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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学二年生編
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壮行試合

連日、どこもかしこも話題はオリンピックだ。


しかし、オリンピックが終わるとパラリンピックもある。


パラリンピックに選ばれた選手たちはオリンピックに脇目も振らず自身、あるいはチームの調整に余念がない。


女子車イスバスケットボールの日本代表チームは、若手の有望選手たちの混成チームとの壮行試合を行なう事となった。


麗はこれまで対外試合に出場した事は無かったが自チームコーチの綿貫の強い推薦があり若手チームに選抜されていた。


上西さんの運転するマイクロバスがさくらやの前に止まり、待っていた小学生たちが乗り込んだ。


『上西さん、宜しくお願いします。』


『おはよう。凄い応援団だね。麗さんも頑張ると思うよ。』


麗はリカルドの運転する車で、頼子や父の源一郎と共に先に会場に向かったとの事だ。


残念なのはこのみは留守番で同行はしない。


しかし、一人で留守を任される程今井家の信用を勝ち取っているとも言えるのでそれはそれで頼もしく喜ばしい。


バスは一時間掛けて県内の会場に到着した。


応援席に着くとリカルドが既に待ち構えている。


『トモカ、マッテマシタ!』


『リッキー!』


席に付くと、全員にスティックバルーンという長い風船を二本ずつ配られた。


この二本のバルーンを叩いて応援摩るのである。


日本代表チームの応援団は試合開始までまだ時間があるが既にバルーンを叩いて賑やかに応援をしている。


若手チームの応援席はまだまばらで静かだ。


『ともち、盛り上げちゃえば?』


『えー、私が?』


雪菜に促されていやいや席を立つ。


『みなさ~ん、盛り上がって応援しましょう!』


『なんだかんだ言ったってともちはやるんだよね。』


『きな、後でお返しするからね!』


下でウォーミングアップをしていた麗が知香に気付いて手を振ったので、右手の親指を突き出して合図をする。


試合が始まると、麗は直ぐに味方選手からパスを受け取った。


しかし、相手は左右に壁を作り前に進めない。


昔得意にしていた相手の足元にボールをバウンドさせてその先に居る味方にパスを通す方法は車イスバスケでは出来ない。


やむを得ず相手の頭を越える高いパスを繰り出したが、相手選手は180度振り返ってすぐさま落ちてきたボールを後ろ向きでキャッチする。


『あれが取られるの?』


そのまま相手選手はドリブルしながらゴールを陥れた。


『これが日本代表……。』


麗も知香もあ然としたが、相手の攻撃は怒涛の如く続いて瞬く間に大差が付いた。


最終の第4ピリオドになった。


ここまで64対7と、若手チームは為す術もなくやられ放題だった。


特に初めての対外試合となる麗は徹底的にマークされ、反則すれすれに車イスをぶつけられては怯み、その隙に得点を許していた。


『今井、最後まで行くぞ!』


そんな麗を監督はベンチに下げず、フル出場を言い渡した。


『はい!』


悔しい表情をおし殺し、麗はコートに向かう。


味方から麗へパスが回り、ドリブルをして相手ゴールに向かう。


日本代表とはいえ、相手選手もかなり疲れている様だ。


麗は左サイドに回ると一瞬隙間が見えたので一か八かロングシュートを放ち、ボールは見事リングを潜り抜けた。


『スリーポイント取ったぁ!』


知香たちは大喜びでスティックを叩く。


しかし、試合は72対10の大差で日本代表チームに軍配が上がり、若手チームは涙を飲んだ。



『お疲れさまでした。』


『悔しいですわ。』


試合が終わり、知香たちが労いのために麗のもとに行くと麗は号泣していた。


『自分の不甲斐なさが身に滲みましたわ。』


『そんな事ないですよ。最後のシュート、凄かったです。』


知香の慰めも効果が無い。


そこに、相手チーム、即ち日本代表監督である徳田が麗のもとにやって来た。


『今井くん、初めてのゲームだから仕方ないが随所に君の良いプレイが光って見えた。』


『監督さん……。』


『キャリアを積めば4年後のパラは日本代表になる力は充分持っている。待ってるぞ。』


『……はい、ありがとうございます……わ。』


麗は徳田の思いがけぬ励ましに泣きながら返事をした。


『凄い!良かったですね、麗さん!』


知香たちも祝福した。


『君の様な若手選手がいっぱい居れば4年後も充分メダルはいける。頑張ってほしい。』


女子車イスバスケットは以前強い時期もあったが、今は低迷気味で、中心選手は比較的年齢が高い。


事故や病気で車イス生活を送る選手の事を思えば複雑な感じもあるが、もっと若手に出て来てほしいというのが日本代表の願いなのである。


『……頑張りますわ……。』


その言葉はいつもの自信満々の麗であった。


『そう、4年後ですね。』


『知香さんとの約束ですわね。』


共に4年後の目標に向かって頑張っていこうとの約束は忘れていない。


小学生たちも初めて観る車イスバスケットボールの迫力に帰りのバスでは盛り上がっていた。

車イスバスケットボールの試合を実際に観たのはこれより後でしたが、やっぱり観る前と後ではかなり印象が違いました。手直しはしていませんが、今後はもう少し迫力あるシーンを書けたらと思います。

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