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第483話 「衝撃的な障害」

 

「ルーベイカー……?」



 つい最近、聞いたばかりの姓だ。

 しかし関連する可能性はかなり低い。



「金髪で気の軽そうなのがウィルだ」


「19歳独身、好みのタイプはおしとやかな女の子」


「あ、どうも」



 手を差し出してきた。

 背中を向け、拘束された手で握る。手袋越しでも柔らかいでではないことが分かった。



「眼鏡のはエリック、アイアン部隊のメカニックだ」



 エリックが小さく会釈をした。

 頬がこけて目の下に隈がある。一見、暗そうに見えるが根はやさしそうだ。



「そしてわが部隊のアイドル、スナイパーのシーラだ」


「時々レールライフルで敵を殴るメスゴリラ」


「ウィルちょっと黙ってな。……さっきは助かったよ」



 シーラが私の後ろに回ると力強く握手される。図太い精神を抱えてそうだ。

 煙草を吸い終わったマーカスが二本目を取り出して火を点ける。



「あれから停止したお前を運んで俺たちのキャンプ地まで連れて来た。

 俺たちはお前が『プロジェクトメガミ』の兵器、メガミであると認識しているが疑っている奴らもいる。

 今から尋問を始めるが、形式的なものだと考えてくれ」


「はあ……」



 マーカスに指示され、ベッドに腰かける。

 ウィルはカメラを手に、エリックは何かの端末を持ち、シーラは扉の前で銃を持っていた。



「まず初めに、お前は何者だ」


「あーえっと……」



 煙越しにマーカスの鋭い瞳が写る。

 どこまで見られたかわからないが、魔王との戦闘を見られている。

 この世界の住人に私が『異物』だと認識されれば、私もこの世界の魔王と化すだろう。

 だが今のところ、身体に変化はない。つまり、彼らにとって私は正常なのだ。

 彼らは既に私を『何なのか』目ぼしを付けているはずだ。

 夢だ。夢を思い出せ。



「ア、アジア系の顔立ちをした20歳前後の女性型アンドロイド……?」



 部屋にいる四人の視線が私を隈なく被う。

 一度これで乗り越えたのだ。間違ってないはずだ。

 だが、沈黙の空気に耐え切れなくなり口を開く。



「な、名前はリッカです!」


「メガミじゃないのか」



 エリックが平坦な驚きの声を上げて端末に入力を始めた。



「……リッカ、お前の目的はなんだ?」



「魔王の討伐!」というのは良くなさそうだ。



「わ、悪い人をやっつけます……?」



 当たり障りのない言葉を選んでみた。

 どう捉えることもできるはずだ。


 また訪れた沈黙が痛い。

 ウィルに向けられたカメラを手で覆いたくなる。

 端末に入力を終えたエリックが私を見た。



「サテライトミサイルの直撃だ。記憶領域に障害を負った可能性が高い」


「ふむ」


「あと人格形成も」



 酷いことを言われた気がするが、私は記憶を無くしたアンドロイドだと思われているらしい。

 記憶喪失のフリは少し得意だ。

 ふわふわとした尋問の時間が、この後もしばらく続いた。


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