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第501話 「最終負荷」

 

 複数の扉と複雑な通路,階段の上り下りを続ける.

 ところどころ天井にある監視カメラを見上げて溜息を吐いた.

 恐らく,敵の侵入を防いでいるのだろうが,出入りにかなり苦労するだろう.

 30分ほど歩いて,やっとそれらしい空間に出た.

 銀行の金庫のような巨大な扉がある.

 扉には小さなスピーカーが付いており,そこから音声が流れた.



「剣は銃よりも?」


「クソッたれだ」



 扉のロックが解除され,ゆっくりと開き始める.



「えっここまで来て合言葉……? なんですか?

 ID認証とか番号入力とかじゃなく?」


「それだと機械に突破されやすいからね.

 結局,原始的なセキュリティが一番だってなったらしいよ.

 ちなみに合言葉の答えの半分以上に『クソッたれ』が入ってる」


「機械にユーモアはないからね」


「ははーなるほギョッ」



 開ききった扉の先を見てギョッとした.

 期待していた地下都市がなく,同じような風景が続いていたからではない.

 何人もの人が私たちに銃を向けていたからだ.

 レールガン特有の機械音が耳に刺さる.



「ててて敵ですか?」


「……リッカに向けられてるね」


「ひぃ撃たないで!」



 両手を挙げて無抵抗であることを示すが,銃口に揺るぎはない.

 溜息を吐きながら煙草を咥えたマーカスが一歩前に出る.



「誰の指示だ?

 別の部隊じゃないな.お前らメンテナンス部の……」


「僕だよ,僕の指示だ」



 群衆をかき分け,作業着を着た若い男が前に出て来た.

 見慣れた顔立ちをしている.



「イナガキか」


「リッカを前に出してくれ」



 行きたくない.……が,マーカスから目で前に出るように指示される.

 両手を挙げたままマーカスの前に立った.

 無数の銃口からは冷たい風が流れ出ているように感じた.



「な,何ですか?」


「君たちには複数の調査を行ってもらった.

 その結果,リッカはテック社の機械であることが判明した」


「なっ」



 見ていなくても後ろのアイアン部隊に動揺が走ったことがわかる.

 私は絶対に機械ではない.



「この場でリッカを廃棄する」



 イナガキが作業服の中から拳銃を取り出した.

 充電完了を示す緑のランプが灯っている.

 もう一つの銃口が私に向けられた.

 その時点で,すべての銃口が威嚇の為ではなく,私を殺す為に向けてられているのだと理解した.



「や,やめろ.やめろイナガキ!」



 動揺の隠せないマーカスの声が聞こえる.

 この場を蹴散らすことは簡単だ.

 魔法庫からベッドでも取り出して放り投げれば良い.

 だが,そうすればもうこの人たちと過ごすのは難しくなりそうだ.

 イナガキという悪そうな人だけを排除するのも却下.

 それなら……女神ということを明かすしかない.

 女神である証明はほとんど科学の力で片付いてしまう世界だ.

 機械なら無理なこと……まずは私を殺せると思っているこの攻撃を耐えきって見せよう.


 一度,はっきりとレールガンの強さを見ておいてよかった.

 ただの鋼鉄では弾丸が貫通する.

 もっと強く,もっと強く…….

『想像』をし終えると同時に,銃口から電流を纏った銃弾が放たれた.


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