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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
113/304

生徒会長への決意

放課後、生徒会室に行った知香は学級委員会で各クラスから提出されたレポートをまとめたファイルを見た。


(やっぱり……)


アンケートと同じ筆跡と思われる文字が1年C組のファイルに踊っている。


偽造アンケートを書いたのは高野紀子で間違い無いだろう。


紀子は詳しい理由は分からないが今までの行動から生徒会長になりたくて仕方ないと思っている。


その為1年C組の学級委員となり、生徒会役員に立候補したのだ。


そこでの誤算は樋田ひな子が副会長候補に立候補すると言った事でひな子には勝てると紀子が読み違えて副会長の対抗馬となった事だった。


そこでひな子に負けた事で、立候補をする気が無かった知香が書記に立候補して当選し、一躍今年の生徒会長候補の一番手に上がったのである。


最初から紀子が書記に立候補していれば知香は立候補するつもりは無かったのでそのまま紀子が当選して今頃は生徒会長候補の最右翼と目されていた筈だ。


自分が功を焦って自爆した為に勝手に恨まれても堪らないが、知香は今回の件で腹黒い紀子にだけは次期生徒会長になって欲しくは無いと感じた。


その為にはやはり自分が立候補するのが一番だろう。


今までは成り行きで学級委員から生徒会書記になってしまった知香だったが、理由はともあれ本気で時期生徒会長を目指そうと思った。


『ひな子先輩。』


『知香さん、どうしたの?』


『私、次の生徒会長を目指そうと思います。先輩から見て如何でしょうか?』


知香は今までは自分から何かをやると言った事が無い。


他人から推されればその責任感を発揮するタイプなので、こうして誰かに言われる前に宣言して空回りしないか不安であった。


『何言ってんの?知香さんしか居ないでしょ?その為に知香さんに厳しくしてきたんだから。』


一見おっとりして誰にでも優しいひな子が知香にだけは厳しくするのはそういう事だったのか?


『校内放送、聞いたけど、あれは酷かったわね。』


『これ見て下さい。』


知香はひな子にアンケートのコピーと1年C組のファイルを見せる。


『そんな事でしょうね。私も嫌がらせ受けたし。』


やっぱりひな子にも嫌がらせはあったのだ。


『そうね、あからさまに反撃すると共倒れに成りかねないし、知香さんはこれだけ人気あるんだから今のままで充分生徒会長になれるわよ。下手に挑発に乗るより正々堂々やった方が良いよね。児玉くんも私も全力で応援するから。』


このまま行けば生徒会公認の会長候補として出る事になるだろうから余計な事はするなと言う事である。


放っておけば紀子はまた勝手に自爆するかもしれない。


『分かりました、ありがとうございます。』


知香は早くも次の生徒会長を目指す決意が固まった。



翌週月曜日になった。


知香にとっては月に一度のジェンダークリニック診察であったが、今日はこのみも初めて診察を受ける事になる。


初めてなのでこのみの母・康子も仕事を早退して駅で待ち合わせた。


知香は通い始めて2年目になるので一人でも慣れたものだが、このみも康子も緊張しているのがよく分かる。


『先生も優しいし問題無いですよ。』


知香はそう言うが、康子と離婚したこのみの父にはカミングアウト出来る状態では無いし、経済的にも苦しいので、不安は大きい。


病院に着き、知香は先にカウンセリングを受けアンチアンドロゲンを注射された。


女性ホルモンの投与はまだ出来ないが、変声や髭、肉体の男性化を抑える役目を果たすアンチアンドロゲンの投与は思春期のMtF患者には必須とされ、知香は高い声を維持している。


本格的なMtF治療に用いられる女性ホルモンの様に途中で止められない訳では無く、まだ性同一性障害か判断が出来ない場合にも有効なので、このみもカウンセリングやテストの結果次第で投与される事になるだろう。


初回なのでこのみの診察は時間が掛かっていたが、知香は康子と共に待っていた。


『どういう結果になるでしょう?』


『まだ今日は答えは出ない筈ですけど、前に先生にお話したので良いアドバイスが貰えると思いますよ。』


二時間に及ぶ初回の診察を終えて、このみが出てきた。


『どうだった?』


『結果はまだだけど、気持ちが不安定になる事があるから心配だって。どんな時も強い気持ちを持ち続けられる様に努力しなさいって。』


一度女の子になると決めたら元には戻れない。


先日の様に父親から言われる度に引き篭もる様では無理だという。


『毎日の積み重ねだから、頑張るしかないよ。』


知香は自分と重ね合わせて言った。


たぶん、全国にはもっと親から認められず一人で悩み苦しんでいる子どもも多い筈だ。


このみにとって幸いなのは身近に知香という存在がいて、学校もサポートしてくれるという事である。


前途は多難だが、知香の言う通り毎日積み重ねていくしかないとこのみは思った。



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