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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
小学六年生編
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スノーホワイト

地元の有名店というだけで無く、別の意味で由美子も知っている店である。


志田雪菜の両親が経営しているレストラン[スノーホワイト]。


娘の雪菜という名前と店名に関わりがあるのは誰の目にも分かる。


駅前商店街から立ち退いて街道沿いに移転した時一気に倍以上の広さにしたが、それが功を奏し地域の大繁盛店に発展したのだった。


金曜日て言う事もあり、まだ五時過ぎと早い時間ではあったがお店は混雑していた。


『あら、白杉さん?と知…』


接客に来た雪菜の母・紗世とはもともと近所付き合いだったので顔なじみである。


志田家の引っ越しもあったが雪菜が知之に女装させたのを見て注意した経緯もあって付き合いが途絶えた。


ここで由美子と一緒に来たのが[女装した知之]だったので驚きというより一瞬何かの嫌がらせとも思ってしまった。


『ご無沙汰して申し訳ございません。今日は[知香]がこちらで食べたいと言ったので。』


『こんばんは。久しぶりです。』


紗世は二人をとりあえず席に案内し、水を運んで来た。


『忙しいのに本当にすみません。』


『お客様なんだから気を遣わないで良いわよ。』


知香は嬉しそうにメニューを眺めていた。


『実はこの子、性同一性障害の様なんです。』


一瞬紗世が固まった。


雪菜の服を着て遊んでいたあの時に激怒したが、雪菜は分かっていたのだった。


『今病院に行ってきた所なんです。三学期から学校にも女の子として通う様になって。雪菜ちゃんにはホント、仲良くして貰ってありがとうございます。』


その娘と友だちを引き離したのは自分だ。


自分のしてしまった事に後悔する紗世。


『あの時は本当に申し訳ございません。二人を傷付けてしまって!』


『そんな、謝らないで下さい。お正月に雪菜ちゃんが一緒に言ってくれたのだから。』


『雪菜が?』


紗世はもう雪菜が[知之]と会って居ないと思っていた。


『ごめんなさい。私が相談したんです。』


以前はただの遊びだと思っていたが、こうして知香を見ると本当に女の子にしか見えない。


『いえ、私が二人の気持ちも分からずに怒ってしまってごめんなさい。今、雪菜呼ぶから。後、今日の食事はサービスさせて下さい。』


『えっ?そんな!それはいけません!忙しい時に押し掛けているのに、ちゃんと払います。』


今度は由美子が慌てた。


『良いから、私の罪滅ぼしだと思ってね。知之くん……』


『知香です。』


『ともちゃんは変わらずね、好きな物頼んでいいから。』


紗世が一旦下がって雪菜を呼びに行った。


『分かっていたらお菓子でも買ってきたのに。』


相変わらず知香はメニューを眺めていた。


『これにする。』


この店名物のハンバーグとスパゲッティのセットだった。


ちょうど紗世が雪菜を連れて来た。


『ともち〜!病院行ってきたの?』


『うん、これからずっと通う事になるみたい。』


『今日は雪もここで食べなさい。好きなもの頼んでいいから。』


『やったー!ともちのおかげだよ、ありがとね。』


明るい雪菜が場を和らげた。


結局、頼んだのは三人とも同じセットだった。


知香は学校の事、病院の事などを雪菜に話した。


『へえー?チカかぁ〜。ま、私は今まで通りともちって呼ぶけどね。』


雪菜はクラスメイトからチカと呼ばれる様になった事に反応した。


『私さ、いつも夜ごはんは一人だから。』


両親は店が終わってから店で食べているのでそれでは遅いので忙しくなる前に紗世が作った食事を温めて一人自室で食べているらしい。


『こっちに移ってから休み無くなったし。』


街道沿いにある為年中無休にしている。


繁盛店も苦労が多い様だ。


『たまにウチに来てごはん食べても良いわよ。』


雪菜を気遣って由美子が言うが、白杉家も共働きで由美子の帰りも早くは無い。 


でも今まで知香を支えてくれた雪菜の寂しい想いを何とか埋めてあげたいと由美子は思った。


『制服、可愛いね。』


何人かのウェイトレスが動き回っていた。茶の格子柄が基調のミニワンピースに短めのエプロンをしている。


『着てみたい?』


『うん。』


以前は雪菜がからかうと恥ずかしげに答えていたが、はっきり着たいと言う意思表示をした。


『似合いそうだけど高校生くらいにならないとダメね。』


由美子が釘を刺した。


やがて、料理が運ばれ三人は舌鼓を打った。


『今日は本当にありがとうございます。』


帰り際に由美子は紗世にお礼を言った。


『良いのよ、たまには食べに来てね、知香ちゃん。』


『はい、ごちそうさまでした。美味しかったです!』


知香が元気良く挨拶をして店を出た後、紗世が雪菜に問う。


『ともちゃんってあんな子だっけ?もっとおとなしい感じだと思ったけど…』


『昔からね、女の子になるとよく喋ってた。男の子の時は静かなんだけど。』


不思議そうに知香たちを見送る紗世であった。



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