第97話 「判定」
私は『天空人』であるか否か。
たぶん、正確にはこの世界の人間が思っている『天空人』ではない。
けれど、この人たちには『天空人』と『女神』なんて比較できないだろう。
「あなたは『天空人』ですか?」
この質問にどう答えればいいか、とても迷った。
グレンの言っていた『協力』とは、『天空人』ではない私にも出来る事なのだろうか。
「私は、正確には『天空人』ではないです」
「……本当かい?」
隣でグレンが驚いて声を上げる。
これで外交官だということを黙っていたグレンと『おあいこ』だ。
「『人間』ではないってことでいいかな?リッカさん」
カイルの問いに頷く。
「じゃ、じゃあリッカ、君は一体何なんだい?」
「『天空人』よりも強くて利口でカッコイイです」
「……なんだって? 『利口』!?」
グレンが頭を抱える。
間違ったことは言ってないと思う。
「グレン、どうしてリッカさんを『天空人』だと思って連れてきた?」
「……初めて会ったとき、翼が生えていたんだ。
だからすぐに『天空人』だと思ったんだ」
「リッカさん、失礼かもしれないが翼を見せてもらっていいかな?」
ソファーから立ち、久しぶりに翼を大きく広げた。
軽く羽ばたいてみせ、グレンの頭を翼で叩く。
「どうですか? カッコイイでしょ!」
カイルは口を閉じるのも忘れて翼を見つめていた。
グレンがくしゃみをしたことによって、ようやく我に返ったようだ。
「これは……失礼。
私はもっと小ぶりな翼を想像していたんだが、あまりにも想像と違ったもので見惚れてしまったよ」
「えへへ、しょうがないですね」
翼を仕舞い、再びソファーに座る。
「実は『天空人』のことはよく知らないので、役に立てないと思います。
けれど、カイルさん達と私の目的は一緒だと思います。
だから、是非協力したいと……させてください!」
カイルに向けて頭を下げてお願いする。
私の目的のこともあるが、恩返しのつもりでもある。
グレンが居なければ、今頃私はどうなっていたか分からない。
「……こちらもリッカさんのような存在が居てくれれば、とても助かると思います。
ただ一つ確認したいことは、リッカさんの目的です。
お互い協力するのならば、齟齬が生じないようにしましょう」
今一度、私の目的を確認する。
私は堕天した元女神。
私が堕天を選んだ理由は、天界の不完全で理不尽な『システム』が気に食わなかったから。
女神の力を持ったままこの世界に舞い降りた私に出来る事。
それは、せめて一つの世界だけでも、この世界だけでも天界の『システム』から逃れさせたい。
つまり、私の目的は『世界の管理』だ。
魔王も、勇者も、ユニークスキルも必要ない世界を私は『創造』したい。
つまり、私の目的は……。
「世界平和です!
争いのない、平和な世界を作りたいです!」
「世界平和……ねぇ。
魔王はどうするんだい?」
「魔王は好んで争いをしているわけではないんですよね?
話し合いで解決しましょう」
「言葉が通じないかもしれない。
魔王じゃなくて、魔物もだ」
「私、テレパシーが使えます。
言葉が通じなくても、意思疎通ができます!」
「ふむ……」
カイルが顎に手を当て、目を瞑る。
「リッカさん、あなたの目的は分かりました。
残念ながら、我々人類の最終的な目標は魔王を討伐することです。
しかし、最後の目的は違えど過程の目的は同じです。
私からもお願いします、ご協力願えませんか?」
今度は逆にカイルが頭を下げてきた。
これって、最後は私と人間が争うハメになるのかなぁ……。
まぁ、最後は何とか心変わりをさせてみよう。
いざという時は、天界のことでも教えれば平和に過ごしてくれると思う。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
頭を上げたカイルと、もう一度握手を交わす。
私もまだまだこの世界について未熟だ。
気兼ねなく色々と聞ける相手がいると、とてもありがたい。
……それに、ここで協力を結ばなければ、きっとグレンと別れることになってしまう。
「さてリッカさん、さっそくで悪いんだが……。
『天空人の里』はどこにあるかご存知かな?」
いきなり分からないのきちゃった。




