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★第21話 「幸せとは」

 

 暗闇の世界

 どこを見渡しても闇が広がる。

 暖かいことも、寒いこともない。

 陽の光は差し込まず、風すら吹くことはない。


 そんな暗闇の世界に、突然淡い緑の光が一筋…。

 光の中からは様々な生き物が現れ、そしてまた光に消えていく……。


 女神たちは生き物の本当の最後を看取り、見送り、また出迎える。

 転生を繰り返すことで、すべての世界は存在しているのだ。



 女神リッカは、本日30回目の転生を終え、一息ついていた。



「ふぅ……。今日はこれくらいで終わりにしよう」



 自分の椅子に深く座りながら、対象生物用の椅子を消滅させる。

 装飾用の光球も消すと、まるで瞼を閉じているような感覚になるほど暗い。

 リッカはその感覚を少しだけ愉しみ、ふと思い出したように一枚の紙を出した。


 その紙には、大きな円の中に八芒星 

 そして、星の隙間を埋めるように複雑な文字が描かれている。


 『幸運を呼び寄せる魔法』


 リッカが初めて魔法陣を覚えた魔法だ。

 まだ発動したことはない。

 仕事後に、エリカの前で試してみようと思っていたのだが……



「爆発とかしたら嫌だし、ここで発動してみよっかな?」



 魔力を込め、宙に魔法陣を召喚する。

 持っている紙と照らし合わせ、念入りにミスがないか確かめた。



「……よし! 成功しますように……!」



 魔法陣に魔力を流し込むと、ひと際輝きを増す。

 その輝きが最高潮に達した瞬間、リッカの身体を優しい黄色い光が包み込んだ。



「おぉ……おぉぉ。」



 しばらくすると、黄色い光は消え、辺りにまた暗闇が戻る。



「…………? 効果が出てるのかなこれ。」



 試しにコインを取り出し、トスをしてみるがいつもと変わらない。

 結局、何もわからないまま仕事場を後にした。




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「ん……」


「あ……」



 仕事場の扉を開け廊下に出ると、ちょうどテンシが目の前を飛んでいた。



「お疲れ様、テーちゃん」


「……お疲れ様なのです」



 長い廊下を二人で並んで滑空する。

 リッカはテンシに取ってあげた本のことを思い出し、話しかけた。


「そういえばテーちゃん。推理小説って面白いの?」


「ん…。まあまあ面白いのです。

 しょうもない動機で殺人を犯す人間を見るのが楽しいのです」


「へ、へぇ。そうなんだ……」



 少しは仕事に役立つかなと思いつつ飛んでいると、右前の扉が開いた。



「ん……」


「エリカちゃんだ~」


「おぉ、リッカとちびっ子か」



 ちょうど仕事を終えたらしいエリカと合流した。

「ちびっ子」と言われたせいか、テンシが少しむっとした顔をする。



「エリカちゃん珍しいね。いつも待たせちゃってるのにさ」


「いや~それがさ、珍しく終わった後にだらだらしちゃってな」


「……いつか堕天するのですよエリカ」


「お~?」



 エリカはテンシに近づいて頭をぐしゃぐしゃに撫でまわした。



「それで言い返したつもりかちびっ子~?」


「やめっ!? やめるのです! あんぽんたん!」



 テンシの抵抗は虚しく、エリカにわちゃわちゃにされる。

 やはり、身体の大きい者にはかなわない。



「エ、エリカちゃん! ほどほどにしないと、テーちゃんがかわいそうだよ!」



 その一声で、エリカはやっとテンシを弄りまわすのをやめる。

 テンシはやっとの思いで開放され、荒く呼吸を吐く。



「ボ、ボクは屈しないのです……

 ……こ、この赤毛やろー!」


「はっはー。面白いヤツだなお前。

 悪いなリッカ。アタシはコイツの泣き顔が見たくてたまらないんだぜ」



 そう言って、エリカはまたテンシに襲い掛かる。


 か細い悲鳴が、白く長い廊下に響き渡った。



挿絵(By みてみん)




 

イラストは存在X(@xillust)さんから頂きました!

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