16.えっ、な、何でお前が!?
詰め込んだせいで少し多めです。
さて、この龍と戦うと意気込んで出てきたが、中々の見た目の迫力に圧倒されております。
そして、なぜかこの龍も俺の事をじっと見てて、互いに動けなくなっています。
「………コイツ、どう相手しよう?」
『アタシに聞かれても困るわよ!』
『主様にお任せなのです』
『ごめんなさい、私も分かんないっす………』
思わず精霊達に聞いてしまったものの、解決するわけも無く。
【精霊憑依】は3分間だけしか変身できないので、俺もこの硬直状態を早く何とかしたいんだが。
ただ、なんとなくなんだが、この龍の眼を見ていると知性を感じるというか、この龍から戦闘の意思を一切感じないんだよなぁ………?
実際に俺が目の前に飛び出しても、ブレスの一つやドラゴンテールの二つも飛んできていないのも事実だ。
それに心なしかプルプル震えているような………?
「………クォォン」
なんか情けなさすら感じる鳴き声も聞こえてきた。
「まさか、この龍は俺を見て怯えている………?」
そう感じた途端、この龍が怯えている様にしか見えなくなってきた。
それと、顔の付近しか見てなかったから気付かなかったが、尻尾に近い所にはいくつかのかすり傷や火傷の痕など、怪我を負っていた。
「何かに襲われているって事か?」
俺を見て怯えるって言う事は、『人』だろう。
だが、この龍の討伐隊は未だ出来ていない筈だし、目撃している人も一目散に逃げていると聞いてる。
この世界にも『逆鱗に触れる』と言う言葉があるのだ。それは子供に対する教育でも良く使われる程、この世界では周知の言葉だ。それほどまでに危険視されている龍相手に、一般人とかが簡単に手を出すとは思えないんだが………。
「ん?」
前回の反省から、龍に妙な刺激を与えないように【魔法探知】を使っていなかったせいで気付かなかったが、いつの間にか地上の隅っこに沢山の人影があった。
人数は20人弱くらいか。
「アイツら、何を―――ッ!?」
「風部隊、発射ッ!」
『【風槍】ッ!』
様子を見ていると、その中の一番高そうな鎧を着た男が叫んだ瞬間、一部の魔術師が龍に向かって【風槍】を放つ。
それはストレートに飛んでいき、回避もしなかった龍の胴体に直撃する。
「クォォォォォンッ」
直撃を浴びた龍は、悲鳴のような鳴き声を上げる。
その声は悲しみに満ちていた。
「ッ!」
それを聞いた瞬間俺は思わず飛び出し、下の集団と龍の間に飛び込む。
下では他にもいた数名の魔術師が、既に追撃の構えに入っている。
「た、隊長っ!何か飛び出してきましたァ!?」
「構わんっ!纏めて吹き飛ばせ!」
「は、はいっ!」
突然出てきた俺を見て一団は慌てふためくが、隊長の一喝ですぐに落ち着く。
チッ、こういう時の優秀な指揮官は本当にうっとおしいな。
「再度撃てぇ!」
「【炎槍】ッ!」
「【水槍】ッ!」
「【岩槍】ッ!」
「【風槍】ッ!」
複数の魔術師から、複数の『槍』が放たれる。
【属性魔法】の『槍』って言ったら『Lv.4』の習得魔法だ。そこら辺の魔術師より確実に強い。
「でも【竜の息吹】に比べたら余裕だッ!シーラ行くぞ!」
『了解っす!』
【眷属念話】でシーラに呼びかける。
「『【防衛意志】!』」
両腕から銀色の光が溢れる。
「次!」『ハイっす!』
「『【範囲結界】!』」
そして、煌く銀色の壁を竜の前に展開する。
その直後、大量の槍が突撃してくる。
それを見た龍は、ギュッと目をつぶる。
本当に臆病な龍なのだろう。それなのに………。
だが問題は無い。
キュピピピピィィィィンッ!
数多の槍は全て、銀色の壁を貫通する事は出来ないからだ。
「クルゥゥォォォ………?」
来るはずだった攻撃が飛んでこなくて、不思議そうな声を漏らす龍。
まるで子供のようだ。
圧倒的防御力。
ホントこの能力凄い俺好みですわ。
「シーラ助かった。サンキューな」
『は、ハイっす!先輩の役に立てて嬉しいっす!』
シーラは、嬉しさが溢れでた様な声をだす。素直に可愛い。
『くっ!またシーラばっかり、ずるいわよ!』
『主様………』
その代わりに、悔しそうな声と悲しそうな声も零れてきた。
この3人、誰か一人が褒められたりすると残り2人も欲しがるという、色んな意味で仲良しなトリオなのだ。
「リボルの【精霊憑依】には、今も助けられてるだろ?アリガトな」
『ふ、フンッ!いつもそうやって素直に褒めてくれればいいのよ!』
ある程度リボルを知ってるからかなり喜んでいるのは伝わるが、本人が一番素直じゃないような。
『主様、私は褒める所が無いのです?』
二人を褒めたので、ラーナも褒めてほしそうだ。
「ラーナには今から頼みたい事があるんだよ。お願いできるか?」
『任せてほしいのです!』
フンスッと胸を張るラーナの様子が思い浮かぶ。カエルの方な。
「俺が次使う魔法を【二重奏】してくれ」
『分かったのです!』
ラーナに指示を出した後、俺は龍の真上まで飛ぶ。
突然飛び上がった俺に対して、下の一団や龍が見上げて来る。
こうして、上から見上げると下の一団や龍の様子が良く分かる。
そして俺は確信した。俺の『敵』は、龍じゃない。下の一団なのだと。
一目でわかった。
下の一団は全員残らず、右肩に『ガルザード帝国』のエンブレムが付いているのだ。
あれは、帝国騎士の腕章だ。つまり、帝国から命令されて動いている一派という事になる。
「全員聞けぇ!あの龍だけでなく、出来る事ならあいつも仕留めろ!そうすれば報酬は格段にアップするはずだ!」
「「「おうっ!」」」
すがすがしいまでに、自分達の為だけに行動する一団。
「やはり貴様らなのか………!」
今日だけで募ってしまった相当な怒りがこぼれてきそうになる。
噴き出している魔力の羽の紅色率が少しずづ上がっていく。
が、ココは堪える。
まずは、この龍の傷を治すのが先だ。
イメージするのは、傷ついたものを優しく包み込む天使のような癒しの光。
明かに傷ついているコイツの心も傷と一緒に癒す。
そこにイラつきといった感情は不要だ。
ガーベラには申し訳ないが、【魔力操作】を使って羽の魔力から紅色の魔力を分離する。
羽から紅色が抜けていって、徐々に綺麗なエメラルド色の【回復魔法】に適した魔力になっていく。
逆に純粋な紅色の魔力は頭の上にでも回しておくことにする。
イメージは完璧。魔力の分離も完璧だ。
行くぜ!
「【癒しの抱擁】」
紅色の魔力と分離して、背中で溜めていた魔力を放出する。
その様子は、まるでエメラルド色の大きな羽が、空で羽ばたくかの如く。
そして、頭に回し円を描いていた紅色の魔力は、まるで天使の輪の様に。
「『【癒しの抱擁】』」
そして頼んでいた通り、ラーナが【二重奏】を使って、ダメ押しの追加魔法を発動させる。
背中から生える二対の非常に大きなエメラルド色の翼。
紅に輝く頭のリング。
太陽の光を浴びて煌く金髪。
その姿は確実に『天使』だった。
大きく羽ばたいた二対の羽は傷ついた龍を覆い、包み込むようにして閉じる。
その羽が龍に触れた瞬間、激しく輝く金色の魔力と、体に染み渡るように薄っすらと広がる緑色の魔力が同時に発生する。
その安らぎはいかなるものか、龍は穏やかな表情で目を瞑る。
光が止んだ時、そこには―――。
鮮やかに輝く水色の筋が映える、透き通る白い光沢のある鱗を全身に纏い、何物にも負けぬ立派な角をした龍が、万全の状態で降臨していた。
回復大成功だ。
さっきの魔法は【超回復】と【状態回復】の合わせ技だ。
外見の傷を治すのと、何か状態異常を持っててもおかしくなかったので、両方を混ぜてみたのだ。
結果、凄く神々しい技が出来たと思う。
問題は、消費MPの多さだろう。
この【精霊憑依】の状態でさえ、魔力が3分の1持っていかれた。普段使いできないスキル確定だ。
次にスキルを作るなら、もうちょっと普段役に立つスキルを考えよう。
「さて、龍の様子は、っと………」
確実に回復させたであろう龍の様子をうかがうと―――。
龍は小さくなりながら、地面に落ちていた。
「ッ、何故だ!?確実に回復させたはずなのに!?」
思わず疑問の声が漏れる。
【超回復】や【回復】でダメージを受けるのは、アンデット系の魔物の特徴だ。だが、あの龍はどう見てもアンデットではない。
という事は【状態回復】か?
つまり、あの龍の姿が状態異常という事に………?
だが、今はそれどころじゃない。
「お前ら、チャンスだ!今ならあの龍を簡単に仕留められるぞ!」
『了解ッ!』
下のガルザード帝国の集団が、落ちて来る龍を待ち構えている。
「やらせるかよぉっ!」
『『『【充填】ッ!』』』
全力で飛び降りる俺の意思を酌んで、精霊組が【充填】を発動してくれる。
それを使い【高速飛行】を発動させ、自由落下する龍よりも圧倒的なスピードで地面に飛び降りる。
ドォォンッ!
俺は土煙を巻き散らしながら着地して、即座に土煙ごと周りを蹴散らす。
「【魔力爆散】ッ!」
ズバァァンッ!
「ぐぁっ!?」
「ガッ!」
「ぶへっ」
ガルザード帝国の一味を吹き飛ばしたら、そのまま落ちて来る龍に向かって両腕を向ける。そして、もう大人三人分くらいまで縮んでしまった龍を受け止める。
パッと見た感じ、苦しそうには全くしておらず、寧ろ安らかな顔で寝ていた。
やはり、あの龍の姿は『呪い』か何かの影響説が濃厚か。だって、まだまだ縮んでいるっぽい。
とりあえず龍をゆっくり地面に下ろす。
そして周りを見渡す。
吹き飛ばしただけのガルザード帝国の一味は、もう既に集まっており警戒態勢で俺の事を見ている。
「貴様、そこをどけ。そして、その龍をよこせ。それはこっちの物だ」
「あ?」
一番高そうな鎧の司令官が、俺にそう命令してくる。コイツどういう神経してやがる。
そのセリフはあまりにも―――。
「何で俺がてめぇに命令されなきゃいけない?挙句、コイツを『物』?」
俺の『逆鱗』に触れるには、十分すぎる言葉だった。
頭で抑え込んでいた破壊の衝動が爆散する。
辺り一帯に強風を巻き散らしながら、渦巻く紅色の魔力。それは全て俺の体内へ還る。
そして、先ほどまでに優しく光っていたエメラルド色の羽を、徐々に侵食していく。
更に、左腕以外の体中から【竜装】が発動する音が聞こえる。
視界が赤くぼやけていく。
最終的に俺は―――。
紅色に煌く魔力の羽を持ち、額にイナズマのような形をした対になる角を生やし、赤目で周りを威嚇する竜人になった。
「テメェラハ、俺ノ敵ダ。敵ニ容赦ハ要ラナイダロウ?」
「な、何だ貴様はッ!?グッ、うわぁぁぁぁ!?」
「ふぅ………」
辺り一帯を巻き込みながら全てを蹴散らした後。
俺は気持ちをリセットする為のため息をつく。
ようやく落ち着いた。
もう奴らはどこにもいない。これで一安心だ。
「さて、あの龍は………」
戦闘中は巻き込む可能性があったので、龍には【結界】を張っておいたのだ。
ただ、その時の魔力純度が破壊に寄っていたので、【結界】の中の様子が見えなくなっていた。
なので、【結界】を解除して中を確認する。
そこには―――。
「えっ、な、何でお前が!?」
鹿の角を生やした空色の髪の女の子―――フランがいた。
一応これでこの章は終わりです。
何とか終わったぁ………。
GW明けくらいから次の章を更新していきます。
もしくは、閑話とかキャラクター紹介回とか作った方がいいのかなぁ?




