15.いく、ぜっ!
何とか今月中にこの章を終わらせたい………!
エルフ達に精霊とペアを組ませる訳は簡単である。
単純にエルフの里の護衛力の増加だ。
フィオやキキみたいに戦闘の意欲はあるが実力が伴わない者や、メニみたいに今でもある程度の実力を持つ者、またはティオ様といった自衛力が必要な者達に十分に役に立つだろう。
戦闘をやるつもりが毛頭ないトルテも、緊急時に手札は持っておける方がいいだろう。というより、トルテはフィオの為に戦う気が無いだけで、実際の戦闘力はこの中だったら………。
まぁとりあえず全員を呼んでみて、精霊達に自分と適性がありそうな奴とペアを組んでもらった結果。
「おぉ………おぉぉ………!ヒノカさん凄くカッコいいぃ!我はフィオ!これからよろしくお願いします!」
「ここまで純粋に褒めてくれたり、喜んでもらえるとこちらもやる気が出るな………。よし、俺はヒノカ。こちらもよろしく頼む」
カッコよさに憧れを抱くフィオのペアは、軍服が似合うイケメン系美女の火炎精霊『ヒノカ』。
「うふふ、何故か貴方とは波長がピッタリな気がするわ~。私はディーネ、よろしくね~」
「あらら、貴方もそう思うかしら?私はトルテよ。こちらもよろしくおねがいするわ」
母性と優しさ溢れるトルテのペアは、同じく母性と優しさ全開の水仙精霊『ディーネ』。
「私はココ。よろし……く………」
「僕はキキ、よろしくね!ってあぁ、立ったまま寝ちゃダメだよ!?」
常に元気な末っ子キキのペアは、のんびり自由な巨大少女の砂陸精霊『ココ』。
「ウチは疾風精霊のセピアって言うの、よろしくねっ」
「俺はメニ、よろしく」
強さを求める寡黙系エルフのメニのペアは、明るくキャピキャピした少女の疾風精霊『セピア』。
エルフ組にはそれぞれ精霊が一人ずつペアになった。
そしてここで予想外だったのが―――。
「私は光華精霊のキララ」
「私は暗影精霊のクララ」
「うん!キララお姉ちゃんにクララお姉ちゃんね、覚えた!私はリリス、よろしくね!」
なんとリリスには、光華精霊『キララ』と暗影精霊『クララ』の二人がペアを組んだのだ。
つまり、リリスには『光属性』と『闇属性』の二属性適性があるみたいだ。
だがその代わり、レナウンにはペアが出来なかった。
「しょぼん………」
落ち込むレナウンに、リボルが話しかける。
「レナウン、落ち込むのはまだ早いわ!」
「………そうなの?」
「そうよ!」
リボルは堂々と胸を張って断言する。こういう時、こういう性格のリボルがとてもありがたい。
「確かにアナタは魔法の適性が殆ど無いわ!」
「………しょぼん」
そこはあんまり断言しなくてもいいんじゃないかなぁ!?レナウン、また落ち込んじゃったよぉ!?
そんなレナウンを見て、リボルは慌てたように言葉を続ける。
「で、でもその代わり、アナタには普通の獣人以上の身体能力が得られるはずよ!」
「………ホント?ウチ、役立たずじゃない?」
「えぇ、初代特級精霊最強の名を誇るアタシが太鼓判を押してあげるわ!」
不安げなレナウンに対し、リボルは自身の肩書を持ちだして断言する。
「そっかぁ………!ウチ、頑張る!」
『最強』の肩書を冠する精霊からの言葉は説得力が高いようで、レナウンは元気を取り戻すとクリス先生の所に駆けて行った。
クリス先生に、レナウンをお願いする意味を込めて頭を下げると、グッと親指を立ててくれた。イケメンかよ。
レナウンの件が片付いたので、俺はもう一つの懸念点を解決する事にする。
「ティナ」
「はい」
まだ誰ともペアを組んでいなかったティナを呼ぶ。
ちなみに、ラーナとリボル、シーラは俺以外とペアを組む気は全く無いらしい。かなり嬉しい。
「ティナには、ティオ様の護衛をお願いしたい」
「!」
俺の言葉を聞いて、横にいたティオ様が驚き半分嬉しさ半分のような表情で俺を見て来る。
「頼めるか?」
「了解です。最重要案件『ティオ・マルスの護衛』を受理します」
ティナは即座に了承の返事を出すと、ティオ様に向き直る。
「という訳で貴方の護衛を務める事になりました、契約精霊『ティナ』です。よろしくお願いします」
「はい!ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします!」
そう言って、二人は握手を交わした。
「さて、全員誰かしらとペアを組めたと思う」
フィオとヒノカ。
トルテとディーネ。
キキとココ。
メニとセレナ。
リリスとキララ・クララ。
レナウンとクリス先生。
ティオ様とティナ。
各それぞれが隣り合ってこちらを見ている。ラーナ達3人は俺の横だ。
「今から、眷属化を行おうと思う」
ようやく眷属化を行える。そう思った瞬間。
常に展開していた【魔力探知】の範囲内に、膨大な魔力反応が突入してきた。
「まずは―――ッ!クリス先生!」
「ん?―――あぁ、確かに何か来たな!」
慌てて呼びかけると、一瞬遅れてクリス先生も気づく。
「この魔力反応、かなりの魔力を保有していますね………」
「形状はは………大きくとても長い反応だな………」
「「!?」」
深く反応を調べた俺とクリス先生は、その反応から一つの同じ結論にたどり着いたようで、互いに顔を見合わせる。
「「ドラゴン!」」
大きくてとても長い見た目で、膨大な魔力を持っている存在なんて、それしか心当たりがない。
というより、元々の目的はこっちだ。
周りのエルフ達がドラゴンがいると聞いて、不安そうな顔をする。あのメニでさえ、緊張を隠せないでいる。
まだこことは距離が離れているが、今のうちに立ち回りを決める必要がある。
まぁどうするかは、ほぼ決まっているけどね。
「クリス先生、ココをお願いしていいですか?龍は俺が相手をします」
「確かに私では荷が重いが、いいのか?前回も………」
クリス先生はそう言って、心配そうに俺の左腕を見つめる。
やはりと言っては何だが、クリス先生は前回のガーベラ戦で俺が腕をやられてしまったのが、かなり印象に残っているみたいだ。シロや母さんも、あの後から過保護気味になっている気がするのは気のせいでは無いだろう。
心配してくれるのは嬉しいが、皆にいつまでも心配をかける訳にはいかないし、せっかく夕莉が俺の評価をあげてくれたエルフ達から、そうでもない奴と思われるのも正直面白くない。
なので、ここらでいっぺん俺だって頼れる奴だと思ってもらう為に、あの龍を一人で相手しようと思う。
ガーベラの時よりも強くなっているから、大丈夫なはずだ。
「今回こそ、任せてください。それに今回は最初から全力で行きます」
それに、今回は最初からリボル達が傍にいる。初っ端から【精霊憑依】が使えるのだ。これはでかい。
「だから、ココをお願いしてもいいですか?余波が飛ぶかもしれないので………」
「そうか、お前がそこまで言うのなら任せよう。だから、ここは私に任せろ」
俺がお願いを返すと、クリス先生はうなずいてくれる。これで一安心だ。
「よし、皆よく聞いてくれ」
話が付いた所で、全員に向き直る。
「俺が龍の相手をする。リボル達3人は俺に付いて来てくれ。残りの精霊達はそれぞれペアを組んだものを守ってやって欲しい」
精霊達は俺の強さを知っているから、素直に頷いてくれる。だが、俺が戦っているのを見た事無いエルフ達やティオ様、子供組は心配そうな顔をして俺を見ている。
やはり、この評価はいただけない。俺だって、夕莉達を守る為に鍛えているんだ。
「エルフ達が心配なのはわかるが、黙って見ていてほしい。お前らの族長が嘘つきでない事を証明して見せる」
そう宣言し、俺は【空間収納】からガスマスクを取り出して、装着する。
最近、本気で戦闘する時はガスマスクをつける事が増えた。呼吸が楽なのと、周りの空気にコンディションや戦闘が左右されないのはかなり助かっている。
「3人以外の精霊は俺から離れてくれ」
俺が呼びかけると、瞬時に全員飛び退いた。その反応速度は流石は初代特級精霊だ。
ある程度離れれば、吸収の範囲外になるはずだ。これで準備完了だ。
「リボル、ラーナ、シーラ、来い!」
「了解よ!【精霊憑依】ッ!」
「行くのです」
「いつでもバチ来いっすよ!」
3人を呼ぶと、即座に全員が俺に寄り添う。
そして、全身を淡い輝きの魔力に変えていく。その光は洞窟内を煌かせる。
『………ゴクッ』
誰かの息をのむ声が聞こえた。
そして3人分の全魔力を吸収しきって、一瞬光が収まる。
その直後に、俺の背中から溢れる魔力が噴き出して羽を形どる。
その魔力は大きく上向きに1対、小さく下向きに1対の翼を作り出す。鮮やかに噴き出す魔力には俺の魔力が多く籠っているからか、赤色が強い。
まさしく深紅竜のような雰囲気の翼だ。
全てが落ち着いた頃には、紅色強めに噴き出す魔力で輝いている状態で俺は立っている。
「……な………何、だと………!」
「………これは、まぁ………」
「綺麗………」
「………これが俺の………」
「父上、母上。私は今とんでもない物を見ています………!」
そんな俺をエルフ達やティオ様が啞然とした表情で見ている。
これだけのインパクトがあれば、少しはイメージの持ち直しになっただろう。
「それじゃぁ………」
右足を一歩引く。
「いく、ぜっ!」
そして思いっきり踏み込んで跳躍し、翼を使って滑空しながら俺は洞窟の外に飛び出した。
物凄い速度で洞窟を出て、外を見渡す。
すると、直ぐ正面にソレは居た。
「これは、ガーベラと違った意味でカッコいいなぁ………!」
金に煌く鹿のような形状の非常に大きな一対の角。
爬虫類特有の光沢を持った水色の筋が映える、眩しいほどの白い鱗。
日本絵画の龍よりも、もっとシャープで美しさを感じさせるシルエットの頭。
強そう(小並感)。
皆さんお察しの通り、モチーフはあの嵐龍です。
あれを少し細くして、煌く水色の筋が体に走っている感じです。




