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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学二年生編
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キャサリンの告白①

海辺で夕方まで遊び、ホテルに戻るともうひと部屋の準備も出来ていて雪菜たちは荷物を持って部屋に向かった。


この後お風呂に入って6時から夕食となる。


『さ、私たちもお風呂入ろ。こうちゃん先に入りなよ。』


知香とこのみの部屋のお風呂はオーシャンビューだが、一人用である。


『知香さん、一緒に入りませんか?』


このみが申し訳なさそうに誘ってきた。


『良いよ。あ、萌絵には内緒ね。』


そんな事を知ったら絶対萌絵は嫉妬するだろう。


ふたりは裸になり、お互いの背中を洗い合った。


ふたりとも男性としての二次性徴を抑えているのでこのみの下半身も少し小さい感じに見える。


知香は男性の機能はほとんど無くなっているが、現段階で薬を止めても機能は復活するらしい。


『知香さん、少し胸あるんですね。』


知香の胸はこのみがパットを着けたくらいの大きさはある。


『こうちゃんはまだだね。』


二次性徴を抑える薬は個人差があり知香の様に胸が膨らむ場合もあるが必ずしもそうはならない。


『良い眺めだね。』


海を見ながら入るお風呂はちょっと狭いけど良い気分だ。


風呂から上がり、レストランで食事を済まして知香の部屋に集合した。


『みんなでゲームやろうと思ったのに、さっきのオカマのお姉さんとお話するんでしょ?』


ありさはトランプとかボードゲームをいくつか持って来ていた。


『まあ今日は開会式もあるしテレビを観ながらお話しようよ。』


特別オリンピックに興味は無いが、生まれて初めて国内でのオリンピックであるので開会式は観てみようかなとは思っている。


『お母さんたちは冬だけど観たわよ。』


長野オリンピックは22年前だから由美子や千奈美が今の知香たちくらいの頃だろうか?


『フナキ~って流行ったよね。』


そう言われても生まれる遥か前の話だから困る。


呼び鈴が鳴り、どうやらキャサリンが来た様だ。


『は~い。』


『どぉ~もぉ~、キャサリンどぇ~す!』


きらびやかなタンクトップにラメ入りのスカートという微妙なスタイルでキャサリンはやって来た。


(ホテル公認と言っても大丈夫なのかな?)


誘ったのは知香だったが一抹の不安を感じた。


『みなさ~ん、ごっきげんよ~。』


みんな引き気味に引き吊った笑顔を返す。


『どうぞ、座って下さい。』


知香はキャサリンをソファーに案内した。


『フロントからメッセージ預かっているわよん。飲み物はいくら飲んでも良いって。今井さまからの伝言らしいの。ママさんたちは飲めるクチ?』


『は、はぁ……。』


由美子が酒を飲むとろくな事は無いと知香は分かっていたが、ここで子どもの立場で悪酔いするから飲むなと由美子に言うのはキャサリンにも麗にも失礼だと思い、冷蔵庫からビールを取り出して3人に注いだ。


『あら、気が利くわね。ウチの店にスカウトしようかしら?』


『ジュースとかもあるからみんなも飲みなさい。』


子どもたちもそれぞれ好きな飲み物を注ぐ。


『それじゃあみんなでおっぱ~い!』


キャサリンがお店で使う乾杯の合図らしい。


食後だが海で遊んでみんな喉が渇いているのか、ほとんど一気に飲み干した。


『あら、ママさんたち良い飲みっぷり。今日はダンナも居ないし、飲んじゃいましょ♪』


千奈美も結構強そうだが、キャサリンから注がれたビールを再び一気に飲み干す二人を見て知香は心配になってきた。


『ねぇ、のぞみんちのお母さん、お酒強いの?』


『さあ、普段飲んでるの見た事が無いよね。』


『うん。』


のぞみもいずみも千奈美のお酒を飲むのを見たのは初めてだった。


『ワタシはぁダンサーやっててあるお店にスカウトされたのぉ。最初はボーイだったんだけど、オンナの方が良いって言われたのよぉ。』


キャサリンが話始めた。


『そのうちねぇ、ワタシの事好きって言ってくれた男がいたの。嬉しくって、直ぐ抱かれたんだけど……。』


のぞみはいずみを別の部屋に連れて行った。


『スゴく痛くて、ワタシホントにオンナにならなきゃってその時思ったわ。一生懸命働いて、2年経ってタイで手術したの。』


『……日本じゃなくてタイなんですか?』


知香も自分で調べたり病院で言われたりしてタイで手術を受ける話は知っている。


『ワタシの頃はねぇ、日本では公には手術は出来なくて出来たとしても闇医者だから失敗して可哀想な目にあった子は何人も見たわ。』


日本はこの手の医療に関しては遅れているのだ。


『タイで手術を受けて、死ぬ様な痛さも経験したけど嬉しかったわ。でもね、日本に帰ってきたらその好きな人は別の娘に乗り換えちゃってね。』


苦労してようやく女になったと思ったら相手に振られるとは、なんとも哀れだ。


『それからワタシはお笑いに徹する様になったわけ。まあ、二人には関係なさそうな話ね。』


『そんな事無いです。とても参考になりました。』


知香だって少し前に生まれたら人生はどう転んだか分からない。


自分たちはこういう先輩の土台があるからこそ社会や学校で認知されているのだと改めて思う。


『こうちゃん、頑張ろうね。』


『はい、知香さん。』


突然、千奈美が泣き出した。


『ゔゔぅ~っ。感動じました!キャサリンさん、頑張ってぐださい~!』


千奈美は泣きながらキャサリンに握手する。


『いや、あんたもっとオンナを磨かなきゃ。ベースは良いのにお笑いって勿体ないんだよ。』


由美子はキャサリンに絡んできた。


見るといつの間に空のビール瓶が6本転がっていて高そうなウィスキーも栓が開いている。


『……もうダメだ……。』


知香は由美子の顔を見て諦めた。


『もっと自分で道を切り開けば良いのよ!せっかくオンナになったんだからオンナの幸せを追及しなきゃ。あんたはそれが出来る!』


そう言いながら由美子は意識を失った。


千奈美も既にソファーに身体を預け眠っている。


『キャサリンさん、ごめんなさい。』


『良いのよ、こんなのお店じゃよくあるから。お店だとタクシーに無理やり乗せちゃうんだけどタクシーの運転手さんも泥酔している客はダメだって言うからね。』


そりゃ自分の帰る住所すら言えない泥酔者を乗せる訳にはいかないだろう。


タクシー運転手だってこんな客は願い下げだ。


キャサリンは一人づつ抱き上げてベッドに寝かせて戻って来た。


『あんたたちの様に親や友だちからも理解をされるのは羨ましいと思うけどワタシは自分が生きて来た道を後悔していないし、あなたたちと出会えて良かったと思ってる。だってこんな可愛い後輩たちなんだもん。』


知香もこのみもキャサリンというこんなに素晴らしい先輩と出会えて良かったと思った。

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