3.うんっ、お兄ちゃんと一緒!
更新が滞ってしまい、非常に申し訳ないです!
さて、二人の勢いに圧倒されて忘れていたが、ココは玄関である。
しかも、知り合いほぼすべてに見られている、という公開告白だったわけだ。
この視線の生温かい事、生温かい事。
何言っても無駄な気がしたので、俺は何事も無かったかように振舞って、全員リビングに集合させました。
明かに許容人数を超えたギッチギチのリビングで、エルフやティオ様の紹介、今日の出来事を紹介した。
聖女の孫であるティオ様の事を紹介した時は、剣士四人組が大興奮して握手を求めたりしていた。
ティオ様もニコニコと嬉しそうに対応していたので、この人は本当に人と触れ合うのが好きなんだろうなぁと思った。
それと、一悶着あるのは分かっていたが隠しても無駄だと思ったので、俺が左腕を失った事も報告したが案の定大変な事になった。
母さんから冷気が溢れ出したり、シロが【獣化】を発動しかけたりと、二人を落ち着かせるのに相当時間がかかった。
【回復魔法】のレベルを無理やりLv.5に上げた理由は、『俺が必要だと思ったから』とゴリ押しました。下手にエルフ達の名前を上げなくて本当によかった。
まぁそんな状態の二人に『一人で大陸横断したい』と言っても、許可が出る訳も無かった。
どうしても行きたい俺と、それが不安で仕方がない母さんとシロとの話し合いの結果.
1.二人のうちどちらかを連れて行く事。
2.夜には【転移】で帰って来る事。
3.何か問題が起きたら、自分の安全を最優先にする事。
4.傷一つでも負ったら、一生監禁。
という条件の下、許可されました。
てか、4つ目の条件が重い。
しかも何が怖いって、眷属組の方々が嬉々としてお世話してきそうな所が怖い。
監禁されない様に、傷を負わない様に気を付けていくしかない。
という訳で、明日の朝からシロを連れて大陸を上がっていこうと思う。
その日の夜。
学園から借りている家の中のとある一室。
俺はそこにフランを寝かせていた。
「入るぞ?」
「あぁ」
俺が部屋の中に声を掛けると、返事が返ってくる。
中に入ると、部屋の奥にあるベットの中でフランはまだ寝ていた。
そしてその横には、俺の代わりにフランをずっと見てくれていた人物がいる。
「レイか」
それはミナ姉だ。
俺はフランを保護してすぐにミナ姉に【眷属念話】を送った。
それを聞いたミナ姉は即座に俺の下に飛んできた。
グランディアにいたはずの母さんが家にいたのも、ミナ姉が連れてきていたのだ。
家に戻ってからは、ミナ姉にフランをお願いしていた。
「ミナ姉、フランの様子はどうだ?」
「うなされる事は無いが、まだ一度も目を覚まさねぇな」
「そうか………」
ミナ姉も相当心配の様で、表情に疲れが浮かんでいる。
まぁ、1年半の間ずっと探し続けていた相手なのだ。心労は察する程だろう。
「いくら精霊が寝なくていいとはいえ、ミナ姉は少し休んだ方がいい。寝たら疲れが取れるのは、精霊も変わらないんだから」
「けどよ………目を離したらまたいなくなりそうで怖ぇんだよ」
心配になった俺がそう助言するも、ミナ姉はそう言いながら左手で寝ているフランの頬を撫でる。
ミナ姉は本当の妹に向ける様な慈しみの表情を浮かべているが、フランから生える角を見るその目には後悔の色が滲んでいた。
「それに俺が目を離した隙にさ、人間やめちまってるじゃねぇかよ………。コイツは、俺が目を離した2年近くの間にどんな辛い目にあったって言うんだよ………」
「ミナ姉………」
ミナ姉がフランから離れざるを得なかったのは、俺が………。
「それは、俺が―――」
「俺が目を離す事になったのを、お前が悔やみ必要はねぇ」
ミナ姉は俺の心の変化を察したようで、俺が謝る前に先手を打ってきた。
「あの場面で俺はレイを救える手段を持っていた。だから使ったに過ぎねぇよ。たとえあの場面をやり直せたとして俺がする事は変わんねぇよ」
ミナ姉は空いた右手をヒラヒラと振って、何も気にする必要は無いといってくれる。
そのミナ姉の何気ないフォローの言葉に、俺の心の重しが軽くなった気がした。
「俺が悔やむのは、フランを早く見つけてあげられなかった事だ。現世に戻った時点でフランを探していれば、と思ってしまうんだよ」
ミナ姉はそう懺悔しながら、フランを撫で続ける。
「フラン、本当にごめんな。こんなんじゃ姉貴分として失格だよ」
弟や妹を慈しみ、支え、慮り、庇い、慣れない配慮で心をすり減らす。
その姿は『姉』と呼んでも問題無い様に俺は感じた。
「………んんっ、ううん」
その時、ずっと眠っていたフランが声を上げる。
「フランッ!?」
その声を聴いたミナ姉が思わず身を乗り出して、フランの顔を覗き込む。
「うぅぅん………………ん?あれ、ココは?」
「フラン、大丈夫か!?どこか辛い所とか―――」
ミナ姉が慌ててフランに色々質問しようとするが、ミナ姉の顔を見たフランは物凄い勢いでミナ姉に抱き着く。
「お姉ちゃぁんッッ!!会いたかったよぉぉ!!」
そして、何かが決壊したように一瞬で大泣きを始める。
「フラン、フランッ、ごめんな、ごめんなぁ………!俺が目を離したせいで………!」
そんなフランを見たミナ姉も、普段は全く見せない涙をその瞳から零していた。
ある程度大泣きをした後、二人が落ち着き初めたのを見計らってから、フランが今までどうしていたかを一つずつゆっくりと聞いていった。
泣き顔を見られて恥ずかしそうなミナ姉も、顔を赤くしながらも俺のフォローをしてくれた。
「えぇーー!?この綺麗なお姉ちゃんがレイお兄ちゃん!?」
最初に、俺の正体を伝えた時はそんな大きな声で驚いていた。
そのまま俺の胸にもダイブしてきた。が、角が凄い怖かったのは秘密だ。後ろ向きに生える感じの角じゃなきゃ刺さっていただろう。
起きたばっかりという事もあり、そのすべてを聞き終わる頃にはかなりの時間が経っていた。
フランの話をまとめる。
俺とミナ姉が居なくなってその日のうちに直ぐ、帝国騎士がフランを探しに来たのだという。
孤児院のメンバーに迷惑をかける訳にもいかなかったので、フランがその騎士に従って城に向かうと、そのまま地下牢に閉じ込められたらしい。
フランが「何故閉じ込めるのか」と聞いた時、牢屋の見張りの騎士が「不要な目撃者は消すに決まっているだろう?」と言ったらしい。
何となく予想はしていたが、俺と相打ちになった化物は帝国が実験を繰り返し生み出した試験体であり、その後に暴走してシロを脱走したのだ、と騎士はペラペラしゃべり出したらしい。
そして、フランも近いうちに実験体として連れていかれるだろうと、ニヤニヤしながら脅してきたという。
この時点で、俺とミナ姉プッツンしかけた。
だが次の日、城は母さんの手によって凍った。
フランはその隙に乗じて牢屋を抜け出したと言う。なんと、足を繋いでいた鎖も凍って、脆くなっていたらしい。なんという幸運。
そして、丁度近くにあった宝物庫のドアも壊れていたので中に忍び込み、トレジャーバックを拾い、その中に詰め込めるだけ詰め込んで城どころか国を抜けだしたらしい。すさまじい幸運。
その後フランは、トレジャーバックの中身を駆使して危険を避けながら旅を続けていたらしいが、つい最近ガルザード帝国の騎士共に見つかってしまったらしい。
その騎士から逃げている時に食べ物が尽きてしまい、鞄に入っていた得体のしれない果実を意を決して食べたんだと。そうしたら、後は俺らの知っている状態の龍になってしまい、その状態で逃げ続けていたんだという。
それ、何々の実ですか?
これで初めて龍を見た時、関係の無い筈のガルザードに既に追われていたのかが分かった。
ていうより、言いがかりに近かったガルザード陰謀説がまさか正解だったとは。
さっき話を聞く限り、フランは常に危ういながらも、本当に危なくなった時にその危機を回避している。
つまり、この子は相当な豪運の持ち主なのだろう。
そのおかげでここまで来れたのなら、その豪運をもってして生まれた事をアルカナに感謝したくなるかもしれない。
ちなみにだが、龍になった際にトレジャーバックが壊れて中身をぶちまけたらしいが、レナウンが食べた木の実はこの中に入っていたのではないかと思っている。
やはり、何々の実ですか。
「えへへ………えへぇぇ………お兄ちゃんだぁ………」
そして全てを聞き終わり、説明し終わった今、フランは俺の膝の上に乗りながら俺に抱き着き、ニコニコ顔で俺を見上げている。
話が終わってから、ずっとこの調子だ。
まぁそれもしょうがないと思っている。
この子は俺の2歳下、つまりまだ10歳なのだ。更にこの子が国を飛び出したのは、2年前なので8歳
という事になる。
そんな子供と言っても何ら問題の無い子が、ずっと一人で敵や魔物に怯えながら逃亡生活を送っていたのだ。正直な話、俺なら無理だと思うな。
「フランは俺達が居なくなってから、一人で頑張ってたんだな。流石は俺の妹だ」
「そうだな、俺も早い段階でガルザード国内に見切りをつけて外をを探してやればよかったよ。ごめんな」
「えへへぇ、やったぁ褒められたよ………お兄ちゃんとお姉ちゃんの手気持ちいなぁ………」
俺とミナ姉は、フランの頭をかいぐりかいぐり撫でまわすと、フランは気持ちよさそうに頬をゆるみ切って笑顔を見せてくれる。あぁ、和む。
だが、唐突にフランはその表情を不安げに染める。
「でもお兄ちゃん達、私気持ち悪くない………?もう人間じゃなくなっちゃったんだよ………?」
自分の角を触りながらフランはそう零す。
フランの目に見える竜要素はもう一つあり、実は両腕の甲にも白色の竜鱗が生えている。
「そんな事は無いぞ?寧ろ、フランの竜鱗綺麗じゃないか」
フランの竜鱗、青い筋が走っててカッコいいんだよなぁ………。
「そうかな………?」
だが、フランはまだ不安そうだ。
「それになフラン、見てろよ?」
俺は右手をフランに見せる。
「【竜装】」
そしてスキルを発動させ、右手の甲に紅色の竜鱗を具現化させる。
「わぁ………綺麗!」
それを見たフランは歓声を上げる。素直に嬉しい。
「な?俺も人間じゃないんだよ。フランとお揃いだな」
「………!うんっ、お兄ちゃんと一緒!」
フランは俺の言葉を聞いて、嬉しそうに笑顔を浮かべる。
やっぱり、フランは笑顔が一番だな。
先に言っておきますと、今回の章で眷属の数が『30』になる予定です。
章の最後に閑話と言う形で、補足も行う予定です。




