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第587話 「期待の最中」

「その情報自体がテック社が発信した囮だという可能性は?」


「施設に配備されている戦力の予想は?」


「現在の兵器で対応可能なのか!」


「EMPに類似した攻撃への対策はどうなったの?」



 質問を一つ一つ、イナガキが丁寧に返していく。時々イナガキの代わりに応える人が数人おり、少しずつこの作戦に肯定している人たちがわかってきた。イナガキが暇そうにあくびをかみ殺している隙に手招きをしてこちらへ呼んだ。



「なんだい?」


「そのタイムマシンの施設ってどっちですか?」


「ここから西だよ」


「……あっちですか?」



 今まで生きてきて方角なんて気にしたことがない。魔王がいる気配のする方を指さす。



「驚いた。君は方角がわかるのか」


「わからないけどわかるんです! ……ダミーの施設は?」


「同じく西」



 方角が違えば本物とダミーの違いが判るかと思ったがアテが外れた。西の方角を指さしたまま固まる私を見て、イナガキが手元のタブレットを操作すると地図が表示された。



「二つの施設は直線で30km離れている」


「あー、その間の方角? ピッタリ間はどこですか?」


「西だね」


「そうじゃなくてー」



 どう伝えれば良いか迷っていると頭上からマーカスの手が伸び、イナガキのタブレットをもぎ取る。画面を操作すると、地図が向いてる方向に合わせて回転するようになった。これで地図を見ながら体の方角を合わせられる。



「施設の間ピッタリ15km地点でいいんだな? 手は伸ばしたままにしておけ」


「あぁなるほどね」



 イナガキが私のやりたかったことを理解したようで、邪魔にならないように壁にくっついた。いつの間にかミーティングルームの中に質問は飛び交っておらず、皆が不思議そうな目で私を見ていた。



「ほんの少し右、手だけ動かすな体を動かせ。……ここだ」



 ミーティングルームの、僅かに青黒い壁をまっすぐに指さす。



「……ここがちょうど真ん中だ」



 マーカスはそういうと私から離れた。仕組みはわからずとも、何をしようとしているのかわかり始めたのだろう。期待と疑心の視線が痛い。ゆっくりと瞼を下ろし、指先に集中する。

 魔王の気配は確かに感じる。しかし、離れていればその気配は水中の淀みのようなものだ。その淀みが指先の右か左か、どちらにあるか慎重に探る。空調の風、指先の鼓動、血の流れ、暗闇の重さ……。一つ一つを意識から取り除き、確かな淀みを指先で捉えた。



「……み」



 右の施設。右の施設に魔王がいる。そう確信した。単純に考えれば、魔王とタイムマシンは同じ場所に存在する。しかし、テック社は私がこの世界に来ることを予知していた。魔王が囮だという可能性もある。そうなれば左の施設が正しいとなるが……。



「リッカ?」



 痺れを切らしたイナガキが私に声をかけた。ゆっくりと瞼を上げ、手でT字を作る。



「た、タイムで……」


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