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閑話.主の三剣

閑話パート2


次から新章に入ります。

「今回のクエストを終えて、『主の三剣(トライソード)』の皆様は全員が『純銀冒険者』となります!」



 冒険者ギルド内に、受付嬢の大きな声が響く。





 仕事を辞め、故郷を飛び出し、冒険者を始めてもうすぐ2年。


 私達のパーティ『主の三剣(トライソード)』は、純銀冒険者になった。





「本当におめでとうございます!普通の冒険者の方々と比べると、圧倒的に早いですよ!」


「あぁ、ありがとう、私達もとても嬉しいよ」


 私の前で自分の事のように喜んでくれている受付嬢―――『ウェニー』からの賛辞の言葉を、素直に受け取る。

 この受付嬢は、私達が青銅冒険者の頃からずっと支えてくれた恩人でもある。

 そんなウェニーに少しでも恩返しできただろうか。


「前々から思っていたが、嬢ちゃん達は若いのに本当にすごいな!」


「でしょう?もっと褒めてくれてもよろしくてよ?」


「エ、エリゼ、私達が恥ずかしいから………!」


 周りの冒険者から褒められて、私と同じパーティに所属する少女は明かに調子に乗る。それを見て、もう一人のパーティメンバーが恥ずかしそうにする。

 これもいつもと同じ光景だ。


「今夜はギルドのメンバーで、有望株を祝う宴会だぁ!勿論、俺の奢りだぜッ!」


『ッッッッシャァァァァ!飲むぞぉ!』


 そんな私達を祝う為に、このギルドのギルドマスターがそう叫ぶと、周りの冒険者達も嬉しそうに叫ぶ。



 このギルド持ち前の明るい雰囲気。私達を祝福してくれるギルドメンバー。

 なんと楽しく素晴らしい環境か。


 その環境に私達が居られるのは、私達の主君のお陰なのだろう。



「………レイ様、私達はまた成長出来ました」



 そんな中、心の底から湧き上がってきた言葉が口から零れてしまう。

 その言葉は周りには聞こえていなかったようだが、隣にいた二人には聞こえてしまったようだ。


「………アル」

「………アルさん」


 二人も同じ気持ちなのか、少し表情に影が出来る。


「んんっ、すまない二人共。この話は後で宿でゆっくりしよう。今はこの場を楽しもうか」


 だが、今は周りと一緒に喜んで置く場面だろう。こんな表情をしてはいけないな。


 私は表情を何とか明るくさせ、宴会に飛び込んだ。





 昨夜の宴会が終わったのは、もう既に朝が回った頃だった。



 今頃ギルドの中では、二日酔いに苦しむ奴らや未だに寝ている奴らなど、混沌としているだろう。


 そんな中、私達は普段お世話になっている宿の一室でくつろいでいた。


「ふふっ、これで私達も並みの者よりも優秀であると、証明出来ましたわね」


 部屋の椅子に優雅に腰掛けて自前の紅茶を飲む、藍色の髪を左耳付近でサイドアップにした小麦肌の少女―――『エリゼ』はしみじみとそう呟く。


「そうですね………。私達にここまでの可能性を示してくれたレイヤード様は、やっぱり凄かったんだと思いますね」


 エリゼの言葉を拾うように、ベットに腰かけているおさげツインテールの少女―――『ハイネ』もそう呟く。


 部屋に戻ってからはずっとこんな感じで、魔法をうまく使えなかった私達にここまですぐに成長できる可能性を示してくれた主君―――『レイ様』の事を振り返っていた。






 私達が元々所属していた、ガルザード帝国。

 そこの王族の三男、レイヤード様。


 人類至上主義の帝国の中で、獣人の少女を専属メイドにしたり、突然獣人の奴隷を連れてきて『俺の妹』宣言をしたりする、貴族の中でも一番の変わり者。


 だが、8歳の頃から騎士団の訓練に参加し、ある時から私に弟子入りしてきた、努力の人。

 魔法が使えない私達に対して解決策を提案できる、発想が柔軟な人。

 そして、一度決めた事は意地でも押し通す、信念の強い人。


 私達3人は、この人に出会えた事を幸運だと思った。

 確実に、この人は世界に革新を起こす。



 私達は、『帝国』では無く『レイ様』について行く事に決めた。



 その為に、せっかく身に着けた技術を隠蔽し、役立たずになり切っていた。

 レイ様が国を出る時、一緒に国を抜けられるように。





 だが、その夢は2年も経たずに叶わぬ物となった。


 レイ様が、ブライン内に出現した『化物』と相打ちになって死んだから。





 私達は、騎士団の訓練中にレイ様が亡くなった事を聞いた。



 その日は、全員部屋に籠って悲しみに暮れた。



「何でぇ………何で、レイヤード様を連れて行っちゃったんですかぁ………!あの人は、まだ苦労しか経験してないんですよぉ………!?学園に行って、卒業したら国を出ると言っていたんですよぉ………!?なのに、なのにぃ………!」


 ハイネは、隠す事無く大声で泣いた。

 主君の報われぬ不幸を悲しんで泣いた。


「あの人は全く………グスッ………まだ、私に【浮遊剣(シャングリラ)】をちゃんと継承出来ていないというのに………グスッ………約束と違うじゃありませんか………」


 エリゼはそっぽを向きながら、悪態をつく。

 だが、その感情は隠しきれてはいない。


「レイ様………」


 私は言葉も出てこなかった。

 あの時は、今まで感じていたレイ様がいるという感覚が、全くしなかった。あるのは只の虚無感のみだった。



 私達は、そのままその日を過ごした。





 そして、その日の夜。


 私達3人は、これからを決めた。



 この国を出る、と。



 レイ様と過ごす毎日は常に発見と成長があり、その日その日を楽しむ事が出来ていた。苦手だった魔法攻撃の対策が立てられたので、心に余裕が出来ていたのもあるだろう。


 だから、レイ様が居ない帝国など空しいだけだろう、と結論した。

 どうせいつかは出ると決めていた国だ。そのタイミングが今だっただけの事。



 次の日の朝一に、上司のもとに騎士団を辞めたい意向を伝えた。


 私は引き留められて、騎士団内での出世や貴族との繋がりなど色々言われたが、私はそれに全く魅力を感じなかった。


 最終的に1時間近く粘られたが、渋々脱退を認めてもらえた。


 貴族のエリゼも止められると思いきや、寧ろ父親から「お前はさっさと出てけ!」と怒鳴られていた。

 いくら三女だったとはいえ、ひどい扱いだと思う。

 エリゼは「寧ろ、清々したわ」と微動だにもしていなかったが。


 城を出る際にシロアも連れて行こうと思ったのだが、見つける前に()上司に見つかってしまい、罵声と文句を言われて城を追い出された為、連れて行く事が出来なかったのが唯一の悔いだ。

 カミア様がいるので、大丈夫だと信じたい所だ。





 私達は昨日の内に荷物をまとめていたので、そのままブラインを出た。



「それじゃあこれからの目標としては、冒険者になって私達の実力を鍛えていく、でいいか?」


「えぇ、構いませんことよ。私達が強い事を歴史に刻んで見せますわ」


「また、エリちゃんは大きい事を………」


「あら、ハイネはそんなに自身が無いのかしら?」


「まぁ、レイヤード様にもらったこの技術は、冒険者としても通用するに決まってますけど………」


「ハイネも断言してるじゃないか。まぁ、私達が弱いはずが無いしな」



 そうやって、3人で夢を立てた。



 その日の昼前にガルザード帝国の王城が凍ったらしいが、私達がそれを知ったのはかなり後の事だった。





 それから私達は冒険者になり、『主の三剣(トライソード)』というパーティを組み、最初は色んな国を回った。

 その時に拠ったココのギルドの雰囲気が良かったので、この街に腰を下ろして活動を本格的に始めた。


 そして現在に至る訳だ。





 次の日の朝。


 私達は街の外に出ていた。



「さて、これからだが―――」


 私は二人を見渡す。

 二人も言いたい事は分かっているので、直ぐに頷いてくれた。



「クリカトル学園に向かうのよね?」


「あぁ、そうだ」



 私達の純銀冒険者昇進祝いに、ギルドマスターがとあるチケットをくれた。

 それは、毎年クリカトル学園で行われるトーナメント戦の観戦チケットだった。


 恐らく、ここまでずっと気を張り詰めていた私達を気遣った、休暇のような感じだろう。


「私、学園に行くの初めてです!」


 握り拳を胸の前に掲げるハイネは、楽しみという気持ちが溢れている。


「クリカトル学園といえば、数年前までアルが通っていた所よね?」


「あぁ、私も数年ぶりだな」


 エリゼから話を振られ、私は学園の事を考える。

 学園長に挨拶に行くのが気まずいな………。


「アル?どうしたのよ?」


 どうやら私は思わず変な表情をしていたようで、エリゼに心配されてしまった。


「いや、何でもない。学園のトーナメント戦といえば、学園内の成績優秀者が出場する大会だ。きっと面白い物が見れるだろう」


 私は話を誤魔化し、歩みを進める。


「さぁ、行こうか」


「了解よ」


「ハイッ!」



 そうやって私達はクリカトル学園を目指した。





 学園でとある再会がある事を、私達はまだ知らない。

これからの予定ですが、


『魔物娘編』

  ↓

『トーナメント戦編』

  ↓

『勇者戦闘編』


と進む予定です。

ゆっくりですが、お付き合いいただけると幸いです。

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