10.それでマスターの御用とは?
あぁぁぁ!?クリス先生のレイに対する呼び方を変えたのを忘れてたぁ!
こういう細かい描写を忘れるのは自分の悪い癖です………。
実は【神の軌跡】の習得方法に心当たりはある。
だが、その方法は周りに色々と心配をかけてしまうので、やらないに越した事は無い。
というわけで、【神の軌跡】を習得する前に【超回復】と【状態回復】を試してみる。
結果。
「わ、我の顔の傷が消えたぞ!」
「あんなに大きい火傷痕が………!」
「………すごい、傷も無くなったし痛くも無くなった!」
「………………」
上から、右目を横断するほどの切り傷が付いた少し子供っぽいエルフ、両腕に大火傷を負っていた大人びた雰囲気のエルフ、胴体に打撲痕を負っていた子供エルフ、両足が無いダークエルフ、だ。
さっきまで冷静じゃなくて気づけなかったが、なんとこの四人こんな傷を負って尚【回復】を掛けられていなかったのだ。遅れてたら死んでてもおかしくなかっただろう。
その為、四人の痛みを無くす事が出来て良かっただろう。
ただ………。
「これじゃあ、失敗だなぁ………」
確かに目に見える傷は治った。
だが、子供エルフ以外は怪我自体は治っていなかった。
一人目のエルフは、顔の傷は無くなったものの右目が見えなかった。
二人目のエルフは、火傷の跡は無くなったが両腕が動かない。
そしてダークエルフに関しては、当然足が生えて来る訳が無い。
やはり【神の軌跡】を覚える必要があるか………。
申し訳なさそうにする俺に対し、3人のエルフは頭を下げる。
「あ、主が気に病む必要は無いのだ!」
「えぇ、元々治るはずのない怪我ですもの。しょうがないですよ」
「それに僕は治ったよ!」
人間にひどい目にあわされたはずなのに、そうやってすぐに周りを気遣える優しいエルフ達。それが自分達を奴隷として買った人間であってもだ。
「だが君達をそんな目に合わせたのは人間だ。それと同じ様に生活している身としては君達をどうにかしたいんだよ」
「主は、我らが力不足なだけの境遇に怒り、我らの為に【超回復】を使ってくれたのだ!」
「そうですわ。主様には感謝こそすれ、怒りなど無いですよ」
「僕はちゃんと治ったから、皆の分も主様にご奉仕する!」
「そうだ!我も右目は見えぬが、従者としてちゃんと役に立ってみせるぞ!」
「私は両腕が使えないからどうしましょうか………?」
3人のエルフ達はそう言ってくれるが、やはり俺としては罪悪感がぬぐえない。
「………そこの三人が言うとおりだ」
「うぉ!?」
急にダークエルフが喋り出して、びっくりした。
「俺らがこうなったのは俺らが弱かったせいだ。族長から『自分を守る力を付けなさい。そうじゃないと私達は生き残れないわ』と、さんざん言われていたのにこの様だよ」
ダークエルフは目線を虚空に向けながら、言葉だけを俺に向けている。
ていうか、夕莉はちゃんと族長として頑張っていたようだ。
「俺は足技に自信があった。だがあの人間に敵わず、簡単に足を切られてしまった。これでは只の木偶、役立たずだ」
そこでやっと視線を俺に向ける。だが、目は死んだままだ。
「だから俺を殺せ。穀潰しになる気は無い」
「「「メニ!?」」」
ダークエルフの言葉に、残り三人のエルフが悲鳴に近い声を上げる。
どうやらこのダークエルフは『メニ』と言う名らしい。
そういや俺、今回連れてきた5人の名前とか知らねぇや。
「メ、メニ!?何を言い出すのだ!?」
「そうよ!私達3人を庇いながら戦ったせいで、あなたはそうなってしまったのに………!」
「主様!僕達がメニの分も働くから!」
メニ?とやらの言葉を聞いて、3人は凄く慌てだす。
話を聞く限り、どうやらこの3人のエルフは戦闘が得意ではないらしい。その代わりメニが戦闘が得意だったようだ。
夕莉の話を聞く限り、居なくなったダークエルフは族長の娘って聞いていたが、中々お転婆と言うかアクレッシブと言うか。上役の子供らしからぬ娘のようだ。
「安心しろ。わざわざ助けた奴を殺さんよ」
「「「ホッ………」」」
俺がそう返答すると、安心したように息を漏らす三人。
「何故だ。穀潰しを生かす意味が無いだろう?」
だが、メニは納得していない様子。この考え方は上に立つ者なりの意見なのだと思うが、ここまで潔く自分を切れるのは凄い度胸だと思う。
「夕莉から、助ける様に頼まれているからな。お前らが居なくなったせいで、親御さん達すごく心配してるらしいし、そんな状態のお前らを返す訳にはいかんだろうよ」
「「「「えっ?」」」」
俺が4人の事情を知っていた事に、驚いた顔をする4人。おぉ、メニもそんな顔できるんだな。
この4人に対しては、余り隠し事はしないで行くつもりだ。そっちの方が信用を稼ぎやすそうだし。
「特にメニ。お前ダークエルフの族長の娘なんだろう?お前に何かあったらダークエルフ全体に影響するんだぞ?」
「何故それを知っている!?」
「それは後で説明してやる。それよりも軽率な行動をとった説教―――と行きたいがまずはその怪我を直す所からだ」
俺はそう言うと、4人に背を向けて空間の中央付近に立つ。
そんな俺を訝し気、疑問気に見る4人。リリスと新しく連れてきた子供も、クリス先生と手を繋ぎながらこっちを見ていた。
そんな中、俺は【眷属念話】を使ってリボルを呼ぶ。
『もしもし、俺だ』
『はいはい、リボルよ!どうしたのよ?』
『聞きたい事があるんだが、ティナは居るか?』
『ティナ?城にいると思うけど、どうしたのよ珍しい』
リボルは、俺が【血の眷属】に入れていない『契約精霊』であるティオを探している事に純粋な疑問を示す。
『少し頼みたい事があるんだよ。それよりも『精霊門』で呼んでいいか聞いてくれ』
『まぁいいわ、ちょっと待ちなさい!直ぐに聞いてくるわ!』
そう言葉を残すと、リボルとの【眷属念話】が切れる。
そうなのだ。【眷属念話】の対象には、【精霊の王】としての眷属が含まれてないのだ。これがなかなか不便だったりする。
実は鍛冶精霊や拡声精霊とは、よく話したりするのだ。もう少ししたらこの2人を含めた十数名の精霊達に、【血の眷属】の眷属下に入ってくれないかお願いするつもりだ。蒼天精霊とかも仲間になってくれないかなぁ。
そんな感じで考え事をしていると、リボルから【眷属念話】が届く。
『ティナを呼んできたわ!それで何を伝えたいの!?』
『少し頼み事があって召喚したい。いいか聞いてくれ』
『分かったわ!………いいって!』
『了解した。リボルもアリガトな』
『気にしないでいいわ!』
そう言ってリボルとの【眷属念話】を早々に止める。
そろそろ周りの目が痛い。かっこつけた割に、只棒立ちしてるだけって言うね。ちゃんとやります。
俺は精霊界から持ってきた左腕の義手を取り出し、魔力を込める。
「精霊門起動」
「「「「ッ!?」」」」
俺が起動指令を出すと、数m先に人一人分の大きさの魔法陣が現れる。
この前が魔力を込めすぎただけで、これが普通である。
「精霊門開門、『契約精霊ティナ』ッ!」
「「「「ッ!?!?」」」」
開門指令を出すと、魔法陣が輝きだす。
そしてこの前はノリで何も言わなかったが、普段は向こうに『召喚するぞ!』という合図も含めて名前を呼ぶのが正規の召喚だ。
俺が詠んだ精霊の名前を聞いて目を見開いて驚く4人のエルフ。いいリアクションだ。
魔法陣の輝きが最大になった瞬間、魔力が光となって周りに飛び散る。
そして、光が飛び散った中心には―――。
「お呼びですか、マスター」
眩しいほどの真っ白な髪を一文字に切りそろえた、真っ白な肌をした赤目のクール系美少女が膝をついて、こちらを見上げていた。
………雰囲気、シロと似てるね。
「あ、あれがこの世の理を司ると言われる精霊………!」
「す、すごいわぁ。まさか本物を見れるなんて………」
「綺麗………!」
「………………!」
「うわぁ!カッコいいお姉ちゃんだ!」
「ウチもそう思う!」
「いやはや、ここまで大物を呼び出せるとは………!流石は御大将………!」
周りのリアクションが少し心地いいです!
「いや、急に呼び出して悪いな」
「気にしないでください。マスターからの招集とあれば向かうのは当然の摂理です」
「お、おぉう。そうか………」
おおぉ、マジでシロそっくりかもしれん。表情が一切変わらん。
「それでマスターの御用とは?」
ティナはそう聞いてくる。
ていうか、これはシロ以上だ。シロもここまで能面ではない。
まぁ、そこは今はいいだろう。早速用件を伝えよう。
「あぁ、それはな―――」
「【回復魔法】のレベルを上げたい。その為なら俺の左腕をくれてやる」
細かい修正を何処かでする必要があるなぁ………




