表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学二年生編
126/304

東京に行こう①

中間テストが終わり、萌絵はなんとか全教科赤点を免れた。


『萌絵はもっとやる気を出せばこんなもんじゃ無い筈だよ。』


知香は敢えて萌絵に厳しくして言った。


出来れば同じ高校に通いたいが今の二人の差を縮めるには容易では無いからだ。


『これ以上は無理だよぅ。』


勉強が嫌いな萌絵は自分で限界を決めつけてしまっている。


試験が終わった事で、緊張感に包まれた教室の空気が一変して和やかな雰囲気が漂っている。


『白杉さん、ちょっと良いかな?』


木田先生に呼ばれて、知香は職員室に向かった。


『来月の校外学習の事なんだけど。』


二年生は毎年6月に1泊2日の校外学習が行われる。


一年生の時は日帰りだったから問題は出先のトイレくらいだったが、泊まりとなると部屋や風呂等問題が増えてくる。


因みに、こうした生徒の扱いについては一人だけ入浴時間をずらしたり一人部屋の使用も認める等文科省から指導がある。


『私、気の許せる友だちなら個室じゃなくても大丈夫ですよ。』


現にお互いの家や知香の田舎で同じ部屋で過ごした経験があるのでさほど気にならない。


『二人部屋に八木さんと一緒はちょっと問題だけど、4人部屋で野村さんと3人でどうかしら?』


萌絵の交際宣言のおかげで2人だけはまずいと木田先生も思ったのだろう。


優里花と萌絵の3人なら班も一緒だから問題は無い。


『4人部屋を3人で使って良いんですか?』


『そこまで言うほど広い部屋じゃ無いし、他のクラスでも3人で4人部屋のところがあるの。』


他の生徒はほとんど畳敷きの10人部屋だが、施設自体は2・4人のベッドルームが主になっている。


最小限の部屋数にして生徒を無理に詰め込む事も可能だが、班の構成もある為に各クラスに余りが出てしまう。


『野村さんと一緒に泊まるのは初めてですが、たぶん大丈夫だと思います。』


教室に戻り、優里花に確認した。


『私は大丈夫よ、お目付け役が居ないとこの二人は何するか分からないし。』


萌絵は一瞬不服そうな顔をしたが、3人一緒の部屋となり一件落着した。



校外学習の日は通常より早く学校に集まり、クラス毎にバスに乗り込んだ。


『本日は利根交観光バスを御利用下さいまして誠にありがとうございます。本日、明日と皆さまをご案内致しますのは運転士粕谷、ガイドは木村と申します。』


バスガイドは木村文江さんと言って、高校を卒業してまだ間もない18歳の新人さんだった。


『木村さんは付き合っている人いますか~?』


さっそく男子生徒から攻撃を受ける。


『えー、今募集中です。』


一つ一つの質問に真面目に答えるところが初々しい。


研修が終わって初めて一人で乗務したのは6月になってからなのでまだ数回の経験しか無いのである。


『木村さん、このクラスの女子の中に元男子が居るんですが分かりますか?』


栗田という男子が余計な質問をした。


『栗田くん!』


木田先生が栗田を嗜めながら知香の方を見るが、一応知らん顔をした。


栗田の余計な一言は別にして木村さんに直ぐ気付かれては面白くない。


『それってこのクラスには性同一性障害の生徒さんでも居るんですか?』


『そうで~す!』


複数の男子が声を揃えて言った。


『木村さん、当ててみて下さい。』


自分が直ぐに当てられるのは女子としてはまだまだで悔しい気もするが、他の子が当てられたら可哀想だ。


『えっと……、あなた!』


最初に指されたのはなんと高野紀子だった。


『木村さん、良く見て下さい。私のどこが元男子に見えますか?』


暗に知香を批判している様な言い方にも聞こえるが、知香は無表情を続けている。


『ごめんなさい、最近の女装する男の子って凄く可愛いから。』


つまりは紀子も可愛いという意味だ。


紀子は複雑な表情だった。


『じゃあ……あなた?』


木村さんは知香の傍まで来たが、次に指されたのは優里花だった。


『私、ともちより男子っぽいのかな?』


優里花が通路を挟んだ隣の知香に言うと、木村さんが気付いたみたいだ。


『え?え~っ!あなたなんですか?』


『はい、そうです。』


木村さんは知香をじろじろ見てまだ信じられないという顔をしている。


『か、可愛いですね。お名前教えてくれますか?』


『白杉知香です。』


仕事を忘れ、知香を見続けている木村さんを見かねて運転士の粕谷さんが咳払いをした。


『あ、ごめんなさい。それにしてもびっくりしました。みなさんも普通に接しているんですね。』


『次期生徒会長には逆らえませんから。』


また栗田が余計な事を言い、その瞬間紀子が栗田の方を向いて睨み付けた様な気がした。


『そうなんですか?じゃあ白杉さんに今回の見どころとか予習してきた事お話してもらいませんか?』


(あ、まためんどくさい振りが来た。)


『すみません、ここは学級委員の高野さんからの方が…。』


ここは空気を読んで紀子を立てる方が良いだろう。


『では私からで宜しいですか?』


紀子が手を挙げると、木村さんはばつが悪そうに


『あ、あなたが学級委員さんですか。さっきは失礼しました。』


そう言って紀子にマイクを手渡した。


紀子は得意気な顔で今日明日回る場所の見どころを説明し始め、知香はこの先思いやられる気がした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ