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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
111/304

テレビ観賞会

撮影終了後、久しく連絡の無かった小田から電話が来た。


『知香さん、元気?放送が決まったよ!』


小田が知香を追ったドキュメンタリー作品が完成し、テレビで公開する日が決まったのだ。


『いつですか?』


『21日の金曜日よ。深夜だけど。』


視聴率より芸術的価値のあるドキュメンタリー番組は深夜に放送されるものが多い。


『録画して次の日に観ます。』


いくら週末で自分が出るといっても大晦日より遅い時間まで起きていられる自信は無い。


たぶん両親には先に観られてしまうけど、眠気を我慢してぼーっと観るよりも翌日ちゃんと目を覚ましてゆっくり観る方が良いに決まっている。


翌日、雪奈やありさたちクラスメイトとその話をしていたら、藤森がやって来た。


『白杉さん、この前は本当にごめんなさい。今、テレビの話聞いてたんだけど、校内放送で宣伝させて貰らう事で許して貰えないかな?』


許すも許さないも最初から放送委員には恨みは無いが、もう少し普段からやる気を出せと言いたい。


『良いよ。どんどん宣伝して。』


知香は今までに増して積極的になった。



『もし宜しければワタクシの家で観賞会を開きたいのですが如何かしら?』


みんなで録画したテレビを観ようと麗から申し出があった。


麗の家には大きな4Kテレビがあるのでみんなで観るには良いかもしれない。


『お父さまがお世話になった方々を招きなさいと言って下さったのでその後みなさんでご昼食をご用意致しますわ。』


『私も麗さんの高校合格のお祝いをしたいと思っていたんです。お願いします!……勝手なんですけど、よくお話しているこのみちゃんも連れてきて良いですか?』


麗とこのみは文化祭で会っては居ない。


『是非お会いしたいですわ。』


麗の家だから大丈夫だけど観賞会はかなりの人数になりそうだ。



土曜日になり、知香たちは麗の自宅に集合した。


『千夏さん!』


麗のクラスメイトで前放送委員長の山田千夏や、クラスメイトが3人程来ていた。


『まだ合格していない人が居るから呼べなかったけど、私もなんとか合格したからね。それはそうとわざわざ校内放送に出て貰ったのにあんな事になってごめんなさいね。』


千夏は校内放送での不手際を詫びた。


『良いんです。おかげで私、大きな目標が出来ましたから。』


知香は放送事故のおかげで次期生徒会長を目指す事になったのだ。


『スゴい大きなテレビ!』


『75型ですの。映像もとても綺麗ですわよ。』


自分のアップに耐えられるか心配になってきた。


番組の冒頭は体育祭の場面だ。


知香がみんなと一緒にラジオ体操をしたり、1500メートル走で二位になった場面が映し出され、知香が性同一性障害の生徒だとナレーションが入る。


『なんか別の人みたい。』


自分で自分の映っているテレビ番組を観るのは不思議な感覚だ。


次は授業中のひとこまである。


『私と知香は幼なじみで、小さい頃からよく女の子の服を着せて遊んでいました。あの子が不思議な所は男の子の時は無口なくせに女の子になるとよく喋るんです。小学校の途中で私は転校して暫く会わなかったんですけど、久し振りに会った時に女の子になりたいって告白された時は妙に納得しました。』


雪奈の証言シーンになり、雪奈は顔を真っ赤にしている。


(自分のは恥ずかしいけど、他人の出ているシーンは面白いな。』


『学校に行かなくなって、このままじゃいけないって自問自答して、幼なじみの雪奈さんに相談して女の子になるって決めたんです。それから二人で親や学校にどうやって打ち明けるか考えたりしました。』


知香自身の証言も度々出てくるが、今となっては懐かしい思い出である。


車イスの麗と仲間たちの登校シーンも登場した。


『ワタクシ、ある事故で半身不随となってしまい、他人を信じられなくなってしまいましたの。学校では多目的トイレを使用していたのですが、このおトイレを知香さんが使用するとお聞きして、少し苛めてみたい衝動に駆られましたの。ワタクシ、知香さんに意地悪な事をしてしまったのですが、知香さんは真っ直ぐな気持ちでワタクシに接して下さり、心が洗われましたわ。年下ですけれど、今では知香さんをとても尊敬しておりますの。』


『麗ってテレビでも変わんないわね~。』


麗の証言を観て千夏が言った。


『あら、それはどういう事かしら?』


みんなは爆笑した。


テレビは知香を中心に友人や先生、母の由美子らの証言を交えて日常を映し、最後にナレーターが小中学生にも知香の様に生活している生徒が徐々に増えていると紹介して終わった。


『スゴい良かったです!』


その一人であるこのみが感動して叫んだ。


『さあみなさん、お食事の用意が出来ましたわ。お庭の方へどうぞ。』


みんながビデオを観ている間に中野さんが立食パーティーの準備をしていた。


他にメイド姿のお手伝いさんが二人来ている。


『わぁ、スゴい。』


『たまにお父さまがこういう感じでお客さまをお招きしますの。今日はみなさんに感謝の思いを込めて準備しましたの。』


未成年の中学生の集まりなので当然お酒は無いが数種類のケーキがテーブルを彩っている。


『おめでとうございます。そして、今までありがとうございました。』


知香が持ってきた花束を麗に渡した。


『とんでもないですわ。ワタクシの方こそ礼を言わなければなりません。知香さん、ありがとうございました。あなたのおかげで中学校の生活を憎む事無く卒業出来そうですわ。』


逆に麗が知香が感謝の言葉を言った。


『私たちからも礼を言わなきゃね。知香さんが居なかったら麗さんとこうして話が出来なかったし、こんな美味しい食事に呼ばれなかった。』


千夏がみんなを笑わせる。


三年生の卒業まで後僅かだ。




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