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第2話 小金井朔也②

「朔也、来たみたいだぞ」

少し、物思いに耽っていると司が声をかけてきた。

この口ぶりや態度からして、さっきまで思い出していた御堂が来たのだろう。

そう思うと、なぜか緊張してくる。

何の関係性も持っていなかった俺と御堂。

もしかしたら彼女は俺のことを忘れているかもしれない。

ほんの少し、会いたくないなぁと思ってしまった。


しかし、そんなことを考えている俺の隣で、司は慌てたような動きを見せている。

どうかしたのか?と声をかけようと顔をあげたちょうど、その時


「あ、小金井君!久しぶりね」

彼女の声はあの時から全然変わっていなかった。

だからすぐに彼女が御堂楓だと分かった。

だけど、緊張のあまりなかなか顔をあげれない

それは同窓会に来ている人にとっては普通の挨拶であり、何もおかしくはない。

ただそれを言ってきたのが渦中の女性であれば、

驚いてしまうのは仕方のない事だろう。

それも完全に忘れ去られているものだと思っていた手前、

声をかけられるだなんて夢にも思っていなかった。

緊張と驚きのあまり、下を見たまま硬直する俺は、

傍から見ればすごくおかしく映っていることだろう。

だけど、この反応は想いを寄せていた相手にする反応としては

よく見る光景だろう。と自分で自分を正当化する。


しかし、いつまでも下を見続けているのはどう考えても不義理な行いである。

俺は意を決した。

一つ深呼吸を吐いてから、ゆっくりと彼女の“今”を知るため、顔をあげた。



彼女は俺が想像していたよりも大きく変わってしまっていた。

声だけが当時の彼女と同じであったが、

その他は俺の知っていた御堂楓とは違った。

高校時代の彼女は清純で清楚なイメージがよく似合っていた。

制服もきっちりと校則通りに着ていたし、

アクセサリーの類を付けていることもなかった。


しかし、目の前にいる彼女はどうだ。

まるでキャバ嬢かと言わんばかりの綺麗なドレスだったが、

背中は空いていて、下心のある男なら必ず引き寄せられると言っても

過言ではない服装に、おそらくダイヤのネックレスを首につけ、

耳には違う種類の宝石があしらわれたイヤリングを付け、口紅も真っ赤な色

化粧はナチュラルメイクと思われるが、どう考えても派手だ。


というかこういう同窓会に来る人という観点で見ると場違いとしか思えない。

それに加えて、性格の方も昔の彼女とは大きく変わっている。


前は男女ともに好感度が高かったのに、先ほどからこちらを見る

女性の目は冷ややかで、逆に男は熱い視線を送っている。

それに対する彼女の態度は女性には睨みを入れ、

男性には微笑みを浮かべるといったもので、

昔抱いていた彼女のイメージが崩れ去る音がした。

これでは単なる夜の街で生きる女ではないか。


俺は“今”の御堂楓が本当は偽物なのではないかと思った。

だけど、そんなことあり得るわけもない。

服装や性格が大きく変わっていても、

目の前にいる彼女の顔には高校時代の面影も残っている。

その顔を見ていると、この女性が本物だと信じたくはなかったが、確信した。


ここまで見ているだけでも、かなりの変化があり、少しだけ嫌な気持ちになった

俺の中のイメージももう完全に崩れ去ってしまっていた。


こんなことなら来るんじゃなかった。

そう深いため息をついた時だった。

彼女のもう一つ大きな変化を宿していたことに気付いてしまったのは・・・。



最初、それが目に入ったとき、俺は錯覚しているのかと

自分の頭を疑い、目を何度もこすった。

だけど、いくら目を擦っても、目に映ったそれは変わらずそこにある。


もう一度彼女の姿を上から下まで見て、納得したくなかったが納得した。

俺の目に映ってしまったそれとは、マタニティマークのことだった。

あの妊娠中の女性がつけているものが、彼女の鞄に付けられていたのだ。


このことから容易に彼女は誰かとの間で子供を作ったのだと分かってしまった。

正直、ショックだった。

告白をしなかった俺が言うのもなんだが、

御堂にはそういうことを想像していなかった。

てっきりどこかの大手企業でバリバリ働いているものだと思っていた。

だけど、今目の前に立っている彼女は

男遊びが好きそうな妊娠中の女になってしまった


俺は今まで恋をしていたこともあり、

彼女のあまりの変貌に眩暈を覚えることになった。


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