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第1話 小金井朔也①


「1人目 小金井朔也」


俺には好きな人がいる。


いや正確には「いた」といった方が正しいのかもしれない。

彼女はクラスが同じだった程度の俺の事なんか、なんとも思っていないだろう。

だからこそ卒業式の日、告白しなかった。

結果が見えている勝負に挑むなんて馬鹿のすることだろう。


俺はそう思いながら、この日まで生きてきた。

そう、この日この瞬間まで・・・。



「よ、朔!!最近元気か?」

今、俺に話しかけてきたこいつの名前は市道司。

司とは完全なる腐れ縁であり、小学校4年生で同じクラスになってから

高校を卒業するまでの9年間、奇妙なことに同じクラスで、

お互いのことを熟知していた友だった。

ただ、俺が大学を地方にしたことを機に疎遠になってしまい、

こうして同窓会という催しが開かれなければ、

一生会うことも話すこともない関係となっていた。

だから、こういうイベントは少なからず、楽しみでもあった。

昔の知り合いと再会することのできるこんな貴重な機会、逃すわけない。


「ああ、元気だよ。司、お前は最近どうなんだ?」

「はは、そうか。それならなによりだな。

俺も健康第一で日々頑張ってるよ!!」

少しおどけた感じでいう司に笑いが込み上げてきた。

(あ~。本当にこういうやり取り懐かしいなぁ。

昔もよくこうやって話してたな)


「あ、そういえばさ!!今日の同窓会にはなんと御橋も来るらしいよ!

あいつ、すごく綺麗になっているんじゃないかなぁ。

あ~。楽しみで仕方がねぇな!!な!!朔?」

やや興奮気味に言う司だったが、俺にもその興奮は痛いほどわかる。

なぜなら、御堂は俺が密かに想いを寄せていた女なのだから・・・。


御堂楓はすごく綺麗な女子高生だった。

これまでの人生の中で彼女よりもきれいな女性を見たことがなかった。

高校生の時の俺はそんな彼女の顔を見た瞬間から、恋に落とされた。


彼女の笑った顔や落ち込んだ顔、怒った顔、どれもが綺麗なものだった。

さらに彼女の魅力は顔だけではなかった。

まず性格の良さ。彼女は誰に対しても分け隔てなく優しかった。

俺のようにあまり目立たない人間に対しても

朝、廊下で会えば挨拶してくれたり、

調理実習でクッキーを作りすぎたからと言って、

俺を含めた男子全員に渡してくれた。

極めつけはバレンタインデーの時だった。

彼女は義理チョコだとは思うけど、チョコレートを一人ずつに渡していた。

あれのおかげで俺はバレンタインの時の

チョコレート獲得数0を逃れることが出来、

クラスのモテない男子たちも大喜びだった。

ただ、それだけならば男にばっかり媚びを売る女とか言われて、

女子からは嫌われるところなのだろうが、

彼女は女子にも優しかったこともあり、女子にも好かれていた。


というか、男子が女子に対して暴言を吐いたのを見た彼女が

ピンタをその男子に食らわして、怒っていた時は強く印象に残っているし、

そのことも彼女が女子から好かれた原因だろう。

まあ、一部の男女からは「お姉さま」とあだ名をつけられていたりもした。


そして次に彼女の文武両道なところも魅力の一つだと俺は思う。

彼女は言ってしまえば、何でもできた。

校内での学力を図るための定期試検では常に1位をキープし、

学外での実力を知るための模試においても上位をキープしていた。

なんで俺たちの学校にいたのかが不思議だった。


だけど、それを彼女は自慢することはなく、

むしろその知識を他の生徒にもわかりやすく教えてくれていた。

先生よりも分かりやすかったことからよく定期試験の前になり、

クラスで残って勉強会をするときには決まって、

彼女が教師のように教えてくれたものだ。

その甲斐あって、自分のいたクラスは校内でも

頭がいい部類に位置付けられていた。


そして、勉強ができる人間は運動が苦手という考えも

彼女は真っ向から否定していた。

体育の授業ではいつも大活躍し、多くの体育会系の部活からも勧誘されていた。

まあ、なぜかどこの部活にも所属せずに、助っ人参加として

色々な部活に顔を出していたらしいが・・・。



そんな魅力が数えきれないほどある彼女のことを俺は好きだった。

だけど、高根の花だった彼女に告白しても振られることは目に見えていた。

だから、告白しなかった。

ただ彼女が近くにいるだけで、それだけで俺の世界は綺麗な色で色づいていた。


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