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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学二年生編
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ネガティブキャンペーン

週明け、いつもの様に登校すると、教室がざわついていた。


『あ、白杉。あれってホントなのか?』


知香を見付けた高木が開口一番聞いてきた。


『どうしたの?』


教室に入ってみると、黒板一面に知香と萌絵が付き合っているという内容のイラストや文字が書かれていた。


『ふ~ん、上手いね~。』


『感心している場合なのか?』


『なんで高木くんが焦っているの?』


『そ、そりゃ学級委員としてはこういういたずら見逃せないからさ。』


なんだか高木が変であるが、まずは誰が書いたかが問題だ。


『岡田!あんた先週の事根に持ってるの?』


先週末の給食の時に岡田が知香と萌絵が付き合っているのかと質問したあげく萌絵に振られていたので現時点では一番怪しい。


『俺、こんなに字も絵も上手く書けないよ。』


岡田は否定したが、確かに上手くて岡田が書いたものとは思えない。


『でもさ、給食の時に岡田くんが言ったのを聞いて書いたんじゃないかな?』


『やっぱり岡田が原因じゃない!』


知香が推理して再び優里花が岡田に詰め寄る。


『ご、ごめん!こんな事する奴がいるなんて思わないしさ。消すよ。』


岡田が黒板消しを持って落書きを消そうとしたが、知香が止める。


『待って。この後ホームルームで議題にしない?別に犯人探しする訳じゃないけど、まだ新しいクラスになったばかりだし、他の人も被害に遭うかもしれないから今のうちに解決した方が良いんじゃないかな?』


知香の提案に高木が答えた。


『そうだな。最初からクラスがバラバラになっては一年間苦労するし。』


去年はクラスの和を乱していたのに、成長したものだ。


その時にちょうど高野紀子が登校してきた。


『おはよう、どうしたの?』


高木が紀子に説明して、ホームルームの議題に上げると言った。


『そうね、これは二年B組にとって大事件だわ。徹底的に追及しましょう。』


知香は紀子が絡んでいるのではないかと思っていたが、筆跡は例のアンケートとは違っていた。



『まず、この落書きを発見したのはどなたですか?』


『はい、私と堀内さんが7時40分頃登校したら既に書いてありました。』


手を挙げたのは土井かすみという女子だ。


『あなたたちが書いた訳じゃないんですか?』


紀子が第一発見者を疑う。


『そんな?その後直ぐに他の子も来たし、書かないわよ。』


余程早朝か、先週末の放課後に書かれたものだろう。


知香は金曜日身体測定の後は教室に戻らず直接下校したが、教室に寄っていたら犯人に出くわしたかもしれない。


『それより、白杉と八木の関係ってホントの事なのか知りたいんだけど。』


男子の水野が問題を知香たちに向けた。


『そんなの関係無いでしょ?』


優里花が立ち上がって制止する。


『だってさ、火の無いところに煙は立たないって言うじゃん。最初から付き合って無きゃこんな事書かれないんじゃね?』


水野の言う事は正論であるが、本当の事を言ったらそれこそ火に油を注ぐ様なものだ。


『私と八木さんが初めてお話したのって去年の冬にインフルエンザになって病院の待合室でたまたま一緒だった時なの。あの頃はまだ、私も保健室に通っていたから殆どの子は私が女の子になって学校に来ているのを知らなかった時期なんだけど、八木さんって誰ともお話しなくて友だちが居なかったの。まるで男の時の自分を見ている様で友だちになったんだけど。』


知香は丁寧に萌絵と出会った頃の話を披露した。


『八木さんも今は共通の友だちが増えたけど、話が苦手だから放っておくと直ぐにひとりになっちゃうから一緒に居るの。悪いかな?』


『そうだよ!ともちの優しさを逆手に取っただけじゃない?親友なら当然でしょ?』


一生懸命に弁護する優里花を騙している事になり申し訳ないと思う知香だった。


『……私、知香の事愛してます!私たち、付き合ってます!!』


突然、萌絵が立ち上がって叫んだ。


殆どの生徒は萌絵が喋るのを聞いた事が無かったのでその発言内容より驚いている。


『も、萌絵?!』


必死に隠していたのが水の泡だ。


『……人を愛するのに男の子同士でも女の子同士でも関係無いと思う。……私は、女の子になった知香が好きなの!!』


萌絵がそう言い切った。


そうだ、LBGTを自認しているんなら女の子同士が愛し合うのだって問題無いのだ。


萌絵を庇うつもりがいつの間に保身に走っていたのかもしれない。


『ちょっと良いかな?』


ずっと黙って聞いていた木田先生が間に入った。


『先生も男性同士や女性同士のカップルの知り合い居ますけど、八木さんの言う様に女の子同士が好きになるのは構わないと思っています。でも皆さんは中学生なので、勉強はしっかりやって下さいね。』


一年前にも木田先生は新宿でよく遊んでそういう友だちが居ると言っていたが、先生の話し方が一年前より落ち着いている感じだ。


『先生は男と女のどっちが好きなんですか?』


必ずこういう質問をする男子が居る。


『先生はノンケです!今は募集中ですけど、もし白杉さんや八木さんみたいな子に好きって言われたら考えちゃうな。』


『先生!ノンケってなんですか?』


木田先生は指摘されて失言に気付いた。


ノンケとは同性愛では無い意味であるが、先生はやっぱり去年からあまり変わっていない。


『と、とにかく、少しくらい冷やかすのは良いですが非難したりしない様にして下さいね。やる事をきちんとやっていれば恋愛は自由です。』


こういう事に寛容な木田先生が担任で良かったと思う。


結局犯人は見付からなかったが、明らかに知香を陥れようとしたネガティブキャンペーンは失敗に終わったのでこれで良い。


それにしても時々萌絵には驚かされる。


普段物静かな分スイッチが入ると怖いと改めて知香は思った。

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