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第518話 「暗闇の果てに」

 

「……じゃあ行ってくるのです」


「オーゥ」



 仕事場の扉を開ける.

 やけに軽く扉が開き,生暖かい風が吹き込んできた.

 足元から砂ぼこりが舞い込んでくる.


 ……純白が広がる天界はそこになかった.

 眼前に広がったのは何もかもが朽ち果てた世界だった.

 空は闇に覆われ,中央局落ち,地に巨大なクレーターを作っていた.

 一体何が起こったのか.



「……カナエっ!」



 目の前の惨状を伝えようと振り返ると,扉の向こうにいるカナエの身体が硬直していた.

 ……いや違う.ほんの僅かだが動いている.

 時間の流れが違うんだ.

 手に持った時計を見ると,まばたきをする間に短針が何周もしている.

 もう一度天界だった世界を見た.

 雷鳴が鳴り響き,地面が抉れる.


 ……天界という世界は寿命を迎えたんだ.

 ボクたちがこの部屋で1日を過ごしている間,天界では何億何兆年と時が過ぎていた.


 ゆっくりと目を瞑り,自分の小ささを痛感する.

 一体どうすればよいのだ.




 ……漂ってきたのは,ニンニクの香りだった.




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「……ん」


「あっ」



 顔をあげると,食堂で働く女神が申し訳なさそうな顔で去っていくところだった.

 テーブルの上には,本日のメニューである『タッキードのニンニク詰め』が容器に入って置かれていた.

 料理を待つ間に寝てしまったようだ.容器を持ち,席を立つ.


 かなり嫌な夢を見た.

 今でも押しつぶされそうになるほどの孤独を覚えている.


 天界は今,始業の時間を過ぎたくらいだ.

 恐らく,深夜よりも人と出会わない時間.

 手に持った『タッキードのニンニク詰め』は,おそらくタッキードという生き物にニンニクを詰めて丸焼きにしたものだ.

 手のひらほどの大きさの肉が3つ,強烈な匂いを放っている.

 魔法庫に入れると他の物に匂いが写ってしまうんじゃないかと心配だから手持ちだ.


 グレンを魔法庫に入れた過程から考えて,魔法庫の中は時間が止まっているか極端に遅い.

 グレンはまさに先ほどの夢のボクと同じ状態ということだ.

 しかも世界が終わったどころか別の世界に居ることになる.

 その時の思いは計り知れない.



 仕事場に戻ると,カナエが椅子の上で寝息を立てていた.

 料理は……目を覚ましてから食べよう.毛布を『想像』してカナエに掛ける.

 部屋の隅に容器を置いて箱を被せ,魔法庫からベッドを置いた.


 目を瞑ると,先ほどの夢の景色が広がる.

 リッカが遥か遠い世界に送られたとしたらあり得ない話ではない.

 その時にボクは,リッカと天界,どちらを選ぶだろうか.


 口元が緩んだのが分かった.

 考えるまでもない.ボクはリッカをサポートするんだと決めたんだ.

 どうせだからエリカとイラ,それにあの死神もこの部屋に連れてこよう.

 天界が無くなろうと何も関係がない.

 ボクたちの世界はボクたちを中心に回っているんだから.


しばらく不定期に更新をします。

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