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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学二年生編
121/304

知香と一郎

ゴールデンウィークがやってきた。


去年は新天皇即位などがあって10連休だったが、今年は前半のみどりの日が水曜日なので連休は後半だけである。


5月2日の昼前に一郎がやって来た。


『あ、来た来た。』


知香と母の由美子が駅の改札で一郎を迎えた。


『なんだこの駅?東京駅みたいだ。』


一郎は過去祖父・俊之に連れられて車で知香の家に来る事はあったが電車で、しかもひとりで来るのは初めてである。


大きくないが一見レンガで作られた様なタイル張りの駅舎を見て一郎は驚いた。


『お腹空いてない?11時になるところだから少し早いけどどこかでお昼食べていきましょう。』


由美子にとっては旦那の甥となる一郎が初めてひとりで訪ねて来たのでもてなしの気持ちもあった。


『はい、4日間宜しくお願いします。』


3人は車に乗って雪菜の親が経営しているスノーホワイトに向かった。


『あらいらっしゃい、お久しぶり。』


お店に着くと雪奈の母・紗世が出迎えた。


由美子が店に来たのは知香が初めてジェンダークリニックに行った帰り以来一年数ヵ月ぶりである。


『ともちゃんにそっくり……。まさか隠し子?』


紗世は一郎を見て笑えない冗談を放った。


『まさか?知香の従兄弟の一郎くん。長野から遊びに来たの。』


『あ、じゃあ去年の夏にお世話になったご実家の?』


『正確には直ぐ近くに住んでいるんだけどね。一緒に行ったはずみちゃんと仲良くなったから会いに来たんだって。』


『おばさん!』


一郎が恥ずかしそうに止めるが主婦はこの手の話は大好きだ。


『あら?ウチの雪菜で無くて残念。』


こうして情報は広まっていくのだと隣で聞いていた知香は恐れ入った。


『雪菜呼んで来るから待っててね。』


3人は席に座り、メニューを見ている。


『こんにちは、ごぶさたしています。』


『こんにちは。雪菜ちゃん、だいぶ大人っぽくなってお母さんに似てきたわね。』


中学二年になって大人っぽくなったのは毎日見ている知香も感じている。


この時期の女子は急激に成長するのだ。


『はずみん明日記録会だよね?応援に行くんだ?』


『それがさ、恥ずかしいから応援に来るなって言われたんだって。まったく、わざわざ長野から来たのに。』


知香は自分の事の様に嘆く。


『じゃあ、女装してともちが応援に来たって思わせるってのはどう?』


知香も密かに同じ事を考えていた。


『やってみる?』


『なんでいつも俺を女装させるんだよ?』


事ある毎に女装をさせられる一郎は困り顔で言った。


『あら?似合うから良いじゃない?おばさんも協力するわよ。』


由美子も乗り気だ。


『でもはずみんはいっちゃんが女装するの好きじゃないから気を付けてね。私、ずっと遠くで隠れてるから。』


はずみは記録会に来て欲しくないからと言ったので埼玉に来るのを1日ずらすと答えたが、既に新幹線の切符を買った後だった為、今日知香の所に来ている事は内緒にしていた。


『大体肝心な所で意気地がないんだから、はずみんは。ま、でもそういう所好きなんでしょ?』


知香に冷やかされる一郎。


『お前、性格悪くなったよな?』


『一郎くんもそう思うでしょ?』



自宅に帰り、一郎は知香の部屋に招かれた。


大きなぬいぐるみなどが飾られている以外、男の子の部屋とあまり変わらない。


『これでも少しずつ変えているんだけどね。正直部屋の中まで手が回らないの。』


自宅に友だちを招く事は少ないので後回しになってしまう。


『今日はここで一緒に寝ようね。』


『ちょ、ちょっと待てよ!』


知香の誘いに一郎が戸惑う。


『どうしたのよ?よくじいちゃん家で一緒に寝たじゃない?』


『だって、あの頃はまだお前男だったろ?今と違うじゃないか。』


従兄弟とは言え異性同士同じ部屋で寝るには抵抗がある一郎だった。


『そんなこと言ったって居間で寝てもらう訳にもいかないし、大丈夫だよ。いちおうまだ私男だもん。』


『お前さぁ、都合よく女になったり男になったりするんじゃねぇよ。て言うかさ、俺、お前って昔から女の子だった様な気がするんだよ。』


『そう?なよなよしてるの?』


『なよなよって感じじゃなくて、おとなしくて可愛い感じでさ。妹みたいに思ってた。だからお前が女の子になったって聞いた時全然驚かなかった。』


一郎がしみじみ語る。


『なんで私が妹なの?私の方が誕生日早いのに。』


『ともは姉貴って雰囲気じゃねぇだろ?いつも俺の後ろにくっ付いていたくせに。』


『スキー以外はね。』


知香と一郎はお互い兄弟が居ない事もあるせいか本当に仲が良い。


『いっちゃんにははずみんとずっと仲良くして欲しいな。私が学校行ってなかった時はずみんが同じ班でプリントとか届けてくれなかったら今の私は無かったかもしれないから。』


知香が最初に相談したのは雪菜だったが、クラスでははずみが初めての協力者だった.


『まぁ、良い娘だよな……。』


一郎は照れながら言った。


『ノロケですか?ごちそうさま。』


『何だよ、言わせといて。』


こうして二人は久しぶりの夜を恋バナで楽しんだ。

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