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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学二年生編
123/304

小さなメイドさん

『じゃあ行ってきます。』


『ゆっくり楽しんで来てね。』


記録会から一夜明け、今日は一郎とはずみのデートだ。


二人だけのデートなので知香は自宅から見送るだけである。


一郎が出かけると、知香も家を出て萌絵と合流し、麗の家に向かう。


麗が高校に入学して初めてのお呼ばれである。


『こうちゃん頑張ってるかな?』


このみが麗の家で働く様になってからなるべく邪魔をしない様にしていたので、1ヶ月でどう馴染んだかも気になるところだ。


『おはようございます。』


インターホンを鳴らすとこのみの声が帰ってくる。


『お嬢さまのお友だちの白杉さまと八木さまでございますね。承っております。少々お待ちくださいませ。』


『こうちゃんの声だ!』


二人はこのみの丁寧すぎる応対に目を白黒させた。


『凄いね。』


そのままこのみが出迎えると思って待っていたが門に来たのは中野さんだった。


『お久しぶりです……ってその格好?』


中野さんは以前嫌がっていたメイド服を着ている。


『おはようございます。このみさんが来てから、制服になってしまいました。外に出る時は着替えますが。』


瘦せ型の中野さんはメイド服が良く似合う。


『素敵ですよ。』


『少々動きづらいのですが。』


確かに裾が広がっていて実用的とは言い難い。


玄関ではこのみが待ち構えていた。


『お待ちしておりました。どうぞお入り下さい。』


このみに案内されてピアノや大きなテレビがあるリビングに向かう。


『こうちゃんいつもこんな感じなの?』


『はい、おかげさまで徹底的に指導されております。』


中学一年生が話す言葉とは思えない。


が、いつも一緒に通学している時は一切こんな喋り方はしていない。


『普段とお仕えしている時とは使い分けをしなさいと言われておりますので。』


麗の様にお嬢さまならともかく、普段は普通の女子中学生として生活しなければならないし、ましてやまだ女の子として生活を始めて4ヶ月程度だ。


職場での癖が身に付いてしまうと逆に不自然に思われる。


『どうぞ、お入り下さい。』


リビングには麗が待っていた。


『知香さん、萌絵さん、ごきげんよう。』


『ご無沙汰しています。高校生活は慣れましたか?』


『はい。みなさんワタクシを普通に扱って下さいますの。楽しく過ごしておりますわ。』


麗の話を聞いて知香は安堵した。


たぶん周りはみんな麗みたいなお嬢さまなのだろう。


『それで、こうちゃんなんですが変わりましたね。』


『中野さんが毎日厳しく指導しておりますから。でもこのみさんは頭も良いしよく動いて下さいますわ。』


そう言いながら、麗がテーブルの上のベルを鳴らすと直ぐにこのみが入ってきた。


『お嬢さま、お呼びになりましたでしょうか?』


『このみさん、いつも通りにして宜しくてよ。』


どうやらあのスタイルは来客のあった時だけみたいだ。


『それにしても働き始めてまだ1ヶ月なのに凄いね。』


『結構失敗ばかりしていますが、勉強になります。』


知香に誉められ、このみは照れた。


『中野さんがメイド服着ているのもびっくりしたけど。』


『実は知香さん、萌絵さんのも用意しておりますの。』


中野さんが知香たちのメイド服を持ってきた。


『私たちもこの家で働けって事ですか?』


『とんでもございませんわ。お二人ともこの様なお姿好きでしょう?』


萌絵が衣装をチェックしてみる。


『この生地、凄い高級品みたい。縫製もしっかりしているし。』


普通に買ってもかなり高い様だ。


『これを着て仕事をすると、緊張感が増すんですよ。もっとも、これはお客さまが来られた時だけ着るもので、普段のメイド服はこんなに高くないそうです。』


二人もメイド服に袖を通したが、生地が滑らかで確かに高級感が漂っている。


『こんな着心地、初めて。』


萌絵が興奮して言った。


ロリータ服だけでなくメイド服もいくつか持っている様だがこれだけの服を着た事はないみたいだ。


『上西さん、みなさんの写真をお願い出来ますか?』


上西さんが来て知香はカメラを渡す。


『この部屋がそのまま撮影スタジオみたい。』


知香と萌絵、それにこのみはお茶の間に撮影を楽しんだ。


『さて、お二人はそのままごゆっくりして下さいませ。』


麗と中野さん、このみは奥の間に消えた。


『みんなどうしたのかな?』


お茶を飲みながら残された二人は不思議がる。


暫くすると、麗がバスケットボールのユニフォームを着て現れた。


上西さんとこのみはトレーニングウェアを着ている。


『麗さん、これは?』


『あれからワタクシ、猛練習致しましたのよ。今日はお二人に見て戴こうと思いまして。』


車イスバスケのチームに入って全体練習は週一回くらいだが、毎日上西さんのコーチを受けて自宅で練習していたのだ。


このみがボールの入った籠を持ってきて、麗にパスを出す。


麗はボールを受け取りドリブルをしてゴールにシュートした。


ボールはリングに当たってゴールはならなかったが以前はゴールまで半分しか届かなかったのだ。


再び、このみがボールを送ると、今度は見事リングをくぐった。


『凄いよ、麗さん!』


『毎日鬼コーチが指導して下さるので腕がこの通りですわ。』


麗の二の腕は筋肉が盛り上がっている。


『これではワタクシ、お嫁に行かれませんわ。』


『リッキーなら大丈夫じゃない?』


麗の父の元で秘書として忙しい毎日を送るリカルドは、麗の花婿第一候補である。


リカルドの馬鹿力なら充分釣り合いが取れる。


『結婚と言えば、中野さんと上西さんがこの度結婚する事になりましたの。もちろん、結婚された後もこちらに居て戴きますが。』


『え?おめでとうございます!』


今井家は良い話題で盛り上がった。

SSの[小さなメイドさん]はこの回を書いてからタイトルを流用しました。


なんとなくこのみのキャッチフレーズに良さそうだからです。

明日はSS小さなメイドさん2回目を公開します。

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