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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学二年生編
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紀子とクラスメイト

知香は紀子を連れて生徒会室を出た。


新旧役員が交代で全てのクラスを回る仕事を兼ねながら紀子を案内する。


最初に二年C組に向かった。


『お!生徒会長が来た!』


C組の雪菜が知香を冷やかしに来た。


『麗さんも……あれ?高野さん?』


知香は人差し指を立てて口に当てた。


『なるほど。』


クラスが違う雪菜は紀子が記憶喪失になっている事は知らなかったが知香の気持ちを読み取り、無言で教室に案内した。


さすが長年の親友である。


C組の出し物は[日本のお金]に付いての研究と展示である。


新しい一万円札に地元出身の渋沢栄一が描かれることになった為新旧のお札や硬貨を調べている。


もちろん本物の展示は無く、コピーしたものやネットから画像を集めたものである。


『これ、駅に居るおじさん?』


『そうだよ。のりちゃん良く分かるねぇ!』


駅前の渋沢栄一像は知香や紀子が生まれる前からあるので見覚えがあるのだ。


『麗さんかと思ったけど高野さんだね。チカを見ていると全然違和感ないよ。』


知香たちを見付けたはずみが雪菜に話し掛ける。


『ともちは高野さん嫌いなわけじゃ無いんだよ。麗さんの時と一緒だと思う。』


雪菜は知香と麗が出会った時に一緒に居たので知香の気持ちを理解している。


知香たちはB組に入った。


B組の出し物は駄菓子喫茶で、昭和の駄菓子屋さんをイメージした喫茶店という趣きである。


『のりちゃん、いらっしゃい。』


B組の生徒たちは紀子を歓迎して話す時は必ず紀子の目線になる様しゃがんでいる。


『のりちゃん、何食べる?』


『え~とね、きゃべ太郎とよっちんの酢イカ!』


紀子が本当の幼児の頃に好きだったものかもしれない。


『はい、のりちゃん、おまちどうさま。』


優里花は割ぽう着を着て昭和のおばちゃんをイメージしている。


『ありがとう!でもなんでみんな紀子のこと知ってるんだろう?』


紀子は疑問に思う。


『ここ、私のクラスだしさっき健介お兄ちゃんも一緒だから。……あ、そうだ!』


知香は思い付いた。


『まだそんなに混んでいないから手が空いている人みんな来て!一緒に写真撮ろう!』


暇そうにしているクラスメイトたちが紀子を囲み、知香がシャッターを切った。


『チカも入んなよ。』


隣のA組から様子を伺っていた美久が入ってきてカメラをよこせと言い、知香も一緒にカメラに収まった。


『A組はオリンピックとパラリンピックに付いて調べたよ。見に来てね。』


『オリンピックってな~に?』


今年は東京オリンピックとパラリンピックが開催されたが、残念ながら紀子の幼児時代の記憶にオリンピックは無い。


『そろそろ戻ろうね。』


2年生の視察が終わり、残りの1・3年生は紀子が帰った後に一人で回る予定だった知香は紀子に話し掛けた。


『……のりこ、疲れちゃった……。』


『のりちゃん?』


知香が紀子を見ると、凄く怠そうに汗を掻いて熱もありそうだった。


『美久!』


『うん、先に浅井先生に伝えておく。』


美久が保健室に走り、知香が車イスを押して保健室に到着した時は浅井先生も美子も待ち構えていた。


『先生……。』


『ちょっと疲れたんでしょう。暫く休ませて様子を見ましょう。』


『私もここに居るからみんなは自分たちのところに戻りなさい。』


美子が知香たちを保健室から出した。


『やっぱり、最初から無理だったかな?』


知香は落ち込んでいた。


『そんな事言っても、病院の先生たちだって許可出したんだし、B組のみんなだって協力してくれたんだからチカは悪くないよ。少なくても、写真撮った時紀子さんもみんなも凄く良い顔してた。』


知香はカメラを再生モードにして美久が撮影した画像を見た。


『ホント、良い笑顔だ。』


『後はお母さんたちに任せよう。』


結局、美久の母・美子は美久の教室に顔も出さずに看護師としての仕事を全うしている。


『ごめんね、美久。』


『なによ、チカらしくも無い。もっと元気出しなよ。』


美久に励まされた知香は生徒会室に戻った。


『どうしたの?生徒会長さん。』


ひな子がソファーに座って俯く知香にお茶を淹れた。


『まだ会長じゃないです……。』


『もっと自信持ちなよ。少なくても選挙の時までは自信に満ち溢れていたんだから。』


『そうですよ。今の先輩じゃあんまり尊敬出来ませんよ!』


しおりも笑って知香に冗談を言った。


『先輩……しおりちゃん……。』


お茶を飲み干すと、少し元気が出た。


『ごめんなさい、なんとか頑張ってみます。』


少しでも前向きに考えようと気持ちを改めたその時、美子が生徒会室の戸を開けた。


『知香ちゃん、紀子さん熱下がって目が覚めたわよ。』


『ホントですか?』


知香は立ちあがり、ひな子たちの顔を伺う。


『良いわよ、言って来なさい。私たちで留守番してるから。』


『ありがとうございます!』


知香はひな子としおりに礼を言って部屋を出た。


『ひな子先輩。』


しおりがひな子に尋ねる。


『なに、しおりちゃん?』


『やっぱり知香先輩って良い人ですよね。』


『うん、私もそう思うよ。もう一緒に仕事出来なくなるのはちょっと淋しいけど。』


しみじみとひな子は話した。


『その分、私が知香先輩と一緒に頑張ります!』


『知香さんも今みたいに思い込むと突っ走っちゃうから上手く見てあげてね。』


『はい!』


こちらの引き継ぎはしっかりスムーズに行なわれていた。


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