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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学二年生編
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キャサリンの告白②

由美子たちが酔い潰れて寝た後も、キャサリンとの会話は続いた。


テレビではオリンピックの開会式が流れていて知香とこのみ以外は話を聞きながら目はテレビの方を向いている。


『あなたたちはお髭や脛毛も生えて来ないし声も普通に高くて良いわよねぇ。ワタシだって無理してオネェ言葉とか使いたくなかったの。』


知香もこのみも声変わりの前に病院に行き始めたが、声帯が変わってしまえば自然に高い声を出す事は出来なくなる。


体毛も現在では永久脱毛の技術が進んで普通の男性でも施術を受ける時代ではあるが時間もお金も掛かるので、やはり知香くらいの時に病院に行けるのは羨ましいのだ。


『もし、私たちがキャサリンさんの時代に生まれたらどうなっていたでしょうか?』


知香は逆に質問してみた。


『あなたが男の子のままだったら根暗だから自殺してたんじゃないのぉ?』


『そうかもしれないですね。』


今だから笑い話で済む問題だが、実際に悩んで自ら命を棄ててしまった人も居たかもしれない。


『あなたは自分を押し殺して生きていくかもね。たまに隠れて女装クラブに行ったりとか。』


知香との出会いがなければこのみはたぶん我慢して普通の男性として生きていった可能性が高い。


そう考えると人と人との縁は不思議なものだ。


『でもね、お二人さんも他のみんなもこの先の人生長いんだから誰と出会ってどうなるかなんて分からないでしょ?もしかしたら変な男に騙されてろくな生き方出来なくなるかもしれないわ。そうならない様に自分のやるべき事をしっかり考えていくのが大事よね。』


知香はまだ女性になった先の事は考えていない。


『ワタシもあっち行ったりこっち行ったりしたけど後悔していないわ。あなたたちも頑張ってね。』


『ありがとうございました。キャサリンさんって普段は新宿で働いているんですか?』


知香は別の質問をしてみた。


『そうよん。あなたたちにはまだ早いけど興味あるのかしら?』


『たまに担任の先生が大学時代に新宿で遊んだ話をしてくれるんです。若い先生だけど私の気持ちとか理解してくれるから。』


担任の木田先生もそうだが浅井先生も大学時代は新宿で遊んだ話をよくしてくれる。二人は大学時代に新宿で意気投合した飲み仲間だ。


『ワタシの知ってる人かしら?お写真とかある?』


知香はスマホで撮影した先生の写真を見せる。


『あら~ん、ぽっぽちゃんとデコ助ちゃんじゃな~い?』


変なあだ名だが、キャサリンと先生たちは顔見知りだった様だ。


『なんですか、その名前?』


『ぽっぽちゃんはお酒飲むと頭から湯気が出るくらい話が止まらなくなるの。デコ助ちゃんはおデコ広いでしょ?』


なんとなく分かる。


2学期になったら言ってみよう。


『あなたたちがお酒を飲める様になったらいらっしゃい。サービスするわよん。』


由美子の姿を見ている知香は飲み過ぎない様、今から心掛ける事にした。



翌朝、由美子と千奈美は朝食の時間近くになっても起きて来なかった。


キャサリンは結局自分の部屋に戻らず、ソファーで寝ていた。


『あらイヤだ、お仕事行かなくちゃ!普段は夜型だから寝てるのよぅ。』


キャサリンは目の隈を隠す様に厚めのメイクをしてそそくさと出掛けた。


『知香さん、眠くないですか?』


このみは少し眠たそうな顔で聞いた。


『うん、大丈夫。こうちゃん、今日はあんまりはしゃがないで疲れたらビーチで寝た方が良いよ。』


目覚めの為に朝風呂に入る。


もう陽は高く上がったが、夜明けの時なら水平線から日の出を見ながら入浴するのも良い。


『お母さん!』


『ゔゔぅっ。頭が割れる…。ごめん、昼まで寝させて……。』


由美子だけでなく千奈美も同じ状態だ。


こんな姿はいずみには見せられない。


リビングのテーブルにはビールの他、高そうなウィスキーが2本とワインの空瓶が転がっていた。


由美子たちが寝た後もキャサリンが飲んでいたとはいえ、二人もかなりの量を飲んでいたと思う。


知香たちは大人を部屋に残して、海の家に向かった。


『おっはよー!昨日はよく眠れたかなぁ?今日もばっちりエンジョイして行こーっ!』


迎えに来る金髪の男はちょっと苦手だが、海の家では有名なDJらしい。


個室に入ると、キャサリンが飲み物を持って来た。


『今日もいっぱい楽しんでねん。』


キャサリンはどれだけ飲んだのだろうか、それでも全然二日酔いをしている様には見えない。


知香たちは浮き輪やビーチボールを借りて海で遊んだりパラソルの下、ビーチベッドで休んだりして楽しんだ。


昼にはようやく由美子たちがやって来てバーベキューに舌鼓を打った。


『昨日はごめんね。これ買ってきたから……。』


持っている袋の中には大きなスイカが2つ入っている。


『よーし、スイカ割りしよう!』


一番最初にいずみが挑戦した。


『いずみちゃん、もっと右!そう、そのままずっと前!』


ふらふらしながら進み、


『良いよ、そこそこ。せーの!』


棒を振り下ろすとぺしっと音がした。


『あれ?』


いずみは力不足でスイカには当たったがひびが入った程度で完全に割れてない。


『あー、残念!』


『でもちゃんと当たったよ、すごいすごい!』


その後はこのみがひとつ目のスイカを割り、もうひとつは優里花が割った。


初めて女子の水着を着て海で遊び、キャサリンという先輩に会えた事は知香にとってかけがえの無い思い出になった。

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