9.ねぇ、あるじ
今回は忙しかったので少なめです。
俺は数分経たずして、最寄りの街『サイバル』に到着する。
検問所の近くで降りて直ぐに、検問所に向かう。
検問所には人があまり並んでおらず、直ぐに通過する事が出来た。
さて、問題の奴隷商の店の場所だが、クリス先生に頼んでリリスから目印になりそうな物を聞いてもらってある。
『リリがいた所の特徴?うーんとね、反対のお店におっきい真っ黒な鎧があったの!』
この鎧について町の人に聞いてみた所、街の中心部付近にある防具屋に最近収められたダンジョン産の鎧らしい。なんでも、鎧についてる固有スキルがかなり強いらしく、今度オークションになるんだとか。
実際に俺も見て思った。
「確かにこの鎧は強そうだ………」
街の人に教えてもらいながら件の防具屋にたどり着くと、そこには街中で威圧感と威圧感を放つ漆黒の全身鎧があった。
まぁこの鎧を買う余裕は無いので、鎧を横目に反対に建つ店に向かう。
奴隷商の店は、いたって普通の見た目をしていた。
だが中に入ると、雰囲気がガラッと変わる。何て言うんだろう、こう、一種のアンダーグラウンド感を感じさせる荒んだ雰囲気と、あまり明るい照明を用いていないようで薄暗さもその雰囲気に一役買っていた。
恐らくだが、この雰囲気をわざわざ出しているのは、一般人や『人を買う』という覚悟が出来ていない者を門前払いする為なんだろう。
だが、今更この程度で怖気ずくほど甘ったれるつもりは無い。
俺は躊躇なく店の奥に進み、カウンターに向かう。
カウンターには、気だるげに髪をいじるチャラ男がいた。
「ん~?なんだぁ、ガキ。ここがどんな場所か分かってきてんのかよ。お子様は帰りな」
俺をチラッと横目に見ると、すぐに目線を逸らす。
「あぁ、知ってるよ。さっさと買わせやがれ」
この男が、どうにもガルザードの屑共のパーティにいたチャラ男と被ってしまい、少しイラつく。
「んだとぉ?ガキが舐めた口きいてんじゃねぇぞ?」
俺の言葉に腹が立ったのか、のそりと立ち上がり俺の前に立つ男。
「さっさと………!」
そうして、右足を振りかぶる。
「消えなッ!」
男は、案の定俺を蹴り飛ばそうとする。
コイツ、子供とはいえ客を蹴り飛ばすとか、やばすぎるだろ。
俺は右腕に【王覇】を薄く纏い、男の蹴りを受け止める。
「なっ!?」
男は必死に抵抗するも、俺はその程度じゃびくともしない。
「………俺は今急いでんだよ」
男を睨む。
さっきから、どうにも感情を落ち着ける事が出来ない。まるで、俺の中で別の誰かが荒ぶっているかのように。
「………さっさと案内しやがれ」
「チッ、ついてきな」
俺をどうにも出来ない事をわかったのか、苛立ちを隠そうともせずに舌打ちをする男。そのまま、店の奥に向かう男についていく。
そのままついていくと少し大きめな部屋があり、そこにはやたら派手な金ぴかのソファに座る巨漢の大男がいた。
恐らくこの男が、この店のオーナーの奴隷商人なんだろう。指や服に付けているゴテゴテの宝石類も相まって、いかにもな成金野郎にしか見えない。
「旦那、客だ」
「んだと?そのガキがか?」
「あぁ」
受付のチャラ男が俺を指し示すと、奴隷商人は俺を見て訝しげな顔をする。
「見た目で判断しない方がいいですぜ。こいつ普通のガキじゃねぇ」
やかましいわ。
「おい、金はもちろんあるんだろうな?」
「勿論」
「そうかい、ならいいだろう。どんな奴隷が欲しいんだ?」
俺が金を持っているというと、満足げにソファに深く座りこみ足を組み替える。
まぁ、俺みたいな子供が奴隷を買おうとするなんて、金持ちじゃないと考えないもんな。
「亜人はいるか?」
「いるにはいるが、まともな労力になる奴は一人も居ねぇぞ?」
………………。
「………構わねぇよ」
思わず言葉使いが荒くなる。そんな俺を見て疑問気な奴隷商人。
「………?まぁ、いいだろう」
奴隷商人は立ち上がり、ソファの直ぐ左に立つ扉に向かう。どうやら、あの先に奴隷を集めているようだ。
「ついてきな。普段なら奴隷共をここに連れて来るんだが、貴様が望む奴隷はまともに歩けないのばっかりなんだよ」
………………………。
「分かったから、さっさと連れて行ってくれ」
そろそろ何かが爆発しそうなんだ。
「分かってるよ」
そう愚痴りながら奴隷商人がドアを開けて奥に向かう。それに俺も続く。
ドアの向こうは階段になっていた。奴隷達は地下にいるようだ。
薄暗い階段をある程度下ると、左右を鉄格子に囲まれた空間に出る。
奴隷商人の説明によると、ココは犯罪奴隷を閉じ込める空間らしい。借金奴隷の住まいは地上にあるんだとか。
その鉄格子で区切られた空間の中には、沢山の借金奴隷達がいた。
少し奥に進むと、血の匂いが濃くなる。
そして―――
「ほれ、あれが今この店にいる亜人のエルフ共だよ」
「………!?」
その光景を俺は信じられなかった。
そこにいたのは4人の女エルフ。
右目を横断する大きい傷を顔に負ったエルフ。
両腕に大きな火傷痕があるエルフ。
胴体に打撲痕が残るエルフ。
そして一番ひどいのが唯一のダークエルフ。
両足が、膝上くらいから無い。
「………………」
3人のエルフは怯えた目で震えあがっており、ダークエルフに至っては完全に目が死んでいた。
「………………」
「このエルフ共は、数日前に高そうな剣を持った男が売りに来たんだよ。『襲われたから撃退した』ってな。でも、明らかに状態が悪いんだよ。もったいねぇ」
「………………」
プチンッ
俺の頭で何か音が鳴った気がした。
「ん?………ヒィ!?」
突然奴隷商人が俺を見て悲鳴を上げる。
「オイ」
「は、はいぃぃ!」
俺が声を掛けると、奴隷商人は先ほどの横柄な態度とは打って変わってオドオドしだす。
「ココノ亜人ハ、アノ四人ダケカ?」
「い、いえっ!あと一人、魔物の子供がいます!」
魔物の子供が亜人?どういう事だろうか。
「連レテコイ。マトメテ買ウ。イクラダ?」
「えっとぉ、金貨5ま―――」
「ン?イクラダッテ?」
声が小さくてよく聞こえなかったので、奴隷商人の顔を見て再度確認する。
「ヒィッ!2枚です!」
「ワカッタ。ソレ、コレデイイダロウ?」
奴隷商人に【空間収納】から、こっそり取り出した金貨2枚を投げる。
「か、確認しましたぁ!」
「ソレデ、俺ハドウスレバイイ?」
「先ほどの部屋でお待ちください!直ぐに連れて行きます!」
そう叫びながら、奴隷商人は奥に走って行った。
部屋に戻った後は少し気を落ち着かせるために立って待っていると、数分して奴隷商人が4人のエルフと小さな子供を連れてきた。足の無いダークエルフは、打撲痕のあるエルフが抱えている。
直ぐに5人と奴隷契約を結ぶ。
「とりあえずだが、全員俺に触れてくれ」
エルフの4人と小さな子供にそう伝える。
エルフの3人はビクビクと怯えながら俺の左腕を掴み、右足には子供が不安そうな顔でくっついた。ダークエルフは、俺が右腕で抱えている。俺が抱きかかえる時、全く抵抗が無かった。
「それじゃ、行くぞ。【転移】」
「「「ッ!?」」」
俺が【転移】を使った瞬間、エルフの3人は驚いた顔をする。ダークエルフも、一瞬だが、ビクッとなった。女の子は首を傾げている。
そうして、俺達は青い光に包まれて消えた。
後に残ったのは、腰を抜かして立てなくなった奴隷商人だけだった。
クリス先生の所に転移すると、直ぐにクリス先生が駆け寄ってくる。
「御大将!どうだったのだ!?」
「4人とも連れて来る事に成功しました。後、店にいた亜人の子供も連れてきました」
「そうか。………コレは本当に酷いな」
クリス先生は、怯える3人と微動だにしない1人の姿を見て、そう零す。
「それで、これからどうするつもりだ?」
「えぇ、これからですが―――」
「ねぇ、あるじ」
「………?」
足にくっついていた女の子が唐突に俺を呼ぶ。
「ウチ達、いつまで引っ付いていればいいの?」
そういえば、3人のエルフもビクビクしたまま俺の腕を掴んでいる。
「あぁ、もう放していいよ」
俺がそう言うと、物凄い勢いで俺から飛び退くエルフ達。
このエルフ達が負った心の傷は、相当大きそうだ。しょうがないと思う。
だが、夕莉に任せろといった以上、ただ連れて来るだけじゃなくアフターサービスも万全であるべきだろう。
その為にも、まずは【神の軌跡】を覚える必要があるな。
この暗い雰囲気は自分も苦手なので次回で何とかしていきたいと思います。
後感想欄で、夕莉との再会はいつ頃?と聞かれたのですが、明確なタイミングは決まってないんですが『勇者戦』位をイメージしてます。
出来る限り話は頑張って進めるつもりですので、もう少々お待ちください。
閑話でも入れようかなぁ。




