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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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麗の夢

麗の高校受験の発表の日が来た。


合格発表をネットで発表する学校が多い今は本人より先に第三者が合否を知ってしまい、緊張と感動の一瞬が損われてしまう場合もある。


知香は麗から直接良い知らせを聞きたかったが、万一落ちたらと考えると聞くに聞けなかった。


知香は麗と同じ三年A組の山田千夏に聞いてみる。


『知香さん、変な所が生真面目なのね。 ネットで調べれば直ぐ分かるのに。』


変な所が生真面目なのは父親譲りだと思った。


『麗の合否が分かったら教えるから、待っててね。あと、藤森に校内放送の出演依頼しておいたから、そっちも宜しく。』


わざわざ校内放送で話をしなくてもこうして直接話が出来るのにと思う。


その度に貴重な昼休みが奪われてはたまったもんじゃない。



自分の教室に戻り席に着くとと藤森と竹野が近付いてきた。


『あの~、白杉さん?』


『校内放送の件でしょ?私昼休み忙しいから無理だよ。』


忙しいというより給食が食べられなくなるのと萌絵が煩いのだ。


『一度だけで良いからお願いします。山田先輩からもずっと言われているし、アンケートでも出て欲しいランキングの上位だから。』


何故この二人は同じクラスなのに今まで何も言って来なかったのだろう?


だからやる気が無いって言われるんだ。


『分かりました。来週火曜日か水曜日なら良いです。』


面倒くさいと思いながらいやいや了承した。


『じゃ、今日の放送で発表して改めてアンケートを募るから来週水曜日空けといてね。』


(普段やる気が無いくせにずいぶん手回しが良いな。)



昼休みになり、給食を食べ終わると萌絵と共に再び3年A組の教室を訪れた。


麗の結果を知りたいのと千夏に文句の一つでも言わないと腑に落ちないからだ。


『あ、知香さん、待ってたよ。麗合格したって。』


『ホントですか?』


萌絵と共に喜ぶうちに千夏に文句を言うのを忘れてしまった。


『今日は高校から直接帰宅するみたいだけど明日は登校するわよ。知香さんから直接お祝いの言葉言って貰えば喜ぶと思うよ。』


(とりあえず後でメールを入れておこう。)


放課後になって麗に祝福のメールを入れると、学校帰りに寄る様にと返信があった。



放課後、生徒会会報の記事をまとめあげ、足早に麗の自宅に行った。


『お待ちしておりましたわ。知香さんたら、全然連絡くれないんですもの。』


知香にしてみれば受験の邪魔にならない様連絡を控えていたのだが、麗は嫌われてしまったと思い混んでいた様だった。


『すみません、ずっと気にしていたんですけど。でも難関突破、おめでとうございます。』


麗が合格したのは超難関のお嬢さま学校だ。


『家庭教師の先生もカリスマと呼ばれる方ですし、大した事はありませんわ。』


嫌みっぽく聞こえるが麗なら当然と思ってしまう。


知香は、部屋の外に目をやってから麗に聞いた。


『高校に行ったら何かしたい事があるんですか?』


『ワタクシ、この身体ですので何も出来ませんわ。お父さまはワタクシを後釜に考えていた様ですが事故の後は何も言われなくなりましたの。』


それでリカルドを後継者として迎え入れ、ゆくゆくは娘婿とする計画なのだろうと考える。


『そう言えばリッキーは元気ですか?』


『リカルドは朝早くから夜遅くまでお父さまにべったりでほとんど顔をお見掛けしませんの。』


『麗さん……。バスケットボールには未練無いんですか?』


知香はずっと麗に聞きたかった事を唐突に聞いてみた。


『突然、何を言うのですか?この身体になってしまっては出来る訳無いですわ。』


『でも、車イスバスケとかあるじゃないですか?今年はパラリンピックもありますし。』


麗はため息をついて知香に反論する。


『バスケットボールをやっていたからと言って、車イスバスケは簡単では無いのですよ。』


そう言って、知香を庭のバスケットゴールの前に連れていった。


『このゴールの高さ、どれくらいか分かりますか?』


麗から質問をされて、知香は自分の身長と比較してみる。


『3メートルくらいですか?』


『大体合っているわ。答えは3メートル5センチ。普通のバスケも車イスバスケも同じ高さですの。知香さん、シュートしてみますか?』


中野さんがボールを持って来てくれて、知香はゴールに向かってシュートを試みるが、なかなか入らない。


『キツい~!』


それでも、5投目で何とかゴールを決められた。


『入った!』


『お見事ですわ。ではワタクシもやりますから見ていて下さい。』


麗が車イスに乗ったままシュートをするが、リングどころかボードにも届かない。


『これが現実ですわ。上半身だけで投げなくてはならない上に普通の方より遥かに低い位置から投げてシュートするには相当のトレーニングが必要なのです。二年もブランクがありますし、今のワタクシには無理ですわ。』


普通に投げてもなかなか入らないのに車イスに座ったままでシュートするなんて超人技である。


知香は簡単に考えていた事を悔やんだ。



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