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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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再び特別授業②

金曜日、知香は学校に許可を貰って午前中に早退し、青葉台小学校に向かった。


特別授業は昨年同様六年生全員を視聴覚室に集めて行なわれる。


まずは山本先生から性的少数者の存在について話があり、その途中で知香の事にも触れた。


『ここに居る白杉知香さんは去年青葉台小を卒業したみなさんの先輩です。ちょうど去年の今頃、女の子として生きていく事を決めて最初はみんなに会わない様に保健室で勉強していましたが友だちの助けもあって教室に戻り、今では三中で生徒会の役員をしています。』


(だから先生、私の言う事取らないで~!)


昨年の特別授業と同様に知香の言いたい事は香奈子が言ってしまった。


後輩たちの前に立って、知香はここに康太が居ない事が残念だと思う。


『こんにちは。私は三中に通っている一年生の白杉知香です。今、山本先生がお話しされた様に去年の今頃から女の子として学校に通っています。その前は男の子だったんですが、男の子で居る事が辛くて、暫く学校に行かない時期がありました。私にとって幸せだったのは両親、先生がた、それにたくさんの友だちが私の事を理解してくれたのでこうして今普通に中学校に通っていられるのです。』


知香は一年間の想いを込めて話した。


『もし、おとうさんおかあさんに猛反対されたら死のうかと考えた事もありました。それだけ、男の子の身体を持って生まれて女の子になりたいという思いは切実だったんです。私は最初に友だちに相談して、それから友だちに協力をして貰って両親に打ち明けました。』


六年生たちはみんな真剣に知香の話を聞いていた。


『もし、クラスの友だちに突然男の子になりたいとか、女の子になりたいって言われたらどうしますか?』


知香は六年生たちに質問をした。


『迷う。』


男子生徒が手を挙げて言った。


『私はやっぱりその子の話を聞きます。本気だったら応援する。』


『ショックは大きいと思う。』


『似合っていたら良いけど……。白杉さんみたいな感じだったら良いと思います。』


結構みんな本音を言ってくる。


『それでもその子の親が反対して、学校に来ないとか言ってたらどうするかな?』


あくまでカミングアウトは本人の口から言うのが原則であるから康太の名前は出さない様に事前に打ち合わせをしていた。


それでも新学期が始まって康太が学校に来ていないので気が付いた生徒も居る様だ。


『あの、ウチのクラスにも白杉さんと同じ様に女の子になりたい男の子が居るって事ですか?』


勘の良い生徒が居て助かった。


『分かりません。だけど、もしかしたら今誰にも言えなくて苦しい気持ちのの子がいるかもしれません。』


特に康太のクラスである二組の生徒がざわついた。


康太は[知之]と違ってクラスにそこそこ友だちが居るから新学期になって学校に来ないのを心配されていた。


『人に言えない悩みって誰でも持っていると思うんです。でも、そういうのを分かり合える友だちが居たら私たちみたいな性的少数者も生きやすくなります。是非、身近にそういう友だちが居たら助けてあげて下さい。』


だいぶ知香の話の意味を理解した生徒が多かったみたいだ。


『お疲れさま。わざわざ学校を早退してまでありがとう。』


『大丈夫です。中学でも先生たち分かってくれたし、上田くんも4月に入学する生徒だから。』


職員室に戻って立ち話をしていると、六年生の生徒たちが何人か覗いて知香たちの話を盗み聞きしていた。


『あなたたち、何してるの?』


金子先生に見つかって生徒たちが入って来た。


『あの、さっきの白杉先輩のお話って上田くんの事ですか?新学期になって上田くん休んでいるのに先生何も言わないし。』


そう言ったのは安田真理という女子生徒だ。


『俺たちも康太の事心配なんです。本当の事教えて下さい。』


男子生徒の清水豊も続けて言った。


女子生徒ばかり集まった知香と違って康太は男女入り交じっているから心強い。


職員室に集まった生徒は10人くらい居た。


『ちょっと待って。ちゃんとお話するから教室に行きましょう。白杉さんも一緒にお願い出来ますか?』


『もちろんです。』


金子先生は知香と生徒たちを教室に連れていった。


(まだ一年経って無いのに懐かしいな。)


廊下を進んで行くと小学校時代を思い出した。


知香には小学校の思い出はあまり良いものでは無かった。


教室で金子先生は康太の家庭の話と知香の様に女の子になりたい

と思っている話を集まった生徒に説明した。


『これからみんなで康太ん家に行こう!』


清水が叫んだ。


『ちょっと待って、こんな大人数でいっても逆効果になるかもしれないわよ。今日は先生と白杉さんで行きます。明日土曜日で上田くんのおかあさんもお家にいらっしゃると思うので、代表で清水くんと安田さんの二人だけ一緒に行く事にしましょう。』


『みんなで寄せ書き書いたらどう?』


知香が発案した。


『これから私が行くけどまた会ってくれないと思うの。だから手紙にしてポストに入れておくから明日までに見てくれたらみんなの気持ちが伝わるかもしれないよ。』


『よし、みんなで書こう!』


清水が率先して寄せ書きを書き、知香にその想いを託した。

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