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第82話 「セカンドダイブ」

 

 波の穏やかな夜だ。

 人間は誰しもが寝静まっているだろう。

 暗い船内に響くのは、木が軋む音だけ。


 そんな中、足音を立てないように私は歩いていた。

 どこにも明かりは灯っていない。

 普通の人ならば歩くこともままならない暗闇だが、私には女神の目がある。

 僅かに魔力を流せば『昼間の様』とまではいかないが、それなりに明るく見える。


 長い階段を降り、たどり着いたのは分厚い鉄の扉。

 もう一度『下層』へチャレンジだ。

 ドアノブを外して鍵を開ける。

 扉をくぐってからドアノブを元に戻す。


 ふふふ、私の好奇心は止められない。


 手のひらに魔法陣を描き、『集中されなくなる魔法』を発動する。

 人を対象に指定してもしっかりと効果が発揮することは、グレンを使って確認済だ。


 真夜中に加えて、この魔法。

 私が見つかることは無いだろう。


 柔らかい絨毯の上を歩く。

 上層ほど足音に気を使う必要がない。


 廊下には大きく頑丈な窓がいくつも設置されていた。

 外の様子を伺ってみると、水面がかなり近くに見える。

 波が窓に届きそうなくらい凄い迫力だが、少し五月蠅い。


 外の景色を楽しみながら廊下を歩いていると、奥のほうの扉から光が漏れていることに気が付いた。

 あそこは確か、たくさん料理が並べられていた部屋だ。

 隙間から覗いてみると、前に見た時と同じように料理がたくさん並べられていた。

 人の姿はない。


 ドアノブに手を掛けてみると、自然に扉が開く。

 入口すぐの立て札には『ご自由にどうぞ』の文字。


 まぁ食べるよね。


 料理を舌鼓しながら、大きな部屋に飾られている絵を見て回る。

 漫画は面白いと感じるのだが、正直芸術のほうは見る目が無い。

 なんというか、作品に込められた『意味』を読み取るのが苦手なのだ。


 甘くて黄色い果実を食べながらよくわからない絵を見ていると、また何とも言えない『感覚』に襲われた。

 昼間、ここに来た時にもあった感覚だ。

 すぐ近くの扉から誰かがやってくる……!


 手にしていた果物をテーブルの上に置いて部屋の角で息を殺す。

 大丈夫、今の私には『集中されなくなる魔法』がかかっている。


 開かれた扉から現れたのは……桃髪のお姉さん、パームだった。

 パームはすぐに部屋の角に目をやり、ため息を吐いた。



「はぁ、やっぱり居た。

 気持ちはわかるけどさ、真夜中に一人でご飯って凄い怪しいよ?」



 えぇ、バレてる。

 魔法、魔法発動してるのに……!



「ちょっとー何か話してよー。

 別に怒ってるわけじゃないんだからさー」


「ごごごごめんなさい」


「だから怒ってないって」



 パームが並べられている料理を適当に取り、席についた。



「ほら、ここに座って」



 促されて、正面に座る。

 パームが取った料理を小分けにして目の前に置いてくれた。



「リッカ、あなたお昼ごはん食べなかったでしょ?」


「い、いえ、食べましたけど……」


「あれ? おかしいわね。

 ずっとここに居たんだけど、見つけられなかった」


「えぇっと、私、甲板で食べたからです」



 そういうと、パームが料理を食べながら小さく首を傾げた。



「あれ? それって上層でしょ?

 どうやって上層に侵入したの?」


「侵入するもなにも、上層で寝泊まりしています……」



 パームの手が止まる。

 あれ? 知らなかったっけ?



「……下層の方に侵入してるんだ」


「お、怒ってますか?」


「まー見つからないのならどっちでもいいや」



 寛大な方で助かった。

 船員に突き出されたりしたら、どうなるかわからない。


 ……あれ?じゃあ、昼間はどうして呼び止められたんだろう。



「あなた、その手は何?」



 パームが私の手に描かれた魔法陣を見つける。

 まぁ別に話しても問題ないだろう。

 手のひらをみせて説明しようとしたら、食い入るように魔法陣を見つめている。



「……へぇ、こんな魔法初めて見た。

 意識阻害? に似た感じだね」


「パームちゃん!さん、魔法陣見ただけでわかるんですか!?」


「まぁね、魔法と商売くらいしか取り柄が無いからね」



 驚いた。

 魔法陣を見ただけで、どんな効果なのか当てられてしまった。

 私もその力欲しい。



「でも、どうしてパームちゃんさんは私のことを見つけられたんですか?」



 パームが私の問いかけに、当たり前の顔で答えた。



「そりゃあ、『私たち天空人』の目は特別だからね」


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