどちょっと……。』


紀子は知香に耳打ちをした。


『黒川くんは記憶が戻ったのは知っているのかな?』


『分かんない。』


そもそも記憶喪失だった事自体B組の生徒しか知らされていないので他のクラスで話題になる事は無い。


『じゃあ演技してみれば?』


紀子は松葉づえを突いて黒川のところに向かう。


『こんにちは、辰希お兄ちゃん。』


『のりちゃん、つえで歩けるようになったんだ?』


廊下で知香と萌絵は二人の様子を伺っている。


『騙すのもちょっと可哀そうだけどね。』


『知香ってホントお人よし!』


黒川にしても紀子にしてもかつては知香を苛めた相手なのにそんな奴に気遣うなんてと萌絵は思う。


『お兄ちゃん、お散歩したい。』


『今戻って来たばかりなのに大丈夫?』


『うん、早く普通に歩ける様になって退院したいの。』


『気を付けてね。』


二人は知香たちの方に向かってきた。


『隠れよう!』


知香と萌絵は黒川に気付かれない様にロビーの陰に隠れた。


紀子たちがロビーの脇を通り過ぎると、知香と萌絵はひと息付いた。


『どうするのかな?』


『こういうのは他人が口挟めないからね。』


二人がロビーで待っていると、紀子は一人で戻ってきた。


『待たせてごめんね。』


どうやら紀子は記憶が戻った事を伝えた様だ。


『黒川くんは?』


『帰ったよ。』


その一言で、黒川の初恋が終わった事を知香も萌絵も理解したのだった。

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