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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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不審なアンケート

次の水曜日がやってきた。


麗は早々に受験から開放されたので再び知香が朝迎えに行き、一緒に登校している。


『こうして知香さんたちとご一緒出来るのは楽しいですわ。後僅かですけれど。』


『麗さん、今日ともちが校内放送に出演しますよ。是非聴いて下さい。』


雪奈が宣伝する。


『そうなのですか?千夏さんは何も仰らなかったですのに。冷たいですわ。』


『聴く価値無いからだと思いますよ。』


『知香さんは何故自分を卑下されるのですか?あなたのお話を聴いてみたい方は学校で大勢いらっしゃいますのよ。』


逆にどうしてそこまで持ち上げられるのかと知香は思う。


確かに普通じゃ無いけれど、出来ればそっとして欲しい。



昼休みになった。


『ご機嫌如何ですか?[ランチタイムウェイブ]です。お昼休みのひと時、素敵な音楽とトークでお寛ぎ下さい。今日のお相手は二年C組の森田潤です。さて、今日のゲストは出て欲しいランキング第一位、生徒会書記で一年A組の白杉知香さんです。』


『こんにちは、一年A組の白杉知香です。』


(お腹空いたよ~。)


校内放送に出演すると給食が食べられないのが一番ツラい。


『白杉さんは二回目のゲストですね。』


『はい、初めての時は選挙でしたけど。』


『あれからもう一度出て欲しいとかなりリクエストがありましたが、ようやく実現致しました。では本日最初の音楽をお聴き下さい。』


音楽が流され、ひと息付いた。


『音楽が終わったら、二人でトークをしてアンケート質問箱のコーナーになります。』


森田がこの後の流れを説明し、音楽が終わった。


『改めまして、今日のゲストは白杉知香さんです。白杉さんは女子として学校に行く様になって一年という事ですが、青葉台小を卒業、三中に入学してから学級委員から生徒会書記と凄い活躍ですね。』


『凄いだなんて、特に何もしていないんですが。』


森田に振られ、謙遜する。


『一番印象に残った出来事は何ですか?』


『この一年、いろいろあり過ぎて選べないんですけど、やっぱり友だちがたくさん出来た事だと思います。』


確かにいろいろあり過ぎた。


『男子の時は友だちが居なかったらしいですね。』


『はい。ほとんどの友だちはこの一年の間に付き合い始めました。』


こんなトークを繰り広げて、次は質問箱のコーナーだ。


森田が箱をマイクの脇に置いた。


『この箱の中に白杉さんへの質問が書かれたアンケート用紙が入ってます。白杉さんが箱から取り出したアンケートを読みますから答えて下さい。』


知香が箱に手を伸ばし、アンケート用紙を取り出した。


『えー、二年生からですね。毎日顔のケアはどうしてますか?』


『おかあさんに教えて貰って、同じ化粧水と乳液を使っています。』


『ずいぶん肌のキメが細かいですね。次は一年生から。……え、週刊誌に載った時、いくら払ったんですか?……あ、ごめんなさい。ちょっと変なアンケートが混じってますね。』


『面白い質問ですね。貰っても払っても無いですよ。あ、お菓子は貰ったけど。』


(こんな質問する人なんて居るの?)


知香は笑いながら不審に思った。


『次も一年生から。先日青葉台小に講演に行った様ですが、今から選挙に備えて新一年生にゴマを……ちょ、ちょっとこれは止めましょう、すみません。』


これじゃ放送事故だ。


『すみません、アンケートの内容をちゃんと確認していませんでした。』


『こんな事もありますよ。でも青小に行って六年生にお話をしたのは事実です。今の六年生にも私と同じ様な子が居る様なんです。なので、授業の一環として呼ばれたんです。それにしても下級生にゴマをするっておかしいですよね。』


知香は変なアンケートを一蹴した。


『こんなアンケートを紹介しておいて何ですが白杉さん、怒らないんですね。』


冬なのに森田は汗をかいている。


『私は普通の生徒では無いからみんなには迷惑な存在かもしれません。だから何を言われても仕方ないんです。そう思っていれば怒ったりしませんね。』


怒らないというのは嘘だが、何を言われても表情に出さないのは苛められた[知之]の頃から身に付いた技だ。



放送が終わり、アンケート用紙を森田らとチェックしてみた。


『名前はみんな違うけど、同じ筆跡ですね。』


『という事は他人の名前を騙ったか、借りたかって事になるな。』


『たぶん勝手に使ったんでしょう。この名前は私の友だちだけどこんな内容、友だちはみんな知っているからわざわざアンケートになんか書かないです。』


自分に対しては許せるが友だちの名前を騙るなんて怒り心頭だ。


『白杉さんは犯人の心当たりあるみたいだな。』


『はっきりは分からないですよ。』


こんな事をやるとしたら思い当たるのは一人しか居ないが、ねちねちした性格の様だしまた何かやってくるかも少し泳がしてみようと思った。


『とりあえず、アンケートのコピーを戴けますか?調べたいので。』



教室に戻るとみんな怒っていた。


『ともち、何あの質問?酷くない?』


『あれ?あの質問ってきな子が書いたんじゃないの?』


雪奈たちにコピーしたアンケートを見せると怒りは倍増する。


『何これ?私の名前だけど私の字じゃ無いし!誰が書いたの?』


『大体分かるんだけど、内緒。』


『ともち、そんなヤツを庇うつもり?』


庇うつもりは毛頭無い。


『そうじゃないよ。こんな事されて黙ってはいないけど、せっかくなら相手が一番嫌がる事でお返ししなきゃ。』


それは知香にとって非常に大きな決断だったが、売られたケンカは買うしか無いし、勝算は充分こちらにあると思っていた。



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